技術だけでは説明できない、なぜNFTが熱狂されるのか

この度、Twitterに素晴らしい記事を発見させていただきました。

https://zenn.dev/hkiridera/articles/23cbeb2752af63

いま、日本ではNFTについて盛り上がってきていますが、それと同時に、様々な誤解や議論・論争が巻き起こっております。これからたくさんの人がNFTに参入する中で、私もNFTについて説明するのに困ることが多々あります。その流れでこの技術的説明が出てきたのは非常に喜ばしいと思いますが、この記事は(おそらく意図的に)「NFTはなぜ高い値段が付くのか」といった記述をせず、技術的要素についてのみ記述しています。そのため、「じゃあこんなことしか出来ないNFTになぜ高い値段がつくのか」が理解できない方も多いのではないでしょうか。

今回、私なりにNFTを取り巻く状況を整理して記事にいたします。

筆者について

私は、「Love Addicted Girls」という名前のNFTプロジェクトを運営しており、ちょうど2月14日にNFTコレクションをリリースさせていただきました。現在までの4日間の間に、440ETH(日本円で1億4千万円ほど)の流通金額になっております。

また、私は今回のプロジェクトを運営するうえで全体の統括をさせていただき、かつ様々な海外NFTプロジェクトへの参画およびNFT購入をさせていただいておりますため、技術・ビジネス双方の側面をつなぐ存在として説明できればと存じます。

NFTとは主に4つの意味が混在して語られている

色々な人がNFTについて議論をしていますが、お話しされる方にとって「NFT」とは何なのかというところに大きなズレがあるため、議論がまとまらないのではと考えています。とりわけ、技術者とビジネスサイドでは、「NFT」という呼称に対してイメージするものに大きな違いがあります。

まず、もともとNFTというもののうち、最も原始的なものはNFTトークンであり、技術的に「ERC-721」と言われるものです。これがいわゆる「ブロックチェーン」という仕組みで担保される「改ざん不可能」かつ「複製不可能」なトークンです。(昨今、ERC-1155やERC-721Aなどを使うNFTアイテムもありますが、この記事では一律「ERC-721」を取り扱います。)

こちらは@hkiridera 氏も記述されているように、本当にわずかなデータしか書き込むことが出来ず、この「ERC-721」のみでリッチな画像表現をすることはほぼ不可能です。(なかにはERC-721のデータのみで表現された「フルオンチェーンNFT」というものもありますが)

また、同一ブロックチェーン上ではユニークであるが他のブロックチェーンにおいてはユニークでないというのはそのとおりであり、そのため基本的にNFTプロジェクトはイーサリアムチェーンなどの有力チェーンにデプロイされます。他の無名チェーンにデプロイされたものは、基本的にイーサリアムチェーンにデプロイされたトークンより価値が付きづらいです。

そのため、昨今はリッチな画像や動画等を表現するため、画像自体のコンテンツデータはNFTトークン(ERC-721)の外に置くことが一般的です。こちらはIPFSというストレージに置くことが多いです。また画像の属性(髪型・顔・服など)の特性をマーケットプレイスで表示するため、画像の特性データをmetadataという形であわせてIPFSに保存します。そして、NFTトークンはIPFSに保存した情報の向き先を示すURI情報のみを保存する形が一般的です。

この一連のNFTトークン及びIPFSで保存された画像データを含めたものを、「NFTアイテム」と呼ぶことが一般的です。

Love Addicted Girls のNFTアイテム画面
Love Addicted Girls のNFTアイテム画面

そして、このNFTアイテムは一個だけではなく、複数個まとめて管理・流通させることがほとんどです。このNFTアイテムを複数個まとめて「NFTコレクション」と呼びます。例えば、Love Addicted Girlsコレクションには、4000個のNFTアイテムが含まれています。

OpenSeaのNFTコレクション画面
OpenSeaのNFTコレクション画面

さて、昨今のビジネス文脈でNFTを語る際、これらの概念だけでなく、もう一つの概念を理解しないといけません。それは、NFTコレクションを運営するチームメンバーやコミュニティ、メディア、SNSなどです。それを総称して「NFTプロジェクト」といいます。

