前立腺特異抗原(PSA)による前立腺がん検診には意味があるのか? 欧州の21年間追跡した研究(de Vos, 2023)の結果がこのたび発表されました。
この研究の背景は以下のとおりです。
1990年代初頭、前立腺特異抗原(PSA)による前立腺がん検診の意義を明らかにするためにEuropean Randomised Prostate Cancer Screening Study(ERSPC)が始まりました。
16年間の追跡調査では、検診によって前立腺がん死亡は20%少なくなることが示唆されましたが、過剰診断と過剰治療のリスクが高いことから論争が続いています。
検診の目的は、前立腺がん死亡の予防だけでなく、前立腺がん転移を予防して負担を減らすことでもあります。12年間の追跡調査では、検診によって前立腺がん転移は30%少なくなることが示されましたが、その効果は主に診断時に確認されるものでしたが、追跡調査中の効果は低迷しました。
そこで今回は検診の長期的な意義を評価するため、ERSPC(ロッテルダムセクション)の追跡調査を追加で行うこととしました。
ERSPCに参加した男性のうち、PSA検診を受けた人は、受けなかった人に比べて前立腺がん死亡は少なくなったのかを検討した、ランダム化比較試験の追跡調査です。
前立腺がん転移については、副次評価項目として検討されています。
1993年から2000年にかけて割り付けられた55~74歳の男性42,376人が対象。検診群と対照群に無作為に割り付けられています。
追跡期間中央値21年後、前立腺がん死亡の相対危険は0.73 (95%信頼区間 0.61, 0.88)とPSA検診で27%少なくなっていました。前立腺がん死亡を1人予防するための検診必要数は246人、診断必要数は14人となります。
前立腺がん転移の相対危険は0.67 (95%信頼区間 0.58, 0.78)とPSA検診で33%少なくなっていました。前立腺がん転移を1人予防するための検診必要数は121人、診断必要数は7人となります。
結果を作図してまとめました。
検診開始年齢55~74歳の全体の解析では、前立腺がん死亡の相対危険は0.83 (95%信頼区間 0.71, 0.97)とPSA検診で17%少なくなっていました。前立腺がん死亡を1人予防するための検診必要数は355人、診断必要数は19人となります。
検診開始年齢が70歳以上の場合、前立腺がん死亡の相対危険は1.18 (95%信頼区間 0.87, 1.62)とPSA検診で18%多くなり、検診による効果は消失しました。
これらの結果から著者らは、70歳未満でのPSA検診の有益性と前立腺がん転移の予防のため繰り返し検診することの意義を改めて確認できた、とした上で、70~74歳での検診開始は支持しないことについても言及されています。
21年間の追跡によると、PSA検診で前立腺がん死亡は27%少なくなっていました。これは、246人検診すると1人の前立腺がん死亡を予防できる効果となります。また、前立腺がん転移も33%少なくなっていました。70歳以上での検診では前立腺がん死亡がむしろ多くなるため、推奨しません。
de Vos II, Meertens A, Hogenhout R, Remmers S, Roobol MJ; ERSPC Rotterdam Study Group. A Detailed Evaluation of the Effect of Prostate-specific Antigen-based Screening on Morbidity and Mortality of Prostate Cancer: 21-year Follow-up Results of the Rotterdam Section of the European Randomised Study of Screening for Prostate Cancer. Eur Urol. 2023 Oct;84(4):426-434. doi: 10.1016/j.eururo.2023.03.016. Epub 2023 Apr 5. PMID: 37029074.
Schröder FH, Hugosson J, Roobol MJ, Tammela TL, Ciatto S, Nelen V, Kwiatkowski M, Lujan M, Lilja H, Zappa M, Denis LJ, Recker F, Berenguer A, Määttänen L, Bangma CH, Aus G, Villers A, Rebillard X, van der Kwast T, Blijenberg BG, Moss SM, de Koning HJ, Auvinen A; ERSPC Investigators. Screening and prostate-cancer mortality in a randomized European study. N Engl J Med. 2009 Mar 26;360(13):1320-8. doi: 10.1056/NEJMoa0810084. Epub 2009 Mar 18. PMID: 19297566.
Hugosson J, Roobol MJ, Månsson M, Tammela TLJ, Zappa M, Nelen V, Kwiatkowski M, Lujan M, Carlsson SV, Talala KM, Lilja H, Denis LJ, Recker F, Paez A, Puliti D, Villers A, Rebillard X, Kilpeläinen TP, Stenman UH, Godtman RA, Stinesen Kollberg K, Moss SM, Kujala P, Taari K, Huber A, van der Kwast T, Heijnsdijk EA, Bangma C, De Koning HJ, Schröder FH, Auvinen A; ERSPC investigators. A 16-yr Follow-up of the European Randomized study of Screening for Prostate Cancer. Eur Urol. 2019 Jul;76(1):43-51. doi: 10.1016/j.eururo.2019.02.009. Epub 2019 Feb 26. PMID: 30824296; PMCID: PMC7513694.
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