ブロックチェーンの世界へようこそ!初めての方もそうでない方も、新しい概念や専門用語が溢れているので戸惑うことでしょう。その中でも、「MEV」なんて言葉、耳にしたことがありますか?なんとなく怖いもの、というイメージを持っているかもしれませんね。
しかし、心配は要りません。MEVは少し複雑に思えるかもしれませんが、一緒にじっくりと理解していけば、それほど怖いものではありません。実は、MEVはブロックチェーンの動きを理解するための大切な手がかりなのです。
この記事では、初心者の方々でもMEVを理解できるように、平易な言葉で説明していきます。MEVが持つ意味や働きを一緒に学び、ブロックチェーンの世界をもっと深く探求してみましょう。
イーサリアムのブロックの仕組み イーサリアムでは、あなたが送金や何かの操作をすると、それは「トランザクション」と呼ばれる命令になります。しかし、その命令はすぐに処理されるわけではありません。まずは待ち行列のような場所、それが「mempool」に入ります。
このmempoolは、全世界のイーサリアムの「ノード」が見ることができます。バリデーターという特別なノードから「ブロックプロデューサー」が選ばれ、この待ち行列からトランザクションを選んで、それを処理して新しいブロックに詰めます。そして、その作業の報酬として、トランザクションに付随する手数料(ガス代)をもらいます。
ブロックに詰められるトランザクションには上限があります。ブロックプロデューサーは、どの命令を先に処理するかを自由に選べます。だから、彼らは通常より多くの報酬がもらえる命令を優先的に選びます。つまり、手数料が高い命令が早く処理される傾向があります。これがイーサリアムのシステムの基本的な動き方です。
実は、ブロックプロデューサーはトランザクションの順序を操作することで、通常のトランザクション手数料以上の利益を得ることが可能です。これがMEVの基本的な概念です。
MEVの具体例を説明する前に、プライスインパクトの説明をします。
ここでは適当なトークンとしてリンゴトークン(以下、リンゴとします)を例に説明します。
果物市場の取引を想像してみてください。Sushiswapという八百屋で、リンゴトークンとお金を交換できるとします。
ある時、あなたが大量のリンゴを欲しくなったとします。突然、大量のお金を持ってきてリンゴと交換したいと思った場合、Sushiswapのリンゴはすぐになくなってしまいます。リンゴの需要と供給のバランスが変わるため、リンゴの価格が上がります。あなたが交換したいトークンの量が店の在庫(ここでは流動性と呼びます)と比べて大きいとき、価格の変動(プライスインパクト)が大きくなります。
それでは、アービトラージ、サンドイッチ、清算という代表的な3つのMEVについて見ていきましょう。
ある日の朝、Sushiswapではリンゴトークンが200円で売られていました。隣町にはUniswapという商店もあり、そこでもリンゴトークンが200円で売られていました。
その日の昼、あなたがリンゴを欲しくなり、Sushiswapで大量にリンゴを購入しました。すると、Sushiswapでは価格が変動して、リンゴが500円になりました。ここで、ある人がUniswapではリンゴが200円で売られていることに気づきます。つまり、リンゴをUniswapで買い、Sushiswapで売れば、価格差の分だけ儲けることができます。これがアービトラージです。
アービトラージには利益を得るチャンスがありますが、リスクも伴います。例えば、あなたがUniswapで安いリンゴを買ってSushiswapで高く売る計画を立てたとします。リンゴがSushiswapで500円で売られているのを確認してから、Uniswapで200円で購入しました。しかし、あなたが果物屋のUniswapからSushiswapへ移動している間に、Sushiswapの価格が変動してリンゴが1個190円になってしまったとします。この場合、あなたがSushiswapでリンゴを売ると損をしてしまいます。