例えば、NFTプロジェクトがNFTコレクションをリリースする際、リリース前からファンコミュニティを作り集客をする必要があります。通常、ファンコミュニティはDiscordで作ることが多いため、このDiscordアカウントとそこにいる数万人のメンバーもNFTプロジェクトに含まれます。 また、NFTプロジェクトが日々の情報を発信するためにはTwitterが必要であり、かつしっかりとSNSマーケティングをしてフォロワー数を増やさないといけません。そのTwitterアカウントとフォロワーもNFTプロジェクトに含まれます。 また、NFTプロジェクトには運営メンバーがいます。しかも大がかりなプロジェクトになると、下記のように複数人が必要です。

1, デザイナー - NFT画像のデザインや媒体物の制作などを行います。
2, エンジニア - NFTコレクション発行のためのプログラミングをします。
3, 営業・渉外 - 他のNFTプロジェクトや企業との提携のための営業・渉外をします。
4, マーケティング・コミュニティマネジメント - コミュニティの運営管理やマーケティングを行います。

また、とりわけグローバルなプロジェクトになると、特定の国の人だけでなく、様々な言語・様々な国にまたがってファンがいることが普通のため、コミュニティのために複数言語のチャンネルをおきます。LAGコレクションでも、英語・中国語・韓国語・日本語・フランス語・タイ語などのチャンネルがあります。 また、それぞれの国のメンバーと運営とをつなぎ、適切にコミュニティマネジメントをするためにも、コミュニティリーダーとなる存在が必要であり、通常「MOD」とよばれます。 LAGコレクションにおいても、英語・中国語・韓国語・タイ語・フランス語MODがおります。

これらの運営組織およびSNS・ファンコミュニティ全てをひっくるめたものを「NFTプロジェクト」と呼び、とりわけビジネス文脈においてNFTを語る場合はこのNFTプロジェクトを指すことがほとんどです。たとえばこのForbesの記事が説明するAzukiコレクションの説明は、運営を含めたプロジェクトの評価となっています。https://forbesjapan.com/articles/detail/45891/1/1/1?s=ns

まとめると、NFTという言葉が指し示す意味は大まかに下記4つに分類することが出来ます。

  • NFTトークン(ERC-721等)
  • NFTアイテム(画像データなどを含む)
  • NFTコレクション
  • NFTプロジェクト

NFTは複製可能なのか

さて、上記の4つの分類を示したうえで、それぞれ「NFTは複製可能なのか」について説明します。

まず、NFTトークンはブロックチェーン上に存在しており、ブロックチェーンが複製不可能であることを担保します。とりわけ「イーサリアム」のように充分大きいブロックチェーンであれば、悪意のある人間がハッキングなどをすることはほぼ不可能であると言われています。(逆に信頼のない小さいブロックチェーンに展開されたNFTコレクションはほぼ高値で取引されません)

では、NFTアイテムはどうでしょうか。このNFTアイテムに含まれる画像データは容易にダウンロードすることが可能です。そのため、とあるNFTアイテムに含まれる画像データをダウンロードして新規にNFTトークンを発行することは容易に可能です。

また、NFTコレクションも同様の理由で画像をダウンロードすることによる複製が容易であり、日常茶飯事に行われていることです。このNFTコレクションの複製は主に詐欺師の手によって行われます。

例えば、これは我々運営のもとに送られたLAGコレクションの画像を無断で使った複製コピーのNFTアイテムです。このような複製コレクションを詐欺師が多数つくり、NFTアイテム化していきます。それによって、うっかりユーザーが買ってしまうことを狙っているのです。
また、我々のプロジェクトにもこのようなスキャム(詐欺)報告が多数あがってくるため常時注意喚起をしています。

では、誰でもNFTコレクションが複製可能であるなら、すぐに発行枚数が無限になり価値を持ち得なくなるのではないでしょうか。それは違います。同一コントラクトにおけるNFTトークンはプロジェクト管理者しか修正できません。専用の秘密鍵を持っていないと修正できないため、セキュリティハッキングがない限り、悪意のある人間が同一コントラクトのコレクションを複製することはできないのです。

