安倍晋三元首相の暗殺事件を機に、21世紀にもなってこの日本で「カルト」という単語が、その実態を含めて(ささやかながらだが)テレビや新聞で語られるとは、ちょっと想像できなかった。
その数か月前、「セクト主義」、「セクト」という単語が地元の市議会で使われたことに、ちょっとびっくりしていた。市長の思想信条の来歴を問う文脈だった。これもある種時代がかった単語だ。
カルトとセクト。
日本語の文脈だと、前者は宗教で、後者は社会的な思想や主義主張と、分けて使われている感じだと思う。
今話題のカルト宗教の「カルト」は、英語ではもちろんcult。ドイツ語はsekte。フランス語はsecte。
印欧語の一部では、カルトとセクトは同じというか重なる意味で使われている。
これは語源学に詳しくなくとも、たとえば有名なところでは、プロ倫などマックス・ウェーバーの一連の著作やその周辺の本を読んだ人には、ゼクテとカルトの重なりが容易に理解できると思う。
セクトとカルト。
カルトとセクト。
(カルトはもちろんそのつづりと響きからもわかるように、もともとラテン語のcultus。カルチャーにもつながる言葉だが、そこまで行くにはちょっと寄り道的な説明が必要なので省略)。