【対談】ダンスミュージックカルチャーにおけるNFTの可能性【DJ MAAR × CARTOON】

NFTアートを通して多様なバックグラウンドの人や作品、場所、文化・技術などの多くのものを混ぜ合わせ、新しいモノを生み出し、関わった人らの人生を豊かにするパーティーをオーガナイズすることを目標に発足した「Collage」。

Collageは「開かれたコミュニティで共創を加速させダンスミュージックカルチャーに関わる人を1人でも多く増やすこと」をミッションとする。

ダンスミュージックコミュニティでは、いかにしてNFTアート、ブロックチェーンという技術を具体的に活用していけるのだろうか。またそこに眠る課題とは何なのか。

今回はそのヒントを得るべく、NFTアート並びにクラブカルチャー、ダンスミュージックカルチャーに造詣が深く東京シーンの中心にいるDJ MAARとDJ CARTOONにインタビューを行った。

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お二人の自己紹介を読者の方のためにしていただけますでしょうか?

MAAR:

DJ MAARと申します。DJ、楽曲のプロデュースをしています。DJとしての活動はローカルなクラブでのプレイから、海外の大型フェスなどの出演も行なっています。また、Fake Eyes ProductionというユニットやDOG TRAXというレーベルも運営しています。NFTに関しては2021年にNFTのマーケットプレイスの立ち上げに参加して、コンテンツアドバイザーなどを務めました。

CARTOON:

CARTOONです。DJとしての活動でいうとVisionで定期的に開催されているパーティーのEDGEHOUSEでレジデントDJとしてやらせてもらっていたり、WOMBでもパーティーを開催していたりします。コロナ前は海外のクラブでも定期的にDJをしていました。また、Steve AokiやDead Mau5 が契約しているUltra Recordと契約して、楽曲を発表したりしています。他にもインターFMというラジオ局のセンサーという番組でMCをしています。NFTのことを初めて知ったのはベトナムでDJをした時で、そこで初めてブロックチェーンやNFTというワードを聞いて興味を持つ様になりました。

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お二人はダンスミュージックラバーであり、クラバーであり、その文化シーンを自らの手で作っている方々だと思いますが、どのような魅力がそこにあるのでしょうか?

MAAR:

ダンスミュージックカルチャーの魅力は「皆で同じ場所で踊る」ということ自体にあると思っています。古来の文明において、踊りは祭事ごとや儀式に用いられましたし、音楽と踊りを同じ場所で楽しむことには人の心を動かす力があると考えています。

CARTOON:

僕はダンスミュージックがノンバーバルなコミュニケーションメディアであることに魅力を感じます。乾杯したりご飯を食べたりするのと一緒で、言語が通じなくても通用するものだし、混ぜる要素というか、化学反応が起きやすい文化です。そこにも魅力を感じますね。

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そのような素晴らしいダンスミュージックカルチャーは課題も持っていると思います。お二人が感じるクラブカルチャー、ダンスミュージックカルチャーが持つ課題について教えていただけますか。

MAAR:

デジタル化の遅れですね。クラブは様々なことを試せる場所だと思うので、それこそDX化じゃないですけど、運営も含めてもっとテクノロジーを活用しても良いのかなって思います。もちろんアナログな世界観が好きな人もいるし、僕もそうなんですけどね。でも、僕はクラブがもっと最先端の実証実験的な場所であってもいいと思います。

CARTOON:

著作権の問題ですね。法律における整備の遅れが課題だと僕は思います。例えば、DJたちは作曲する際にサンプリング音源を購入します。例えば、その音源がアーティストAが作ったものであれば、そのサンプリングが使われた全ての曲の収益の一部はアーティストAに落ちるべきですよね。NFTはそれらの課題を解決するポテンシャルも持っている技術です。ですが、その技術を可能とする法的な整備が日本ではまだされていません。だからこそ、買う側のユーザーが増えないし、売る側/アップロード側であるクリエイターも増えないんだと思います。これらの法整備は今後のダンスミュージックカルチャーに必要不可欠だと考えています。

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自己紹介でもありましたが、お二人はNFTアートへの造詣が深くあります。クラブカルチャーが好きでありながら、NFTアートキュリアスなお二人はNFTアートのどのような点に興味を持っているのでしょうか?