そ のため、NFTプロジェクトの運営は、必ずNFTコレクションのコントラクトのアドレスを、公式TwitterやDiscord等に書き、「このコントラクトのコレクションが真正なNFTコレクションです」と証明します。

つまり、とあるNFTコレクションが真正かどうかは、NFTプロジェクトが付与するのです。
複製不可能のNFTコレクションというのは「NFTプロジェクトが真正性を付与したNFTコレクションは複製不可能」という意味で(とくにビジネス上の文脈では)語られます。

では、NFTプロジェクトの複製は可能なのでしょうか。NFTプロジェクトというのは、ある意味アイドルグループや芸能グループ、vTuberグループなどと同じものであると思います。
たとえば、とある人が「にじさんじ」の有名ライバーのVRデータを使い、同じvTuberを作ったとき、それは果たして真に「にじさんじ」の有名ライバーの複製なのかという疑問になってきますが、一般的には不可能という結論になるのではないでしょうか。NFTプロジェクトも、数万のフォロワー、数万人のファンがいるコミュニティをもったプロジェクトを複製することは不可能という結論になると思います。

NFTは何が優れているのか

さて、ここまで話を進めていったうえで、NFTは何が優れているのでしょうか。NFTに使われる要素技術だけを見たとき、これは難しい問題です。

例えばリアルのカードやアート市場と比べたときの優位性は明白です。私はMTGなどのカードゲームもある程度プレイしていますが、この世界においては常に「贋作」との戦いが待っています。たとえばMTGの「ブラックロータス」などは一枚数百万円もするため、大量の贋作が出回っていますが、その真正性を証明するため、カードショップや専用の機関などが、プロフェッショナルおよび機械の手を借りて真正証明します。 先ほどNFTプロジェクトは詐欺との戦いだと言いましたが、NFTプロジェクトはあるコントラクトを指し示すだけで真正証明が出来てしまいます。これはリアルのカード市場と比べて圧倒的に便利なものであると言えるでしょう。

では、ブロックチェーンを使わず、データベースなどで管理しても同じ真正証明や複製不可能な仕組みは出来るのでしょうか。それは技術的には「YES」です。しかも、データベースの管理者がいたほうが管理者が贋作などの排除も出来てしまうため、よりセキュリティの高いマーケットプレイスが作れてしまいます。

たとえば、楽天がこれから作ろうとしているNFTマーケットプレイスはまさにこのような仕組みでしょう。要素技術としてブロックチェーンでなく仮にデータベースを使っていたとしても何ら問題はないとおもいます。(俗にこういう思想のチェーンをプライベートブロックチェーンと呼びます) https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2021/0830_01.html

では、このようなプライベートDBで管理するNFTが優れているため今後主流になっていくのでしょうか。可能性はないとは言いきれませんが、いわゆる(パブリック)ブロックチェーンには今までのデジタルビジネスにありえなかった大きな優位点があるため、私はブロックチェーンが主流になっていくと考えています。

プラットフォーマーによる不当な圧力がない

まず、一番大きな理由はブロックチェーンが「非中央集権」かつ「管理者不在」であることにより、いわゆる「プラットフォーマー」と呼ばれる存在がいないことです。これは、いわゆるApple Storeとブロックチェーンの違いを思い浮かべてもらえれば分かると思います。Apple のアプリを作りたい事業者は、まずAppleに自分のアプリについて審査を出さないといけません。そして、Appleは気に入らないアプリをいつでも消すことが出来ます。当然、Apple側にも規制や審査には理由があって行っているものなのですが、それにより時にアプリ事業者と大きな軋轢を生むことがあります。https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2109/23/news037.html

このApple とフォートナイトの訴訟が最たるものであり、Facebookなども自社のために十全となる事業展開が出来ず、常にAppleのご機嫌を伺っていると聞きます。強いプラットフォーマーは強い権力を発揮するものです。また、Appleはプラットフォーム手数料として30%という高額の手数料をとっています。

