This article is in Japanese; the English version is over here.

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はじめに：ブロックチェーンデータのサイロ化を超えて

ブロックチェーン技術が急速に発展する中で、異なるブロックチェーン間でデータが互いに孤立し、情報共有が困難になるという問題が顕在化しています。このサイロ化は、情報の透明性の低下や効率性の損失を招くことがあります。

Futabaチームでは「Planting the Seeds of Omni-chain Growth」と題して、ブロックチェーンの相互通信技術がアプリケーションイノベーションの未来をどのように拓くのかを探求します。毎号各Dappsに焦点を当て、具体的なアーキテクチャ案を交えながら、この可能性を深堀りしていきます。

Lending Protocolとは？

ここでは、まずLending Protocolについて簡単に説明しましょう。

Lending Protocolとは、ユーザーが担保となる資産を預けることにより、ブロックチェーンを利用してトークンを借りることができる分散型金融システムです。。預入資産に基づき借入可能金額が決定され、資産価値が下がると強制的に返済が求められます。

分散型金融システム（DeFi）は、伝統的な金融機関に依存せず、スマートコントラクトを通じて金融サービスを提供する新しい形態の金融です。

Single Chainでの現状課題

単一チェーンから複数のチェーンにLending Protocolを適用する際、主に二つの課題が浮かび上がります。一つ目は、既存の貸出プロトコルが各チェーン間の流動性を確保しないため、流動性の分断が生じる点です。

もう一つは、資産をEthereumなどのセキュリティの高いチェーンに持っておきたいというユーザー心理とガス代との衝突です。ユーザーはLayer2のようなガス代の安いチェーンでDappsを使いたい一方で、資産自体はイーサリアムのような安全なチェーンで行いたいと考えています。

しかし、現在のLending protocolでは、チェーンを跨いでの引き出しが行えないため、ユーザーは資産をL2にブリッジする必要があります。これはUXの面でも、複数のDappsとトランザクションを発生させなければいけないという点でも課題になっています。

解決策：Omni-chain Lending

Omni-chain Lendingは、すべてのチェーンから資産の貸し出し、引き出し、返却が可能なシステムです。これにより、流動性の問題が解決され、全チェーンで流動性が提供されます。本システムでは、Hub chainとSpoke chainの設計を採用し、FutabaとMessaging protocolを使用しています。

用語解説

Hub Chain

Hub Chainは、Omni-chain Lendingアーキテクチャの中心的な役割を果たすチェーンです。これは全てのチェーンのデータを一元管理し、適切なタイミングで他のチェーンにメッセージを送信する役割を担います。具体的には、Spoke Chainを含む全てのチェーンの流動性データを管理し、必要に応じてリバランスを行い、一定の流動性を維持します。

Spoke Chain

Spoke Chainは、Hub Chain以外の全てのチェーンを指します。これらのチェーン上では、貸し出し、預け入れ、返済など、Lendingに関連する全ての機能が実行可能です。これにより、Omni-chain Lendingシステムは柔軟性と広範囲のアクセスを提供します。

Futaba

Futabaは、異なるチェーン間で安全にデータを取得し、それをスマートコントラクト上で変数として使用することができるインフラストラクチャーです。これにより、複数のブロックチェーン間でのデータの連携と同期が可能になり、Omni-chain Lendingシステムの効率性とセキュリティを高めます。

Messaging Protocol

Messaging Protocolは、異なるチェーン間でデータを送信するためのインフラストラクチャーの総称です。これにより、Omni-chain Lendingシステム内の異なるチェーン間でスムーズなコミュニケーションとデータ転送が可能となり、システム全体の連携と効率性が向上します。

主要機能

• Deposit: どのチェーンからでも資産を預ける機能。

• Withdraw: 担保資産と貸し借りの状況をチェーンを超えて確認し、引き出しを行う機能。

• Borrow: 全てのチェーンを合計した際に十分な担保があることを確認後、借入を行う機能。

• Repay: 返済を行う機能、Futabaを使用して借用状況を確認。

• Rebalance: GelatoやChainlink Automationを使用して、流動性の管理を行う機能。

Omni-Chainを評価するフレームワーク

Omni-chain Lendingコンセプトの潜在性と影響を評価する際、私たちは以下の四つの重要な側面に焦点を当てます。

1. 収益性: Omni-chain導入の経済的利益。

2. コミュニティへの影響: 既存及び新規コミュニティと積極的に関わるアイデアかどうか。

3. イノベーション: 単一チェーンソリューションと比べて、根本的なイノベーションを起こしているかどうか。

4. ユーザー体験（UX）: ユーザーがアプリを使う際の体験は向上されているか。トランザクション回数やネットワークを切り替える回数は減っているのか。

Omni-chain Lendingの評価

収益性

Omni-chain Lendingは、従来のブリッジベースの方法に比べて取引コストを大幅に削減します。これにより、預け入れ・借入・返済を1回の取引で行うことが可能となり、ガス代が低下します。また、チェーン間での統一された流動性は、流動性提供者（LP）を増加させ、効率を向上させ、年間利回り（APR）の可能性を高めるポテンシャルがあります。

コミュニティへの影響

Omni-chainモデルでは、ユーザーは現在のチェーンに保有資産を維持しつつ、異なるチェーン間で資産を借りることが可能になります。この柔軟性は、チェーン間のコミュニティ交流を加速し、より連携されたダイナミックなブロックチェーンエコシステムを育成します。

イノベーション

流動性管理がチェーンを超えて可能になれば、新たなチェーンを統合する時の課題が大幅に解決し、これまでになかった影響を与えると考えます。

ユーザー体験（UX）

Omni-chain Lendingモデルは必要な取引の数を大幅に減少させ、貸出体験全体を向上させます。さらに、目的地チェーン（例：Layer 2チェーン）がガスレス取引を採用すれば、ユーザーはこれまで触れたことのないチェーンで容易に資産を保持でき、アクセシビリティと使いやすさが大きく広がります。

課題

最後に、Omni-chain Lendingの課題についてもご紹介します。

• AAVE の aToken のように、入出金時にトークンが鋳造・焼却された場合の処理をどうするかを別途考えなくてはならない。

• 利率の設定など、共通の流動性を産むことがどれくらいの経済的利益を発生できるかについて詳細な数式を設定する必要がある。

• チェーン間のtoken価格の違いがomni-chainだとより発生しやすく、これらをどう対処するかを考えなくてはならない。

• 各プロセスでFutabaとMessaging protocolを使用するため、レイテンシーが発生する。

  • レイテンシは悪意のあるMEVにつながる可能性がある。

• 新しいチェーンが増えた時に対応することができるアーキテクチャじゃないとスケールしないことに注意しなければならない。

• rebalanceについて、どのチェーンに何%流動性を提供するかについては、設計に幅がある。

終わりに

Omni-chainのLendingが実現することができれば、新たなチェーンを素早く統合でき、UXを向上させることができるようになります。

Futabaでは、こうしたOmni-chainのDapps化にに関心のあるプロジェクトや、新たな設計を考えている開発者とのコミュニケーションを常に募集しています！

興味があればこちらまで、いつでもお待ちしています👋