「この情報検索、誰かやってくれないかな。」
時間のない診察室で、日々感じることが解消できないでしょうか。
インフォメーショニスト（Clinical informationist）を育成し、医療チームに組み込んでいきたい。

こちらの記事の続編です。

Gordon Guyatt教授らの横断研究

Connected Papers で2017年のひとつの研究がヒットしました。

Izcovich A, Criniti JM, Popoff F, Ragusa MA, Gigler C, Gonzalez Malla C, Clavijo M, Manzotti M, Diaz M, Catalano HN, Neumann I, Guyatt G. Answering medical questions at the point of care: a cross-sectional study comparing rapid decisions based on PubMed and Epistemonikos searches with evidence-based recommendations developed with the GRADE approach. BMJ Open. 2017 Aug 7;7(8):e016113. doi: 10.1136/bmjopen-2017-016113. PMID: 28790039; PMCID: PMC5629721.

背景：臨床医にとって，最新のエビデンスを用いて臨床判断を行うことは，依然として困難な課題である．臨床医の日々の疑問に答えるための推奨事項を提供する信頼できる臨床実践ガイドラインが少ないことから、臨床判断支援システム（clinical decision support systems: 疑問の特定と回答を支援するシステム）が魅力的な選択肢として浮上してきた。しかし，このようなシステムで得られる推奨の信頼性については不明である。

目的：タイムリーなレコメンデーションを提供する質問応答システムの信頼性を評価する。

デザイン：クロスセクショナルスタディ。

方法：入院患者管理に関連する100の臨床質問に対して，2つの迅速回答法で提供された回答を「ゴールドスタンダード」勧告と比較した。1つはPubMed、もう1つはEpistemonikosデータベースを利用したものである。ゴールドスタンダード」は、信頼できるエビデンスに基づく公表された推奨、または入手できない場合は、GRADE（Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation）アプローチに従って6人の臨床医からなるパネルが地元で作成した推奨と定義した。迅速な戦略によって提供されたレコメンデーションは、誤解を招く可能性のあるものと妥当なものに分類された。また、検索やエビデンスサマリーツールの適切な導入により、誤解を招く可能性のある推奨が回避できたか否かを判断した。

結果：両方の迅速な手法により、100の質問すべてに回答することができた。得られた200のレコメンデーションのうち、6.5％（95％CI 3％～9.9％）が誤解を招く可能性があり、93.5％（95％CI 90％～96.9％）が妥当と分類された。誤解を招く可能性のある推奨13件のうち6件は、Epistemonikosマトリックスツールの適切な使用や所見の要約表の作成によって回避できた可能性がある。また、評価した迅速回答法の間に有意差は認められなかった。

結論：GRADEの手法に基づいた質問応答サービスは、実施可能であることが証明され、特定されたほとんどの質問に対して適切なガイダンスを提供することができた。我々のアプローチは、資源を管理し、患者ケアの方針を決定する関係者が、効率的かつ実現可能な方法で、エビデンスに基づく意思決定を改善するのに役立つと思われる。

まさしく欲しかった研究！すごい！と思ったところ、EBM界隈ではかの有名な、カナダのマクマスター大学 Gordon Guyatt教授 の研究グループからの報告でした。

すでに2017年に横断研究していたとは、さすが。

情報検索フレームワーク

この研究で、当時の手本となるような情報検索フレームワークが提案されています。これはぜひ参考にしたいと思います。

詳細は論文（Figure 2）をご参照ください。以下の順に検索となっています。

• 診療ガイドラインで信頼できる推奨があるか？

• PubMed Clinical Queries とEpistemonikosからシステマティックレビューが１つ以上あるか？

• PubMed Clinical Queriesでランダム化比較試験が１つ以上あるか？

• 結果の要約表を作成する

• これらの検索結果をもとに推奨を定義する

インフォメーショニスト

この研究で活躍した情報検索担当者（インフォメーショニスト）は臨床医でした。

エビデンスに基づく意思決定の訓練を受けた3名の臨床医（インフォメーショニスト）は、3つの異なる戦略に従って、特定された質問すべてに回答することを試みた。情報提供者は、臨床図書館員とは異なり、単なる情報収集ではなく、臨床疫学的手法の訓練を受けており、質問に関連する臨床的専門知識を持っているため、研究結果の文脈に沿った解釈が可能である。各質問は、コンピュータで事前に作成された乱数表から無作為化され、各情報提供者は以下に定義する3つの戦略のいずれかに割り振られた。以下では、質問事項の特定プロセスと質問事項への対応策について説明する。

このインフォメーショニストとは、どのような資格や資質をもっている人なのか、情報が少なくなかなかヒットしませんでした。

日本の報告には記載がありましたので、ご紹介します。

デトレフセン エレン・ゲイ, 酒井 由紀子, インフォメーショニストあるいはISIC (Information Specialist in Context): 新しい医学図書館員のひとつのモデル, 医学図書館, 2007, 54 巻, 1 号, p. 14-19, 公開日 2011/09/21, Online ISSN 1884-5622, Print ISSN 0445-2429

1. MLAにおけるインフォメーショニスト ISIC(アイシック)
MLAは2002年の招待会議でまとめられた行動指針を受け, インフォメーショニストの定義, 評価や普及, 教育方法のありかたを検討するためのタスクフォースを組織した。このタスクフォースの名称からは, インフォメーショニストに替えて lnformation Specialist in Context, ISIC（インコンテクストの情報専門職）がMLAでは用いられている。タスクフ ォースではISICに必要な要件として, 以下の条件を満たす人物であるこ とをまず確認した。

• 医療, 実験研究, 公衆衛生その他のヘルスケアや健康研究分野の知識がある

• 研究方法, 文献の批判的吟味や情報検索についての訓練を受けている

• ヘルスケア分野の知識を持 っている

• 文献検索および評価の経験が ある

• エビデンスや情報検索支援を提供するヘルスケアチームの一員である

他に、このような資料もありました。

文献レビューにより明らかになったヘルスサイエンス・ライブラリアンの新しい活動と役割とは？（記事紹介） | カレントアウェアネス・ポータル

Cooper ID, Crum JA. New activities and changing roles of health sciences librarians: a systematic review, 1990-2012. J Med Libr Assoc. 2013 Oct;101(4):268-77. doi: 10.3163/1536-5050.101.4.008. PMID: 24163598; PMCID: PMC3794682.

Rahimi A, Taheri A, Adibi P. The clinical informationist as a new member of clinical team. J Res Med Sci. 2020 Aug 31;25:83. doi: 10.4103/jrms.JRMS_578_20. PMID: 33088320; PMCID: PMC7554447.

Hashemian M, Zare-Farashbandi F, Yamani N, Rahimi A, Adibi P. A core competency model for clinical informationists. J Med Libr Assoc. 2021 Jan 1;109(1):33-43. doi: 10.5195/jmla.2021.1065. PMID: 33424462; PMCID: PMC7772977.

イランでの取り組みが進んでいるようです。Clinical informationist（CI）が医療チームの一員として機能し、浸透してきていることが伺えます。

日本国内の取り組みはまだみえてきません。リサーチをつづけます。

Clinical informationist（CI）を育成し、医療チームに組み込んでいきたい。

具体的な方策を考えてみます。

小さな医療 準備室（Discord）は、このプロジェクト実現を模索しています。
協力していただける方、興味のある方はDiscordへどうぞ。