これは現実世界のアービトラージに常に存在するリスクです。しかし、ブロックチェーンの世界では、このリスクを回避する方法があります。Atomicなアービトラージは、一連の取引を「全て、または無し」で実行する方法で、これによりアービトラージのリスクが軽減されます。これは、全ての取引が同じブロックに含まれ、成功するか全く実行されないかのどちらか一方になることを保証します。これにより、一部の取引が成功し、他の取引が失敗するというシナリオが避けられます。Atomicアービトラージで利益を最大化する方法を考えてみましょう。取引所間の価格差がアービトラージの利益の源です。価格差は誰かの取引による価格変動によって引き起こされます。これは、mempoolを監視していれば見つけることができます。mempoolは通常公開されているので、全世界中の人がアービトラージを狙っています。アービトラージ取引が行われると、価格差は減少してしまいます。ですから、大きな量の取引トランザクションの直後にアービトラージのトランザクションを入れる(バックランニングする)ことによって最大の利益が得られます。これが、ブロック内のトランザクションを入れ替えることによって価値を抽出する例の1つになります。
DEX間のAtomicアービトラージ以外にもCEX-DEX間アービトラージなども存在します。
参考:
次に、サンドイッチについて見てみましょう。これは、あるトランザクションの直前と直後に自分のトランザクションを挿入して「サンドイッチ」する手法です。
例えば、Sushiswapでバナナトークン(以下、バナナ)を1個50円で購入しようとしました。このトランザクションがmempoolに送られると、何者かがそれを監視し、あなたがバナナを購入しようとしていることを察知しました。この者は、あなたのトランザクションより先に(フロントランニングして)大量のバナナを購入しました。
これによりバナナの価格が一時的に上昇し、あなたは結果としてバナナを1個70円で購入することになりました。さらに、あなたがバナナを購入したことでバナナの価格は1個80円に上がりました。そしてその直後、この者はバナナを売却しました。このように、あなたのトランザクションを挟むことによって、彼はバナナを安く買って高く売ることに成功したのです。これがサンドイッチ攻撃の基本的な概念です。ブロックプロデューサーは、他のユーザーのトランザクションの前後に自分のトランザクションを挿入し、価格を一時的に上昇させ、その結果として利益を得ます。あなたのトランザクションは、彼らの「サンドイッチ」の中に挟まれてしまうのです。
参考:
DeFiのレンディングプラットフォームでは、ユーザーは自分の暗号資産を担保に借入れを行うことができます。この際、借り手は一定の割合以上の価値を持つ暗号資産を担保として預けなければなりません。
担保となる資産の価値が急激に下落すると、その価値が借入れ額を下回る可能性があります。その場合、借り手は追加の担保を預けるか、借入れた資産の一部を返済する必要があります。もし借り手がこれを行わない場合、レンディングプラットフォームは「清算」というプロセスを開始します。清算とは、借り手が預けた担保を売却し、借入れた資産を返済することです。この清算プロセスは多くの場合、他のユーザー(清算人)が割引価格で担保を買い取る形で行われます。
清算人は市場価格よりも割安で担保を買い取ることができるため、しばしば競争が発生します。担保率が清算ラインを下回っているかどうかは、オラクルの価格情報によって決まります。このため、清算によるMEVは、オラクルの価格更新トランザクションの直後に清算トランザクションを挿入することになります。
参考:
mempoolは「暗い森」と比喩されることがあります。
森は非常に広大で、数多くの動物や木々、植物が生息しています。しかし、その深部に踏み入ると、日光がほとんど届かず、何がどこに存在するのかが不明になります。これが「暗い森」の比喩です。さらに、森の中には予期せぬ生物や奇妙な植物が突如として現れます。これは、mempoolが混沌とし、予測不能で、利益を追求する多様なアクター(マイナー、トレーダー、ボット等)によって操作される現状を表しています。これらのアクターは、MEVを抽出するために他のトランザクションを捕食することがあります。この捕食的な競争は、mempoolが暗く、不透明で、混沌とした「暗い森」に似ていることを象徴しています。
参考:
ブロックチェーンの利用者は、MEVによって一方的に損失を被ることがあります。また、MEVの抽出を得意とするごく一部のプレーヤーだけが大きな利益を独占してしまいます。
では、この状況を改善する方法はあるのでしょうか?次の記事でそれについて詳しく解説します。
(※本文は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。リンゴトークンやバナナトークンの購入、売却を推奨するものや、MEV実行戦略を推奨するものではありません。また、SushiswapやUniswapは実在するDEXの名称ですが、その利用は自己責任でお願いします。)