LidoやMarinadeを用いてETH, SOL, DOTなどをステーキングし、その預かり証であるstETH, mSOL, stDOTなどを手に入れることでステーキングリワードの利率を享受しながらDeFiなどで運用して追加で利回りを得ることができるので、その資金効率の高さ故にこれらのリキッドステーキングサービスは注目されている分野の一つです。そしてあるLendingプロトコルではそれらのリキッドステーキングトークンを担保にすることができます。
ですので、そのLendingプロトコルで原資産が借りられ、「ステーキングリワード+貸出利率」がその借入利率を上回る場合においては、「リキッドステーキングトークンを担保に原資産を借り入れ、その原資産をリキッドステーキングトークン化してLendingプロトコルに貸出を行うことを繰り返す」戦略を取ることで利率を高めて運用することができます。
例えばstETHを担保にETHを借り入れて、そのETHをLidoを通じてstETHに変えLendingプロトコルに貸し出す、といったプロセスを経由することで利回りを向上させることができます。
このようなレバレッジを効かせてステーキングを行うことで、高い利率が得られる一方で問題点もあります。
問題点としてはTerra - USTのような取り付け騒ぎが起きた時です。特にstETHに関してはイーサリアムが現状のPoWからPoSのコンセンサスアルゴリズムへと年内に移行する予定で、Ethereum Beacon chainという新たなPoSを採用したチェーンへと移行した後に初めてstETHをETHに償還させることができるため、それまでの間にstETHをETHに変換する方法は私の理解では市場で交換するのみです。ですので、無事移行ができれば問題ないのですが、何かしらの問題が発生し延期を繰り返すようなことがあれば、stETHに対して疑問を呈される場面が出てくるかもしれません。
また大手Lending事業者であるCelsiusのアドレスを見ると約46万stETHを保有しております。(Nansenにて確認済)
下記に共有したツイート情報が全て正確であれば、他にもETH2 stakingも含めると手元にある償還可能なETHが30%以下である状況下において、一度取り付け騒ぎを起こればCelsiusは手元にある約46万stETHを売却せざるを得ない状況に陥ります。現時点(2022/06/07)において約46万stETHをほぼ1:1のレートで市場で交換できるほどの流動性はありません。
こういったようにロックがされている状況で一度取り付け騒ぎが起きれば、市場が混乱する可能性があります。仮にCelciusの取り付け騒ぎが起きて大量のstETHが市場で交換された場合、stETHのETHに対するペッグが外れてしまい、stETHを担保にレバレッジステーキングを行っている人も精算されてしまう可能性があるため注意が必要です。
【追記:2022/06/10】
Ropsten testnetへの移行が無事に完了したとのことです。
上記のような問題点からリキッドステーキングトークンであるstETHが原資産のETHに対してディペッグする可能性に賭けたい場合は下記の戦略が考えられます。概要としてはstETHを担保にレバレッジステーキングを行う人の逆の行動を取ります。
Eulerを例に挙げて解説するとLending市場にてWETHを担保にwstETHを借り入れて、そのwstETHをWETHに交換します。こうすることでwstETH(stETH)ショート/WETH(ETH)ロングのポジションを構築することができます。そして交換したWETHにおいても追加でそれを担保にwstETHを借りられるため、少ない資本でもレバレッジを効かせたショートポジションを構築することができます。
また元々の担保のETHの価格変動リスクを抑えたい場合は先物市場で同量のショートポジションを保有するか、Lending市場でETHを借り入れることで、ETHの価格変動リスクを抑えることもできます。
※注意: 私は自分の仮説が正しいのかどうか検証すべく上記の戦略のポジションを持っています。また本記事の内容の正確性を保障するものではありません。ポジションを持つ際は必ずご自身でリサーチを行ってください。