An Encouragement of Invention

Innovation/Inventionは今日ではビジネスバズワードになっていて、なんとなく自分を凄そうに見せたり、視座を高そうに見せるにはうってつけの単語になっています。

私は”Innovation”や”Invention”の意味や境界が曖昧になり、広義に渡ってしまうことを危険視しています。それは真のInnovation/Inventionを阻害し、文化の妨げになります。(それが今の日本のAnti Innovation Cultureをつくった原因だとさえ感じます)

同年代(僕の場合は10~20代前半)で世界に挑戦している人とコミュニケーションを取るとき、度々ここの定義に暗黙的な相互理解があるような感覚があります。

それはおそらくジェネレーションと経験から来る暗黙知だと思っています。普段はここに安心感を覚えると同時に、これが交流のフィルタリングの手段になっています。つまりInvention/Innovationの前提条件が合っている人とは話が合い、そうでない人とは話が合わないといったことが起こります。

ここに差があることにもったいなさを感じます。僕はこの暗黙知を言語化するまで誤った道を辿っていました。僕以外にもやりたいこととやっていることが合っていない人は多くいます。やりたいことを言語化することが、世界で戦う一つの条件だと実感しています。

Inventionとは何か

僕は、Inventionを定義するのにInnovationとImitationの2つと区別するのがいいと考えています。それぞれ「組織として全体に価値創造する」に共通した行動だからです。

(なぜここにImitationを引き合いに出したのかというと、ここにHarvard Univ.の「Innovative Imitation」というブログがあります)

まずはケンブリッジ辞書の定義。

Invention … something that has never been made before, or the process of creating something that has never been made before

Innovation … a new idea or method, or the use of new ideas and methods

Imitation … a copy

また、ここにあるいくつかの参考記事を見てみましょう。

上記より、僕なりのまとめを表として記します。

事例は分かりやすくクリプトプロジェクトに限定していますが、知識と感覚をもとにカテゴライズしているため見方によっては異なるかもしれません。

それぞれの違いをより明確にするために、特徴の整理をします。

  • 価値創造の順序はInvention → Innovation → Imitationとなる

  • Innovationにも段階が存在する(Inventive/Disruptive)

  • ImitationはInnovationに競争力と健全化をもたらし常識として安定させる役割を持つ

Inventionを起こすには

1. Invention Trendを見つける

起こすべきInventionは時代によって異なります。

それはときには哲学であり、ときには産業であり、ときには数学であり、物理学であり、工学であります。

いまの時代に一番起こりうるInventionが何かを探すことが重要です。

例として「Internet」「Energy」「Space」が挙げられます。それぞれ未だ未発展の分野であり、年々進化を遂げています。

トレンドを探す一つの方法として研究トレンドを追うことがあります。過去1~2年に学会や論文へのapplyが多い分野は、一つのトレンドと言えるでしょう。

2. Inventionに最適な土地を選択する

Inventionはカルチャーです。環境が9割だと考えています。

哲学は古代ギリシャで生まれました。物理学は古代ギリシャから中世ヨーロッパにおいて哲学の派生として生まれ、理論として展開されていきました。

電磁気学を例に見てみましょう。

ファラデーが電磁現象を発見し、ガウスはそれをもとに電荷作用を実験し、リーマンはそれを引き継いで重力的に説明するポアソン方程式を生み出し、トムソンはそれをもとに力学的理論展開をし、マクスウェルはファラデーやポアソンの理論をもとにマクスウェル方程式を生み出しました。それぞれ、師弟関係や大学の同郷であったことが知られています。当時の電磁気学のホットスポットはイギリスのケンブリッジ大学やオックスフォード大学にありました。間違いなくそこには「電磁気学のカルチャー」があった。

また論文の構成を見てみても「引用文献」と「リサーチトピック」があります。

このことから、Inventionとは連続的な事象であり、ホットスポットが存在すると考察できます。

クリプトを見ても、アメリカ・リスボン・ベルリンとホットスポットがいくつか存在することが分かります。

別の側面を見ると「そもそもInventに適していない土地」も存在します。

例えば日本を見てみましょう。日本のVCの文化は事業会社から始まり、SFと比べてFounder経験者, 博士, Developerが圧倒的に少ないです。また年間出資金額もSFとは一つ桁が違うくらいの小ささです。明らかにInventへ出資する体制がないと言えるでしょう。

