MUSIC3から日本初の音楽DAOへ

1. 我々がMUSIC3に向かう背景(HIP LAND MUSIC/FRIENDSHIP. 山崎和人)

 HIP LAND MUSICは1988年に設立以降、音楽プロダクションとしてBUMP OF CHICKEN、サカナクション、KANA-BOON、ゴンチチなどの日本の音楽シーンのメインストリームで活躍するアーティストや、The fin.、LITEなど日本のみならずワールドワイドで活動するアーティストを手掛けてきました。そして2010年代に入ると世界的にCDの売上が低下し、日本でも2015年 Apple Music、2016年 Spotifyのサービス開始と共に音楽市場がCDなどのパッケージ商品からストリーミングを中心としたサブスクリプションサービスへと変わり始めました。

 デジタルというフォーマットを軸に考えると、デジタルには国境がなく、距離や時間の制約もなくリアルタイムに聴きたい音楽にリーチすることが可能となり、日本のみで数百万回再生されることが難しい楽曲でも、グローバル市場全体で考えるとそれが可能となりました。HIP LAND MUSICはデジタルを軸にアーティストが中心となったレーベルの新しい形を模索し、2019年5月にデジタルディストリビューションとPRが一体となったレーベルサービスFRIENDSHIP.をスタートしました。

 FRIENDSHIP.はアーティスト、DJ、ライブハウスのブッキングマネージャー、ライター、アパレルショップのオーナーなどカルチャーの最前線で活躍する14名のキュレーターが、FRIENDSHIP.の公式サイトにSubmitされた配信希望の音源をフィルタリングし、彼らが責任を持って世界に届けたいと判断した楽曲を、39の音楽ストア/サービス・187の国と地域にデジタルディストリビュートし、音楽プラットフォームやプレイリスト、音楽メディアなどへプロモーションを行うサービスです。またアーティストのニーズにより、メディアに向けた個別プロモーションや楽曲の出版管理、海外ライブのブッキング、マグッズの製造サポート、音源パッケージ商品の製造や流通のサポートといった各種のオプションが用意され、アーティストはそれらを必要に応じて利用できるようになっており、このようにデジタル・ディストリビューションの先に、強力なマネジメント機能がバックグラウンドで稼働していることは、HIP LAND MUSICによるサービスならではの特徴となり、従来のレーベルの形を超えた新しいコミュニティとしての役割を果たしています。

 しかし一方では、デジタルにより開かれたと思われたグローバル化も、アーティストのSNS発信やファンとのダイレクトなコミュニケーション、メディアへのアプローチなど日本の音楽コミュニティを広げる上で言語の問題が障壁となっております。またストリーミングでの再生単価はフィジカルに比べてアーティストが得られる利益が低くなり、デジタル主体の音楽活動だけではサスティナブルなアーティストキャリアを築きにくく、現在のライブ活動が制限されるコロナ禍において大きな課題も抱えております。その課題を解決する為にも、国外の良質なインフルエンサーやキュレーターをFRIENDSHIP.に巻き込み、日本の音楽をグローバルへ広げるコミュニティをより強化していく必要があります。

2. MUSIC3とは何か(ParadeAll株式会社 エンターテック・コンサルタント 鈴木貴歩)

 MUSIC3とは音楽のエコシステムを、新しいトレンドである『Web3』と掛け合わせてアップデートしていくビジョンです。Web3はブロックチェーンを活用することで、よりサスティナブルでオープンな社会の構築を目指す流れです。個人がデータの主権を持つことから、自己主権型Webと称されます。 エンターテック=エンタテイメントxテクノロジーの変遷を分析すると、その時代の最新テクノロジーを活用して、『表現』と『ビジネス』を拡張したアーティストがWeb2で様々な可能性を開花させたのがYouTube、Spotify、そしてTikTok。民主化したことで世界から新たな才能が産まれ、ブレイクしている。一方で新たな歪みがでているので、もう一度「アーティストの表現とビジネス」をどう拡張できるか?という観点で、ブロックチェーン、クリプト、NFT、DAO等を活用していくのが重要です。 下の表にまとめましたが、グローバルではWeb2での音楽プラットフォームや役割をWeb3に置き換えたプロダクトがどんどん出てきています。私の友人も含めてWeb3プロジェクトを立ち上げたり参画する若手業界人が多いです。他国と同様デジタル化した日本の音楽エコシステムにもMusic3が価値を提供できることは間違いないですし、今後必須となるグローバル展開には日本の立ち位置からはより重要な位置を占めると考えます。 こうした本質的なビジョンが無い「ディスラプト」的な言説も多くなっていますが、本プロジェクトはそこを追いません。アーティストのキャリアを築く上ではWeb2も重要な役割を占めているので、そこを含めた総合的な取り組みになっていきます。 だからこそこのチームでやる必然性があり、単にWeb3をやってみました的なプロジェクトには無い大きな可能性があると考えます。

世界の音楽サービスのMUSIC2⇨3の比較表
世界の音楽サービスのMUSIC2⇨3の比較表

3. FRIENDSHIP. DAOの立ち上げ(HIP LAND MUSIC 代表取締役 野村達矢)

 2022年 HIP LAND MUSICはParadeALL社そしてFracton Ventures社とともに新時代のグローバル音楽視聴エコシステムになり得る音楽コミュニティを構築すべく「FRIENDSHIP.DAO」を始動します。

「FRIENDSHIP.DAO」は、すでにデジタルストリーミング時代に対応しキュレーションミュージックアグリゲーターとしてその特異な存在が評価を得ている弊社の「FRIENDSHIP.」をよりその機能と特徴を際立たせたものとして、WEB3の自己主権型特性を取り入れアーティストドリブンで、さらにそれを支持するキュレーターやリスナーとWEB3上での相互支援的コミュニティーを構築して新たな音楽エンタテイメントのエコシステムを構築していくものです。長らくこの音楽業界でアーティストマネージメント業務においての確たる評価を得てきたHIP LAND MUSICの実績と経験を活かしながらこの取り組みに臨むことも大きなアドバンテージでもあります。

MUSIC✕WEB3=「MUSIC3」

を標榜し、WEB3時代におけるクリエイティブにおいてグローバルでサスティナブルな新たな収益構造を提案、構築していきます。 音楽を愛するアーティストの皆さん、リスナーの皆さん、音楽を広めようとするキュレーターの皆さんの期待に応えていきます。 今後の展開にどうぞご期待下さい。

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