今回は、ブロックチェーンゲームのSorareを紹介します。昨今、Axie Infinity等のブロックチェーンゲームが「Play to Earn」のキャッチコピーとともに注目を集めていますが、Sorareもその一角を占めるゲームです。
ゲームの内容は、実在するサッカー選手をモデルとしたNFTのカードでチームを編成し、ポイントを競うというものです。得られるポイントは現実に行われるサッカーの試合での選手のパフォーマンスに連動しており、成績上位者には賞金であるETHやカードが配布されます。また、入手したカードを売買することもできることから、Play to Earnの要素を兼ね備えたゲームとして注目を集めています。
本記事では、Sorareのプレイ方法のほか、資金調達や規制当局による調査の状況といった近時のトピックスなどについて紹介します。
公式サイト:https://sorare.com/
・ゲームの概要
・近時のトピックス
・まとめ
イングランドのプレミアリーグやイタリアのセリエAといったヨーロッパの主要リーグから、JリーグやアメリカのMLSなどのクラブチームと公式にライセンス契約を結び、選手をNFTのカード化しています。執筆時点で、公式にライセンスを結んでいるクラブの数は216に上ります。カードはイーサリアムチェーン上のNFTであり、ゲーム内で使用される通貨はETHとなっています。現時点では独自トークンは発行しておらず、今後の発行についても未定です。
次にプレイ方法について概要を解説します。プレイヤーは、現在1週間に2度のペースで開催されているトーナメントに自らのチームを登録します。自身が保有するゴールキーパー、ディフェンダー、ミッドフィールダー、フォワードの選手カードから各1枚、加えてゴールキーパーを除くポジションのカードからエクストラカードを1枚選択し、計5枚からなるチームを編成する必要があります。
カードにはレアリティが設定されており、ゲーム開始時に無料で手に入れることができるコモン(発行枚数制限なし)、リミテッド(各カードにつき発行上限1,000枚)、レア(同100枚)、スーパーレア(同10枚)、ユニーク(同1枚)の5種類が存在しています。
各レアリティや選手が所属するクラブの地域等によりコンペティションが別れており、例えばレアリティが「レア」のアジア部門トーナメントには、アジアのクラブに所属する選手のレアカードを中心としたチームを登録する必要があります。
チームを登録した後は、現実のサッカーの試合結果を待つ必要があります。Sorareの特徴は、サッカーゲームでありながら、プレイヤーが選手を操作する等のプレイを行わないことです。登録した選手のカードは、現実での試合でのパフォーマンスに連動したポイントを得ます。ゴールやアシストを記録した場合、ポイントが加算され、イエローカードやレッドカードを貰った場合、ポイントが減算されるといった具合です。これらのポイントの計算には、データ分析企業である「Opta Sports」のデータが利用されており、タックルやインターセプト、パス、枠内シュート等ありとあらゆるアクションがポイントに反映されます。
試合終了後、各選手のポイントが集計され、チームの5選手が得たポイントの合計が、そのトーナメントでのプレイヤーのポイントになります。
各トーナメントの合計ポイント上位者には報酬としてETHやカードが配布されるため、現実のサッカーの試合結果を予想しチームを編成する楽しみがあります。当然ながら、試合に出場しない選手はポイントを得ることができません。そのため、プレイヤーは予想スターティングメンバーや怪我、出場停止といったサッカーに関する広範な情報を収集する必要があります。
また、保有するカードをゲーム内のマーケットで売買することができる点も特徴の1つです。Sorareの人気の高まりとともに、カードの価格も上昇の一途を辿っています。2021年11月には、オークションハウスである「Bonhams」でクリスティアーノ・ロナウド選手のユニークカードが40万ドルを超える価格で落札され話題になりました。
マーケットでのカード売買はETH建であり、Metamask等のウォレットからゲーム内ウォレットにETHを移して購入するほか、クレジットカードによる購入も可能です。また、Ramp Networkと提携することで、フィアット通貨をETHに変換し、ゲーム内ウォレットへ入金することも可能です(日本はサポート対象外)。
売買時や報酬配布時には、NFTであるカードの移動が発生しますが、SorareはStarkwareのzk-rollupソリューションである「StarkEx」を利用しており、高速でのNFTの移動を可能にしています。カードの売買時にはウォレットを操作する必要もないことから、ユーザはカードの移動がブロックチェーン上で行われていることを意識することもありません。
上記の通り、Sorareはブロックチェーンゲーム特有のハードルを取り除き、一般ユーザが利用しやすい環境を整備することに腐心しているほか、分散性やセキュリティを重視しており、そのためにNFTはイーサリアム上で発行されています。他のブロックチェーンやサイドチェーンではなく、L2ソリューションによりスケーラビリティの問題を解決しようという姿勢には共感を覚えるユーザも多いのではないでしょうか。
2018年に開発が開始されて以降、様々なVCから資金を調達しています。2019年にConcensysやKima Venturesから調達を実施したほか、2021年2月には、BenchmarkやAccelといったベンチャーキャピタルに加え、Redditの共同創業者であるAlexis Ohanianや現役のフランス代表サッカー選手アントワン・グリーズマン、元イングランド代表サッカー選手リオ・ファーディナンド等から資金調達を実施しました。また、2021年9月にSoftbank等から資金調達を実施したことは記憶に新しいところです。
順調に資金調達を実施しプレイヤー数も右肩上がりのSorareですが、スイス、イギリスの規制当局からゲームがギャンブルに当たる懸念があるために捜査を受けていることが明らかになっています。Sorareチームは、開発当初から専門家と連携し、ギャンブルに該当しないことを確認したうえでゲームをローンチしていると主張していますが、これらの国で規制がかけられる場合は、他国でも同様の規制がかけられる等マイナスの影響を及ぼす可能性があります。
規制当局による捜査といった懸念点もありますが、プレイヤー数や提携クラブ数は順調に増加しており、今後もPlay to Earnの一角として存在感を示し続けていくことが予想されます。また、近時のインタビューにおいては、サッカーのみならずバスケットボールといった他のスポーツへゲームを拡大する可能性も示唆されているほか、ブロックチェーンゲームならではの敷居の高さを感じさせないよう腐心している姿勢からも、より幅広い層のプレイヤーを取り込んでいく可能性が十分にあるゲームと言うことができるでしょう。
技術的にもL2ソリューションであるStarkExを利用し、高速でのトランザクションを実装するなど見るべき点が多いプロジェクトであり、ブロックチェーンゲームのロールモデルの1つとして今後も注目のゲームです。
筆者:閲覧用 (Twitterアカウント:@etsuranpazz)