CARTOON:

僕はセンサーレーベルという自分のレーベルからDJたちが作った曲を発表していますが、まだ数としては微々たるものです。本当はもっと発表したいのですが、先ほど述べたように日本では法整備がなされてないので、作り手が生まれにくい現状があります。しかし、他の畑であるボカロコミュニティを見ると、プロデューサーたちが作った音源や声が無限にアップロードされていて、それを作曲に使えるという状況があります。ボカロコミュニティは法整備がしっかりとなされているし、たくさん曲が生まれやすい状況にあるんですよ。じゃあ、ダンスミュージックカルチャーで曲が多く生まれる状況をどうやって作り出せるかって考えた時に、NFTは相性が良いだろうし、法整備さえ一緒にやっていけば、希望を見出せるんじゃないかなと思っています。

MAAR:

一番最初にNFTに興味が湧いたのは、デジタルに価値を与えるという点においてです。ブロックチェーンという技術は昔から好きでした。ナップスターでブートの音源を探してたりしてた世代なんで(笑)。今は投機的な理由をもとに、価値の上下があってNFTアートの価値は最後まで持つのかどうかみたいな議論が多いですよね。でも、貨幣社会、資本主義社会は基本的に信用から始まってる訳です。紙に対して等価交換で何か資産性があるものと交換するっていうシステムです。信用がないと成り立たないシステムなんですよ。しかし、現在のNFT界隈では、そこの信用という部分がまだ強くないわけです。なので次の課題はどうやってその作品に対する価値および信用を獲得していくのかにあると思います。それが次のクリエイターが模索すべき対象じゃないかなと思います。

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ではダンスミュージックカルチャーにおける我々を含めるクリエイターたちはNFTを利用して具体的にどのようなことができると思いますか?

MAAR:

ダンスカルチャーにおけるNFTは、いかにDAOを利用していくかにあると思います。例えば、今までだったらパーティーの運営は運営チームだったり、クルーといったクローズドなグループによって行われてきました。しかし、DAOを活用することでそのクローズドなコミュニティがオープンなものとなる。例えば、運営サイドと会ったことのないグラフィックデザインができる若い子が、フライヤーの作成という方法で運営に参加したりすることも可能になるわけです。オープンなコミュニティでパーティーを作っていけるのは面白いと思います。あと、DAOに参加している人たちが出演者のブッキングなどにも関われると面白いですよね。排他性は失われますが、DAOに参加するというハードルは超えてきている訳なので、そこは問題じゃないのかなと思います。DAOでクリエイティブを分業していくと、新たな掛け算が生まれると思うんですよ。より大きな何かができると思っています。

DAO・・・階層的な構造や特定の管理者/意思決定者が存在せずとも、規定されたルールに基づくインセンティブにより分散型/自律的に機能する組織のこと。ブロックチェーンの技術を用いて透明性や公平性が担保された新しい組織の形態。

CARTOON:

DAOって入口を広げるものなんですよ。例えばパーティーをみんなでやろうとなった際には、運営に対する個人のコミット量を自分で決められますし、そこでの収益分配ルールもみんなで決めることができます。DAOはクラブカルチャーの裾野を広げる最高のツールだと感じています。でもそのようなオープンな力が加わる分、DAO参加のハードル設定、フィロソフィーの規定が大事になって来るのじゃないでしょうか。よく分からない人たちがいっぱいになっても意味がなくなりますしね。

MAAR:

あと、DAOの特徴の1つであるトークン発行によって最初からそのパーティーを応援している人達が利益を得られるというのが、ダンスミュージックカルチャーにうまく活きる部分なのかなと思います。最初は小さなパーティーだったけど、人気パーティーへと成長していって、収益を生み出すようになったら長い間応援している人は利益を得られるというシステムは面白いのかなと。

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最後にCollageへの応援のメッセージはありますか?

CARTOON:

半年もあればNFTアート界からスーパースターは生まれます。そんな状況下でコラージュから商業的にも、実力的にも世界に認められるような新しいアーティスト/パーティーが誕生することに期待しています。共に頑張っていきましょう。

MAAR:

新しいテクノロジーって、若い人たちを中心に動いていくと思うんですよ。コラージュの若い中心メンバーの方々が新しいテクノロジーを活用して、新たなクリエイティブを作ってくれたらいいなと思います。簡単ではないと思いますが、新たな経済圏と創造圏が生まれることを期待しています。


written by Kazuki Chito

フード&カルチャークルー『MCNAI 』の共同ファウンダー。ファッションカルチャーウェブメディア『i-D JAPAN』にてエディターとしても活動中。その他にも、フード、ファッション、音楽、アート、カルチャーに特化したフリーランスの編集者としての活動も行う。


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