寒さもようやく和らぎ、少しずつ過ごしやすい季節となってきましたが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
今回の投稿では、前職のトリドールでの採用体験について書きました。ただし、新卒採用や通常の中途採用ではなく、コメント欄も非常に盛り上がった(汗)このNewPicksの記事の裏側について、過去を振り返ってみたいと思います。
なお、この投稿において“元戦コン”とは、文字通り「戦略コンサルティングファーム出身者」ではなく、以下のような人材を指す比喩表現とします。
最初に、なぜ“元戦コン”を採用したのか、その背景と理由を説明します。
“元戦コン”を採用した理由を説明するには、当時のトリドールの状況を振り返る必要があります。2011年にハワイのホノルルに丸亀製麵の海外1号店を出店し、その後も、順調に出店する国・地域を拡大。さらに、海外の飲食ブランドの買収・出資なども進めていました。
まさにトリドールの海外事業の立ち上げ期という段階で、当時はまだ海外事業の準備室だけで、海外事業の業務の一部を経営企画室が受け持っていました。また、海外の飲食ブランドの買収・出資なども経営企画室が主導していました。しかしながら、経営企画室も私を含め3-4名しかおらず、事業計画の策定、予実管理、IRなど従来の業務を行いながら、海外、M&Aといった新たな業務もこなすという日々でした。
急成長する事業に対してリソースが足りないので、もちろん人材の募集はかけていましたが、なかなか求めるスキルや経験を持つ人は来ません。それでも何とか経営企画室で3名は採用しましたが、そこからは1年くらい採用できず・・・。どうしてもリソースが足りない場合は、外部委託の方にも手伝ってもらい、何とかプロジェクトを回していました。
補足:当時、海外進出している日本の外食企業はありましたが、海外M&Aまで実施している企業は少なく、外食経験者の転職市場だけでは、求めるスキルや経験を持つ人材がほとんど見つかりませんでした。
その時に、紹介されて出会ったのが、プロコミットの代表取締役社長の清水さんです。
清水さんから、かつてソフトバンク、ユニクロ、ミスミといった企業が、高度な専門的スキルを持つ優秀層を積極的に外部から採用し、急成長を遂げた話を伺いました。清水さんから当時言われたのは、「そのような採用は、薄紙を1枚1枚積み重ねる作業です。1枚の紙は非常に薄いですが、続ければ確実に積み上がり、事業の成長に貢献します。」ということでした。
もちろん現状のリソース不足をなんとかしないといけない、ということもありましたが、トリドールもソフトバンク、ユニクロ、ミスミといった成長企業になるため、清水さんの言葉を信じてスタートしたのが、“元戦コン”の採用です。
ここからは“元戦コン”を採用するために実際に実施した具体的な手法・戦術について語ります。
当時、“元戦コン”を積極的に採用していた事業会社が2社ありました。1社はRIZAP、もう1社はノーリツ鋼機。その2社を採用競合と定めて、トリドールがどう差別化できるか考えました。ノーリツ鋼機の主力はコンシューマー向け事業ではなかったので、比較的自社との違いは明確でした。一方で、RIZAPはコンシューマー向けサービス、かつ、M&Aも積極的に実施していたので、候補者へアピールするポイントが、かなり被っていました。しかし、RIZAPは海外展開をしていなかったので、その点を違いとして強調して、「コンシューマー向けサービスを運営する事業会社に興味があって、日本発のグローバル展開にワクワクしてくれるような“元戦コン”層」を戦略ターゲットと定めました。
“元戦コン”層にとって、外食企業は、そもそも転職の候補先として思い浮かばない、仮に思い浮かんでも、外食の経験がないので応募しにくい、どういう人がいて、どんな仕事をするかイメージがわかない・・・etc.といった課題がありそうでした。一方で、そのような層は、必ずしも金銭的な報酬だけでなく、ミッションへの共感、自らが成長できる環境、手触り感のある仕事などを求める方も多いので、伝わるメッセージを考えて、しっかりコミュニケーションすれば、十分採用できる可能性はありました。
そこで、今では採用ピッチ資料とかエントランスブックと呼ばれる会社のビジョンや戦略などを説明する資料を作成しました。また、採用サイトも、既存のサイトとは別に作成して、数は少ないですが、私も含めてプロフェッショナルファーム出身者がいることや、メンバーがどんな仕事をしているかがわかるインタビュー記事などを掲載しました。
