現在、会社組織に代わる新しい存在として、DAOが注目されています。DAOとは自律分散型組織の略であり、従来の会社組織であったような、社長や命令系統がなく、各メンバーが自律的に動く組織であると言われています。
海外では数多くのDAOが生まれており、その中には驚くほど大きなプロジェクトを成し遂げるものもあります。有名なものではConstitution DAOというアメリカ憲法をオークションで競り落としてDAOとして保管するためのDAOが、なんと一週間で約50億円ほどの資金調達を行いました。
筆者もこのDAOに参加しましたが、一週間で法務、資金調達、Web開発、システム調達など多くのことを成し遂げたことに驚いています。これは、必要なスキルセットを持った人たちがお互い自律的に協力しあい、一つの理念のもとに生まれた結果です。惜しくも落札に失敗しましたが、無名の集団が一週間で50億円を調達したプロジェクトを成し遂げられるDAOは、大きな注目を集めました。
今回、日本において同じような自律して動くDAOが産まれました。それが福袋プロジェクトです。このDAOは、三日間で福袋NFTを完成させて、20220円の価格で22個を40分で売り切りました。
このプロジェクトは、Hokusaiで働く一人のメンバーであるKiyohara氏と、JPYC買取所の花坂氏が発起しました。この一つのツイートがきっかけです。
このツイートの段階では具体的なことは何も決まっていません。ただ、このプロジェクトを面白いと感じる方が多数集まり、それでプロジェクトが動き出しました。
プロジェクトメンバーは、Discord というチャットツールに集まり、議論しながら詳細が決まっていきます。その中で、有名クリエイターや法務担当、エンジニア、Webデザイナーなども集まり、各自の強みを発揮しながら、元日までの三日間を爆速で駆け抜けました。
今回のプロジェクトを進めるうえで、ハルタスクさんを始めました有名クリエイターが参加してくれたのが大きいです。プロジェクトが面白いと思ってくれれば、有名な方でも参加してもらえるのがDAOという組織の魅力であると思います。
また、本プロジェクトの特徴として、なるべく議論を公開で進めていったということです。メンバー間でのやり取りはDiscordのチャットやボイスチャットで行いました。ボイスチャットにはなるべく運営メンバーが常駐し、期間内は誰でもすぐに声をかけて話せるようにしていました。
当初、運営メンバーでは5000円での販売を予定していましたが、様々なクリエイターやメンバーが参加するにつれ、メンバーのレベルや熱量が高まっていき、最終的には20220円で22個販売することとなりました。プロジェクト自体が立ち上がったばかりなので、売れるかどうか心配する声もありましたが、ふたを開けると、40分で完売となりました。
この金額帯の商品が22個、40分で売れるというのは、今の日本NFT市場においてかなりの人気商品です。ひとえにNFT界隈の方がこのプロジェクトを評価してくれたからにあると思っており、購入してくれた方に感謝します。また、それだけの価格設定を実現できたクリエイターの皆様にも深く感謝いたします。
こちらのプロジェクトの主目的であるクリエイターへの還元というミッションが全体に共有されていたというのがプロジェクト成功の大きなポイントであると考えます。
今回のプロジェクトになぜここまで人が集まってきたのか。このプロジェクトにおいては、クリエイターさんには利益の還元が約束されていましたが、それ以外のメンバーには利益が約束されていない中で動きました。その中で、このプロジェクトの理念への共感、およびプロジェクト自体の楽しさが多くの人を惹きつけた結果であると考えます。
日本においても、海外と同じようなDAOが成り立つことを今回のプロジェクトは見せてくれました。福袋プロジェクト自体は福袋の完売に伴い、いずれクローズする旨が運営より明言されています。ですが、今回のプロジェクトメンバーは、福袋プロジェクトで得た経験をもとに、様々な新しいプロジェクトを立ち上げる予定で考えています。また、プロジェクトメンバーにとって一番大事なのは、このプロジェクトにおいて仲間を得たことにあると考えています。今回で得た絆をもとに、より大きなプロジェクトを各自立ち上げ、大きな仕事をすることを期待しています。