これまで認知症のリスク要因として難聴が挙げられていますが、ほとんどの研究は横断研究であり因果関係については明確になっていません。さらに、補聴器の発症予防効果や治療効果についても、まだ十分な検討がなされていません。
2024年1月、南デンマークに住む50歳以上の地域住民を対象にしたコホート研究が発表されました。
参加者: 南デンマーク地域に住む50歳以上の住民573,088人
介入: なし(観察研究)
比較: 難聴の有無、補聴器の使用の有無
アウトカム: 認知症とアルツハイマー病の発症
研究デザイン: コホート研究
結果:
この論文におけるコホート研究の観察期間は、2003年1月から2017年12月までの約15年間。平均的なフォローアップ期間は8.6年(標準偏差4.3年)。
認知症のケースは23,023件。
難聴がある人は、難聴がない人に比べて認知症のリスクが高く、調整されたハザード比(HR)は1.07(95%信頼区間[CI], 1.04-1.11)。
重度の聴覚損失は認知症リスクをより高めることが確認されました。具体的には、聴覚が比較的良好な方の耳での聴覚損失がある場合、認知症のリスクが平均的なリスクに比べて1.20倍(95%信頼区間: 1.09-1.32)高くなることが示されています。一方、聴覚が最も悪い方の耳での聴覚損失がある場合でも、認知症リスクは1.13倍(95%信頼区間: 1.06-1.20)に上昇することが観察されました。
補聴器を使用していない難聴者の場合、認知症のリスクは使用している難聴者に比べて高いことが確認されました。具体的には、補聴器を使用していない難聴者の認知症リスクは基準値に対して1.20倍(95%信頼区間: 1.13-1.27)となり、一方で補聴器を使用している難聴者ではリスクが1.06倍(95%信頼区間: 1.01-1.10)にとどまります。
この研究では、南デンマークに住む50歳以上の住民を対象に、難聴と認知症のリスクの関連性について調査されています。難聴者の中でも、補聴器を使用している群と使用していない群で認知症のリスクに差があることが明らかになりました。
補聴器の使用が認知症の発症や進行を防ぐか遅らせる可能性があることを示唆していますが、この治療効果については、介入研究などさらなる高品質な知見が必要です。
Cantuaria ML, Pedersen ER, Waldorff FB, Wermuth L, Pedersen KM, Poulsen AH, Raaschou-Nielsen O, Sørensen M, Schmidt JH. Hearing Loss, Hearing Aid Use, and Risk of Dementia in Older Adults. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2024 Jan 4:e233509. doi: 10.1001/jamaoto.2023.3509. Epub ahead of print. PMID: 38175662; PMCID: PMC10767640.
※情報収集・要約作成・画像生成にAIを活用しています。