「この情報検索、誰かやってくれないかな。」
時間のない診察室で、日々感じることが解消できないでしょうか。
海外の事例をもとに、新たなプロジェクトを実現させたい。
「この情報検索、誰かやってくれないかな。」
時間のない診察室で、日々感じることです。
診察で生じる疑問の多くは解決されないままになる、という研究データがあります。
Del Fiol G, Workman TE, Gorman PN. Clinical questions raised by clinicians at the point of care: a systematic review. JAMA Intern Med. 2014 May;174(5):710-8. doi: 10.1001/jamainternmed.2014.368. PMID: 24663331.
臨床家(医師・研修医のほか、アシスタント医師、診療看護師、看護師、歯科医師、ケアマネージャーを含む)の診察上の疑問について検討した、システマティックレビューです。
11研究から、このような結果が示されています。
1回の診察あたり0.57個の疑問が生じるが、調べるのは51%でそのうち解决できるのは78%。
時間もなく答えが存在するかもわからないことが、問題解决の壁に。
つまり、生じる疑問のうち60%が解决されないままになっている、という結果です。
これはぼくの実感とも一致するデータです。
Unanswered questions may lead to suboptimal patient care decisions.
(未解決の疑問は、最適でない患者ケアの決定につながる可能性があります。)
疑問の解决は医療の質に直結する課題です。
なんとかその場で情報検索ができないでしょうか。
カナダのオタワで2004年から2006年に実施された研究を見つけました。その名も「ジャスト・イン・タイム」プロジェクト。プライマリケアに従事する医師88人を対象とした、図書館司書による情報検索サービスのランダム化比較試験です。
McGowan J, Hogg W, Campbell C, Rowan M. Just-in-time information improved decision-making in primary care: a randomized controlled trial. PLoS One. 2008;3(11):e3785. doi: 10.1371/journal.pone.0003785. Epub 2008 Nov 21. PMID: 19023446; PMCID: PMC2583045.
なんと、医師からの質問に対して20分以内に情報提供するという、画期的なサービスです。
質問に対する平均回答時間は13.68分/質問。提供された情報について62.9%が肯定的な評価となっています。満足度調査では86%がケアに好ましい影響を与えたと回答し、72%がサービスを利用したいと回答しています。
McGowan J, Hogg W, Rader T, Salzwedel D, Worster D, Cogo E, Rowan M. A rapid evidence-based service by librarians provided information to answer primary care clinical questions. Health Info Libr J. 2010 Mar;27(1):11-21. doi: 10.1111/j.1471-1842.2009.00861.x. PMID: 20402800.
課題としては以下のようなものが挙げられています。
・複雑であったり、稀な疾患や患者さん特有の問題についての質問には、的確な回答ができない
・臨床医が必ずしも20分以内の回答を求めているわけではない
・医師と看護師の情報ニーズは異なっていることが明らかになった
今後の新たなQ&Aサービス開発に生かす、と書かれています。どうなったのでしょうか・・・
McGowan J, Hogg W, Zhong J, Zhao X. A cost-consequences analysis of a primary care librarian question and answering service. PLoS One. 2012;7(3):e33837. doi: 10.1371/journal.pone.0033837. Epub 2012 Mar 19. PMID: 22442727; PMCID: PMC3307768.
2012年には、費用結果分析まで発表されていました。
1件あたりのコストは38.20ドル(通常のサービスでは、1件あたり5.70ドル)。家庭医がこのサービスを利用にすることで時間を節約できた場合、年間61,100人の患者を多く診察することができます。
節約した時間でもっと診察ができる、メリットを強調した論文となっています。
「ジャスト・イン・タイム」プロジェクト、その後の行方はどうなったのでしょうか。追跡をつづけます。
さて、このプロジェクトから20年ほど経過しています。
今始めるとしたら、どんなサービスにすべきでしょうか。
AI情報検索アシスタントサービスも充実しつつあり、web3も活用したい。情報検索がコミュニティとして動的に機能するようなしくみがいいかなと。
医療現場での情報検索アシスタント、構想しています。
小さな医療 準備室(Discord)では、これを実現できないか模索しています。 協力していただける方、興味のある方は、「小さなお手伝い」チャンネルへどうぞ。