さらに、日本のIT企業文化に「SIer」というものがあります。日本では受託が8割を占め、グローバルとは真逆です。これはdeveloperは主役ではないことを意味します。つまりdeveloperは育ちにくいので、InternetのInventには不向きです。

そして日本のマーケットはグローバルと比べてガラパゴス化しています。これはInventを日本でしても日本がホットスポットになり得ると言い切れないことを意味します。

このように土地によってはAnti Invention Cultureを保有しています。

Cultureというものは他のCultureや歴史と結びついているという特徴があります。日本でいうと島国で地震が多いという特性、武士文化、太平洋戦争で敗戦したという歴史などが関係しています。

自分がinventorになりたいならば、Inventionの流れを掴むこととホットスポットに足を踏み入れることが一番です。また住む土地を選択する際には、少なからずこのような地雷を避けることからスタートしましょう。

3. Inventionのための正攻法を見つける

先程の電磁気学の例をもういちど見てみましょう。

経歴を見てみると

  • ファラデー: イギリス生まれ, 王立研究所で研究

  • トムソン: イギリス生まれ, ケンブリッジ大学とマンチェスター大学で研究

  • マクスウェル: イギリス生まれ, マリシャルカレッジ, ケンブリッジ大学で研究

このように、ファラデー・トムソン・マクスウェルの3人は出自が似ています(他の2人はドイツ出身で共通しています)。

これは、今日のインターネットでも同じことが言えます。Stanford/UW/UCBのCS学位を経てGoogle/Microsoft出身のスタートアップ経営者が多くいます。

これはインターネットというものが生まれたのがStanford/UCLAの研究室であるがゆえ、そこにInvention/Innovationが集中していると考えられます。

そこには

  • 物理学でInventしらいならケンブリッジ大学でノーベル物理学賞受賞教授のもとで研究をする

  • インターネットでInventしたいならGAFAで最先端の研究開発をする

のような踏むべきステップが存在します。

Inventorになりたいなら、早い段階でInnovatorの経歴を再現することが最も再現性の高い方法だと考えます。

(もちろん、中には稀にそれを無視する怪物も生まれます。しかし怪物も、生まれるべくして生まれます。)

4. 自己超越する

Inventionを起こすにはそのためのマインドセットが必要です。Inventして世界を変えたいならばならば、自分の魂を世界に結びつける必要があります。

Inventionのゴールは「人類を前に進めること」であり、そのためには世界を客観的に視て実行を最適化する必要があります。そこに「有名になりたい」「大金持ちになりたい」といった自我は介在しないからです。

持論ですが、サラリーマン・個人事業・スモールビジネス・Imitation・Innovation・Inventionのどれを取るかはいわば「欲求」と「自我」のステップと関係しています。Inventする人は、皆明らかに自己超越しています。

ここに苦を感じる人はInventに向いていません。10億円でスモールビジネスをExitしたいと考えている人にInventすることはできません。Inventに解決すべき課題はないし金にならないからです。

逆にPL/BSに忠実になれるのはそれで素晴らしいマインドであり、その方が向いているならそちらに進むべきです。Inventに向いている人もまたスモールビジネスに向いていないし、Invent/Innovate/Imitateはそれぞれが重要で価値のある行動です。

ただし、Inventが一番金を「生み」ます。InternetのマーケットサイズはInternetを発明した発明家たちの成果でもあります。

さいごに

いろいろな人と話していて「この人は10億円でExitするのが目的なんだな」「この人は安定的な暮らしをするのが目的なんだな」「この人は本気で世界を変えたいんだな」と、人の自己実現欲求と行動を構造化する法則があることに気付きました。

そこに気付くまでは、自分が相手の「欲求の段階」を理解した段階で会話にフィルタをかけていたことに気付きました。(10億円でExitすることが目的の人には、それに合わせた話をするといった)

しかし、この結びつきと構造を言語化したら、それぞれが相互に連続していることに気付きました。どのような人にももっと自分の思想を伝え、自分のInventionをInnovationしてImitationしてくれる人を募り、全体としてエコシステムをつくっていかなければ自分のInventには価値がなくなると思うようになりました。

クリプトファウンダーの多くがどんな人にも優しく別け隔てなく接しているのは、単純に人として見ていると同時に、すべての欲求が生態系にとって重要であることを理解しているのだと思います。

やはり壁をつくるのは自分自身だなということにも気付き反省しました。

2022年は偉大な先輩方にそういった多くのマインドを学ばせてもらい、とても感謝しています。

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