高齢者の転倒予防に効果的な介入は?
February 21st, 2025

2017年のネットワークメタ分析によると、運動単独および様々な介入の組み合わせは、通常ケアと比較して高齢者の転倒による負傷リスクの低下と関連していました。適切な転倒予防策の選択は、患者や介護者の価値観や好みに依存する可能性があります。


研究の概要

参加者

  • 65歳以上の高齢者を対象とした無作為化比較試験(RCT)のメタ解析

  • 計283件のRCT(159,910名、平均年齢78.1歳、女性74%)

介入

  • 運動

  • 視力評価と治療

  • 環境評価と改修

  • 多因子評価と治療(総合的な老年医学的評価を含む)

  • 診療所レベルの品質改善戦略(例:ケースマネジメント)

  • カルシウムおよびビタミンD補給

比較

通常ケア(介入なしまたは標準的な医療管理)

アウトカム

  • 負傷を伴う転倒

  • 転倒による入院

研究デザイン

  • システマティックレビューおよびネットワークメタ解析

結果

負傷を伴う転倒に対する有効な介入:

  • 運動: OR 0.51 (95% CI, 0.33–0.79), 絶対リスク差(ARD) -0.12 (95% CI, -0.20 to -0.05)

  • 運動+視力評価・治療: OR 0.17 (95% CI, 0.07–0.38), ARD -0.38 (95% CI, -0.53 to -0.22)

  • 運動+視力評価・治療+環境評価・改修: OR 0.30 (95% CI, 0.13–0.70), ARD -0.23 (95% CI, -0.39 to -0.08)

  • 診療所レベルの品質改善戦略+多因子評価と治療+カルシウム+ビタミンD補給: OR 0.12 (95% CI, 0.03–0.55), ARD -0.17 (95% CI, -0.33 to 0.00)

転倒による入院:

  • 2件のRCT(516名)によるペアワイズメタ解析では、有意な差なし: OR 0.78 (95% CI, 0.33–1.81)

文献

Tricco AC, Thomas SM, Veroniki AA, Hamid JS, Cogo E, Strifler L, Khan PA, Robson R, Sibley KM, MacDonald H, Riva JJ, Thavorn K, Wilson C, Holroyd-Leduc J, Kerr GD, Feldman F, Majumdar SR, Jaglal SB, Hui W, Straus SE. Comparisons of Interventions for Preventing Falls in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA. 2017 Nov 7;318(17):1687-1699. doi: 10.1001/jama.2017.15006. Erratum in: JAMA. 2021 Apr 27;325(16):1682. doi: 10.1001/jama.2020.25768. PMID: 29114830; PMCID: PMC5818787.


研究の背景

  • 高齢者の転倒は、患者と医療システムに大きな負担をもたらす。

  • 2010年のデータでは、65歳以上の高齢者の2年間の転倒発生率は36%であった。

  • 2012年には、転倒に関連する医療費がメディケアだけで310億ドルに達した。

  • 転倒は深刻な負傷や死亡につながる可能性があり、不安や抑うつ、生活の質の低下とも関連する。

  • 世界的な高齢化の進行により、転倒の発生率は今後も増加すると予測される。

  • 既存のRCTやシステマティックレビューでは、転倒予防プログラムを個別に検討してきたが、複数の介入を直接比較する研究は少ない。

  • 効果的な転倒予防プログラムの要素が明確になっておらず、実施の妨げになっている。

  • これらの課題を解決するため、本研究ではネットワークメタ解析を用いて、転倒予防のためのさまざまな介入の有効性を総合的に評価することを目的とした。


研究の限界

  1. データの制約

    • 転倒率や医療コストに関するデータが一貫して報告されていないため、これらのアウトカムを直接評価できなかった。

    • 質の高いエビデンスが不足しており、ネットワークメタ解析ではデータが不足している比較も多かった。

  2. 研究デザインの問題

    • 多くのRCTで適切な割り付けの隠蔽がなされておらず、バイアスのリスクがある。

    • 研究の大半が6か月以内の短期間で実施されており、長期的な効果や持続可能性を評価できなかった。

    • 急性期医療(病院)での研究が少なく、在宅や施設でのデータが中心だった。

  3. ネットワークメタ解析の限界

    • 多数の介入を比較したため、データがまばらな組み合わせもあり、結果の精度が低下した可能性がある。

    • 多重比較の影響で、偶然による偽陽性(Type I error)が生じるリスクがある。

    • 一部の介入で比較対象が少なかったため、結果の一般化可能性に制限がある。

  4. 報告と解析の制約

    • 多くの研究で転倒の定義や測定基準が統一されておらず、結果の一貫性に影響を与えた。

    • 研究によって報告されるアウトカムが異なり、一部の転倒予防プログラムの効果を十分に評価できなかった。

    • 品質改善戦略の詳細な実施内容が研究間で異なり、効果のばらつきを生んだ可能性がある。

  5. 介入の個別化の必要性

    • サブグループ解析では、転倒歴のある高齢者に対しては特定の介入が逆効果となる可能性が示唆された。

    • 介入の効果は、患者の個々の状態や転倒リスク要因に応じて調整する必要がある。

この研究は、転倒予防における介入の効果を包括的に評価した点で重要だが、データの不均一性や研究デザインの制約が結果の解釈に影響を及ぼす可能性があることに注意が必要である。

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