日本においても、楽天と出品者の間でよく軋轢やトラブルなどがありますが、プラットフォーマーが大きくなった時このトラブルはある意味避けられないと思います。

この点、イーサリアムなどの非中央集権のブロックチェーンは、中央に意思がある管理者がいません。そのため突然NFTコレクションの発行の条件を変えたり、あなたのNFTアイテムを消すことはありません。これはNFTコレクションの発行を考えているプロジェクトにとって大きなメリットです。また30%の高額手数料を払う必要はなく、マイナーへ支払うガス代のみでプラットフォームへの展開および運営が出来てしまいます。

一度の出品で複数のマーケットプレイスへの出品が可能

通常、メルカリに出品した商品は、メルカリのみに存在し、同時にラクマに出品されることはありません。これは、出品物自体は個人の所有ですが、出品したデータはメルカリのサーバーに保存されているからです。ですが、NFTマーケットプレイスの仕組みは違います。NFTマーケットプレイスにおいて出品するという行為は、ブロックチェーン上に存在するNFTトークンのデータを読みだして表示するだけであり、データはブロックチェーン上に存在します。

これがどういう意味かというと、私たちが自社のWebサイト上でNFTコレクションの販売が始まったとき、その瞬間に複数のNFTマーケットプレイス(OpenSea, LooksRare)などへの出品が完了してしまうということです。そのため、マーケットプレイスを移管するときに費用がかかりません。

そのため、NFTマーケットプレイスは通常のプラットフォーマーより競争が激しく、手数料が安く抑えられています。最大手のOpenSeaでさえも、取引手数料は2.5%です。Apple Storeの30%と比べるとこの違いは際立ちます。

この手数料の安さはNFTプロジェクトにとって大きな魅力です。また、OpenSeaなどのマーケットプレイスはあらかじめ設定しておけば、二次流通から特定の割合の手数料を受け取ることができるため、一次販売が完了しても二次流通を盛り上げるために様々な施策を打つことが出来るのが魅力です。これにより長期的にプロジェクトを運営するインセンティブが働きます。

世界中のユーザーからの支払い・決済がとても手軽

また、NFTプロジェクトのユーザーやファンは世界中にまたがっていますが、ブロックチェーンを利用して決済ができるため、決済がとても手軽で高速です。通常、国際送金をするためには数々の審査を通さなければいけないため数日かかり、しかも時には銀行に拒否されることもあります。ですが、ブロックチェーンではそんなことがありません。LAGコレクションの販売時にはアメリカ・中国など様々な国から購入されていきましたがスムーズに完了し、1分以内に1500個以上のセールが完売しました。

このような優れた決済の仕組みをもっているため、世界中から巨額のお金が集まっていることも重要です。いわゆる「くじら」と呼ばれる世界の数億・数十億の資産を持っているユーザーが我々のNFTアイテムを購入いただいております。

このダイナミクスがNFTプロジェクト運営における一番の魅力であるといえます。

まとめ

以上の説明を簡単にまとめると下記になります。

  • NFTというのは大きく分けて4つの意味・文脈で説明されるため、議論するときはどこを指しているのか確認する必要がある。
  • 真に複製不可能なのは、NFTアイテムやコレクションではなく、NFTプロジェクト
  • NFTアイテムに使われる要素技術は他の技術でも代替可能。真の革命はビジネスモデル革命

とりわけ、私はこのNFTがなぜ盛り上がるのか、熱狂するのか。それはNFTというのは「NFT」という技術革命ではなく、「ブロックチェーン」から連なるビジネスモデルの大きな革命であるからと考えています。タイトルの「NFTがなぜ熱狂するのか」という問いに対しては、私は「NFTは世界で動きつつあるビジネスモデルの革命の中にいるから」だと思っています。

最後に

これまでの説明を読んで興味を持たれた方は、ぜひ私たちのDiscordに来てください。実際のNFTプロジェクトの運営について色々と見ることが出来るため、ぜひ理解の一助になってくださると幸いです。https://discord.gg/soudan
ここまでお読みいただいてありがとうございます。

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