採用コンテンツを揃えたうえで、“元戦コン”層が見るようなメディア(例:NewsPicks、FastGrowなど)への露出を増やしました。自分自身はもちろん、あまりメディア露出されない業界の有名人の方々にも協力いただいて、コラボ記事なども企画しました(YCPの石田さん、ありがとうございました!)。
それまでの採用活動はすべて人事部が主導していましたが、“元戦コン”の採用に限定して、エージェントとのやり取りから募集、面接まで自分たちにやらせてもらえるようにしました。“元戦コン”にどうすれば刺さるか?のニュアンスの伝え方は、やはりプロフェッショナルファーム出身者でないと難しいからです。
さらにエージェントの担当者の方々に時間をいただき、“採用ピッチ資料”や採用サイトの内容を詳しく説明しました。まずはエージェントの担当者の方々に「トリドールって、面白い会社かも」と思ってもらうことに注力し、自分たちの代わりに候補者に自社の魅力を語ってもらえるようにしました。また、募集要項から余程外れていなければ、候補者の方との初回面談は確約にしていました。エージェントの担当者からすると、紹介すれば必ず会ってもらえるという点がハードルを下げて、より多くの候補者を紹介いただけたように感じます(その分、面談数が多くなって、めちゃめちゃ大変でしたが・・・)。
あとは応募から採用までのファネルを管理する、面談での評価基準を設け、一貫した採用要件に基づいて判断する、面談の結果通知は、面談後すぐにやる・・・etc.といった基本動作は徹底していました。
補足:当時、ダイレクトリクルーティングも使っていて、採用実績も数人ありましたが、メインの採用チャネルはエージェントからの紹介でした。
実は、最後まで苦労したのが人事制度です。これまでに記載した取り組みにより、候補者の認知を形成し、トリドールに興味・関心を持ってもらえるレベルには比較的初期に到達できました。ところが、なかなかクロージング(採用)ができなかったのです。
冒頭で“元戦コン”層は、必ずしも金銭的な報酬だけが動機付けではないと書きました。それは正しくて、年収を20-30%下げてでも入社したい、という方は思ったよりも多くいらっしゃいました。しかしながら、年収を下げて入社した後、自分のパフォーマンスがどう評価され、給与に反映されて、昇給・昇格が決まっていくのか?というキャリアプランを示すことできませんでした。
従来の人事制度は、日本企業としては一般的な制度で、昇給や昇格なども比較的節度のあるものでした。しかし、それでは“元戦コン”層に刺さらないため、“元戦コン”用の等級、評価、報酬制度を新たに作成しました。これだけで1つの投稿が書けてしまうくらいのボリュームなので、ここでは詳細の説明を省きますが(汗)、新たな人事制度を導入できたおかげで、数多くの優秀な人材の採用が実現できました。
ここまで書いてきた取り組みはもちろん大切なのですが、“元戦コン”の採用にあたり、一番重要なのは、会社のトップである粟田社長の後押しでした。外食企業に長く勤める方々からすると、“元戦コン”たちは「宇宙人」です。それでも、粟田社長は異文化が入り込むを恐れずに、“元戦コン”採用を進める意思決定を下し、候補者の面談も快く受けてくれて、さらにメディアへの露出も協力してくれました。
トリドールでの“元戦コン”は軌道に乗り、戦略コンサルティングファーム、総合商社、大手企業の経営企画、会計士・・・etc.から、数多くの優秀な人材を採用することができました。本当に手放しで褒めるほど優秀な方々に参画してもらえたので、もし彼らがおらず自分一人だったら、グローバル展開やM&Aを成功させることはできなかったでしょう。
私は2020年にトリドールの取締役を退任し、今の職場であるakippaにジョインしましたが、もちろん私が採用した何人かは引き続きトリドールやグループ会社に残り、会社の成長をけん引してくれています。さらに嬉しいことに、私と同様に、スタートアップへ挑戦したメンバーも複数人います。
以上でトリドールでの採用体験に関する投稿は終わりますが、ただいまakippaでは、“元戦コン”ではなく“エンジニア”の採用を絶賛強化中です!採用サイトも新しくなったので、ぜひご覧いただければ幸いです。
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4月から新年度という方も多いかもしれませんが、年度末でお忙しい中、くれぐれも体調を崩されませんようにご留意くださいませ。それでは、またお会いできるのを楽しみにしております。