【解説記事】公共財へ資金提供を促進する「Gitcoin」とは
October 29th, 2023

GreenPill Japanの基になっているGreenPill Networkの創業者であるKevin OwockiはGitcoinの共同創業者でも知られています。来月11月より、Gitcoinによる助成金ラウンドが開催されることもあり、GreenPill Japanの初回のニュースレターでも扱いましたが、今回はGitcoinの概要について扱います。

Gitcoinは、コミュニティが自分たちにとって重要なものを構築したり、それに資金提供したりすることを可能にするためのツールを開発しているプロジェクトであり、2017年にKevin Owocki氏とScott Moore氏らによって立ち上げられました。また、2021年5月にはGTCトークンがリリースされ、GitcoinDAOが立ち上がっています。そして、Gitcoinが開発しているツールやプロジェクトは主に3つあります。

1つは、Gitcoin Grants Programです。このプログラムは、オープンソースソフトウェアを始めとした様々なプロトコルやコミュニティに対して、資金を提供するというプログラムになります。2019年2月に初めてのGrantラウンドが開始されて、現在に至るまでおよそ20回のラウンドが実施されました。これらのラウンドを通して、合計5000万ドル以上の資金がプロジェクトに提供され、直近でもGitcoin Beta RoundやGitcoin Citizens Roundといったラウンドが実施されており、オープンソースソフトウェアを開発する上で欠かせないプログラムと言えるでしょう。

このGrants Programでは、Quadratic Funding(クアドラティック・ファンディング。以下、QF。)という慈善資金を民主的に配分するメカニズムを採用しており、GitcoinはQFのメカニズムを実装した著名なユースケースの一つとなります。QFはVitalik Buterin氏、Zoe Hitzig氏、Glen Weyl氏らによって提案されたアイデアであり、「プロジェクトが受け取る資金の額は、受け取った寄付の平方根の合計の2乗に比例する」という資金配分のメカニズムです。この説明だと、直感的に分かりにくいと思うので、QFの説明は別の機会で扱うかもしれません。ここでは、プロジェクトへの寄付額よりも寄付数を重んじる発想(少額だったとしても多くの支持者がいればプロジェクトは多くの資金を受け取ることができる)であり、公共財への資金提供に適しているメカニズムであるとされていると理解してもらえたら良いです。

また、従来このプログラムはEthereumなどに展開されていましたが、ここ最近のラウンドではGitcoinが初期の開発にも携わっていたPublic Goods Network(PGN)にも展開されています。PGNは、公共財をサポートするためにOP Stackによって構築されたEthereumのレイヤー2です。PGN上に構築する利点としては、レイヤー2であることからEthereumの堅強なセキュリティを保ちつつ、Ethereumよりも安価で高速な取引を可能にします。それに加えて、PGNによって発生した収益は公共財のためのサポートのために活用されることが計画されています。

2つ目は、Grants Stackです。従来の集権化したグラントプラットフォーム(cGrants)を縮小して、cGrantsから新しく移行していくものとして開発されたものです。このツールはAlloプロトコルという資金調達のインフラストラクチャーとして機能するオープンソースの分散型モジュール式プロトコル(スマートコントラクト)で構築されており、コミュニティがより自己主権的な方法で共通のニーズに資金提供できることを目的として開発されました(現在アルファラウンド、ベータラウンドにてテストを重ねています)。つまり、Grants Stackは、より柔軟でカスタマイズ可能な形でパーミンションレスにグラントプログラムを立ち上げることができるため、従来よりもよりボトムアップな仕様になったと言えるでしょう。

そして、3つ目は、Gitcoin Passportです。Gitcoin Passportは、本人確認アプリケーションであり、様々な認証システムからスタンプ(verifiable credential:検証可能な証明書)を収集することで認証情報のアグリゲーターとして機能します。つまり、このパスポートは特定のアプリケーションに依らない仕組みであり、人間であることの証明(Personhood Proof)と多元性(Plurality)にとって利点のあるツールを目指しています。また、Gitcoin PassportはCeramicで構築されているため、Passportのデータはコンポーザブルで相互運用可能なものになります。

このツールの用途としては、Gitcoin Grantsにおけるシビル耐性をもたらすことです。QFを用いているGitcoin Grantsでは、寄付額よりも寄付数を重視する考え方であるため、一人の人間が複数のアカウントを作成することでネットワークを支配しようとするシビル攻撃の懸念があります。Gitcoin Passportは、様々な認証情報を統合することで本人であることを確認しているので、シビル攻撃に対する耐性をもたらそうとしています。

以上の3つがGitcoinの中心のプロジェクトですが、Gitcoin Grantsのインデックストークン「gtcETH」、Coinbaseが堅実なクリプト政策に向けた運動のために始めたNFTプロジェクト「Stand with Crypto」、ハッカソンで生まれたAaveを活用したプロジェクト「FundPG」といったGitcoinやGitcoinをサポートするようなプロジェクトも度々散見され、GitcoinとGitcoinを中心としたエコシステムは、公共財への資金提供を行うためのインフラストラクチャーとして重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

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