日経ビジネス、週刊ダイヤモンドを一読した。週刊ダイヤモンドに、甘利明 氏(自民党 NTT法のあり方に関する特命委員会委員長)のインタビューがあった。今後、NTTは総務省管轄(電気通信事業)と経産省管轄(光電融合デバイス事業、再エネ事業)のハイブリッドになっていくのかもしれない。先にも言及したが、現行通りで良しとした、NTTの第三者委員会報告書と総務省の第三者委員会報告書の成果だ。誰であれ、総務省・NTTの戯言に不信感が募るのは、当たり前だろう。
「(省略)総務省の説明は絶対NTT法を残すのだということばかりでした。逆に、われわれPTのメンバーとしても、『では廃止したら、どんな問題があるのか』という議論になりました。総務省の目的がNTT法を守ることだと分かりましたので、こうなったら絶対にやり遂げてみせるぞという思いを強くしたのは確かです。(省略)」「25年という期限を盛り込んだのは、時間をかけてうやむやにしようという総務省の意図が見えたからです。(省略)」
雑誌を見る限り、NTT法廃止を巡って、自民党と総務省(情報通信審議会)が対立する中、NTTが右往左往しているようだ。巨大な天下り先(5人)だから、管轄下の特殊会社が一つでも減ることは、総務省(情報通信審議会)にとって悪夢だろう。結果、NTTはNTT法廃止を支持したが、総務省からは「NTTの主張は自分勝手で業界トップとしてあるまじき態度で、われわれだけでなく業界の信頼を失ったことは間違いない」と批判される始末。NTT法が廃止されれば、現行の準国立研究所の建て付けは不要になり、基礎研究は敬遠され、研究分野も狭小になっていくだろう。NTT研究所は切り売りされるに違いないし、事業会社への転籍、およびリストラも進むだろう。NTT法(電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究)に埋め込まれていると考えた懸念(NTT特別会計)は的外れだったのかもしれない。総務省の固執は巨大利権を彷彿させるが、邪推が過ぎるのは天邪鬼なのかもしれない。自民党とNTTは、ユニバーサルサービスからNTTを開放し、電気通信事業者法で対応させる一案を提示する。全く、信用に値しないのが残念だ。
郵政民営化の悪夢を想起せずにはいられない。NTT法廃止で起きることは、他の特殊会社の民営化(私物化)と同様だ。資本効率が悪く歪んだ中立・公正な舞台仕掛けが破壊されて、厳選された有資格者インサイダー(政・官・財・学・マスコミ)内に還流していた富が株主配当として開放される。澱んでいたとはいえ、少なくとも国内で還流していた富の国外流出が加速する。有資格者インサイダー(政・官・財・学・マスコミ)は国内で消費するが、外資株主は日本で消費してくれない。準国立研究所と揶揄されるNTT研究所の収益性を外資の株主は許さない。日本国内の研究開発力は小さくなり、雇用が小さくなり(正社員→非正規社員)、日本国内の消費が小さくなる。失われた30年の一因は財政投融資(郵貯・簡保→特殊法人)の縮小であろうと考えるが、NTT法廃止は拍車をかけるだろう。日本電信電話は兄さんの日本郵政を追いかける。大切な国民資産が、兄弟揃って外資に渡ってしまう悲劇を忘れない。
国策会社の在り方は、敬愛する原口代議士(衆議院議員)が言及するテマセク(政府系ファンド)が参考になるだろう。卵を産む鶏を売り渡して終わりにせず、逆に、外国から買い漁って集める大きな鳥籠を用意している。GAFAとの競争に関しては、残念だが、NTTグループはチャレンジしたが敗れ続けた。プラットフォーム(広告(検索エンジン、動画配信、SNS)、EC、IaaSなど)はグローバルな競争になるため、競争が激烈だ。ストックオプションを含む動機付けがないと競争できない。どれだけ優秀なエンジニアが集まっても、狂気がない普通のサラリーマンには太刀打ちできないだろう。NTTグループがグローバルに競争している本業はシステム構築だ(NTTグループの強みはデーターセンター事業、ネットワーク事業)。IOWN(光電融合デバイス)を梃子に、グローバルな成功を祈念する。
手前味噌で身内贔屓かもしれないが、持株会社に在籍時、NTT研究所の厚みを実感している。基礎研究を含めて研究分野が広範なため、短期の収益化は難しい。準国立研究所がスタートだから(基礎研究従事者は日本育英会奨学金返還の免除があった)、許容リスクも大きく、大胆なチャレンジができたはずだ。Google社が「20%タイム」を用意して、社員の創造性を刺激していた効果をNTT研究所は内包していたかもしれない。狭い了見しかない三流経営者が短期的な評価を以てNTT研究所を切り捨てることが無いことを祈念する。情報通信研究機構(NICT)(総務省)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)(経産省)などと比較して、研究成果を長期評価するべきだ。必要に応じて、個々の研究プロジェクトが適切な国立研究所へ移管されることを祈念する。
2023年5月、中興の祖、澤田会長は経団連副会長になられた。消費税還付金(補助金)を目当てに経団連は消費税増税に賛成する。ポストと引き換えに、何を差し出したのか?何を差し出すのか?視線の先に利用者・従業員がいるはずもなく、格差社会を助長するためのポスト就任だろう。従業員給与から株主配当への振り替えが加速しないことを祈念する。NTT法廃止により、日本の電気通信サービスが品質向上することを祈念する。更に言えば、近未来、日本が活性化して、雇用・賃金・消費が増えることを祈念する。澤田会長の辣腕が許されるのは、「日本の電気通信インフラを守るため」、100歩、譲って、「NTT社員の雇用を守るため」に尽きる。売国奴として、未来人から恨まれることがありませんように。
正否判断を保留中のリンクは、タイトルに△を接頭した。
*NTT帝国の野望 (週刊ダイヤモンド 2024年1/20号)
*NTT帝国の奇襲
*目覚めるNTT くびき解かれる33万人企業 (日経ビジネス 2024年1月15日号)
*一般社団法人 日本経済団体連合会 会長・副会長
*委員長等一覧(アメリカ委員会、産業競争力強化委員会)
*CSISのAI Councilメンバーへの選出について(日本電信電話株式会社 澤田 純 代表取締役会長)
*【郵政民営化】社会はどう変わった?担当大臣の竹中平蔵と考える
*郵政社長も認めた?郵政民営化の間違いと裏側 〜前編〜
*郵政社長も認めた?郵政民営化の間違いと裏側 〜後編〜
*NTT法の見直し 総務省の審議会 第一次報告書まとめる
*第11回 通信政策特別委員会 事務局説明資料
*テマセク・ホールディングス
*財政投融資の概要2023
*財政投融資改革関連資料
*なぜ日本はこんなにダメになったのか、それは「創造」より「管理」を優先したからという「いつもの話」をしました
△巨大なフラッグ企業が完全民営化するという
△ドサクサに紛れてNTT法廃止?また君か?良い加減にしろ
△日本のディープステート
*輸出還付金!これって私たちの買い物するたびに10%支払う消費税から充てられてるって知ってた?
*立民が消した「消費税減税」 ポピュリズムの呪縛脱するか
*消費減税の訴え「間違いだった」 立憲・枝野氏、公約見直しに言及
*【消費税の基礎】個人事業主のための消費税完全講座!
*起源はフランスの輸出補助金!消費増税は貿易摩擦を生む
△米国と水面下で暗闘があったことも承知している
△あまりにも出来過ぎた日本潰しの政局劇だ
*裏金もさることながら表金こそが問題だ パーティ裏金疑惑で抜け落ちている重要な視点