医療ブロックチェーンはこれだけでいい

こんにちは、shumonです。日本の医療ブロックチェーン会社で働きつつ、ミライの医療をつくるMedicalDAOを運営したりしています。このブログでは、web3領域で日々実験し得た1次情報を発信していきます。

医療ブロックチェーンは難しくない

この記事を読んでほしい人

web3って面白いですよね。だけど、流れが早い。1週間とかでトレンド変わったり、3秒でNFTプロジェクトが完売したりします。ただでさえweb3の流れに追いつけないのに、ブロックチェーンという意味不明な単語まで登場してしまいました。そして、医療ブロックチェーンなるものも出てきましたね。ナニそれって感じです。

この記事を読んで達成できること

基本的に自分はラクしたい人間です。本質部分を押さえ他に応用するスタイルです。特にweb3領域は流れが早いのでおすすめです。この記事では、あえて難しいブロックチェーンの技術側面は置いて置きます。「何に使われているのか?」や「どんなことができるのか?」という事例から考えます。達成できることは以下です。

①医療ブロックチェーンを5つのポイントのみで理解
②医療に限らず、ブロックチェーン絡みの話題についていける

医療ブロックチェーンの論文を50本ほど読みましたが、全ての事例はたった5つのグループに分類することができます。つまり、この5グループさえ押さえれば、ほとんどの話題についていけるようになります。今回は、この5つのグループについてざっくり解説していきます。ざっくりわかりやすさ重視😌詳しく聞きたい方はMedicalDAO shumonの部屋で。

医療ブロックチェーンは5グループだけ

基本的に項目1-3で医療ブロックチェーンの概要はつかめます。4,5は読み飛ばしでもOK\ 以下がブロックチェーンの5グループです。わかりやすく図解で解説します😌

医療ブロックチェーン5領域
医療ブロックチェーン5領域

1.患者登録系

医療ブロックチェーンの8割が患者登録系です。ポイントは以下です。

  • 今まで個人情報は中央集権による管理だった(国・病院)

  • ブロックチェーン技術で個人情報を個人が管理するようになった

つまり真の意味で個人情報は個人のモノのなるわけです。例えば、カルテです。カルテは病院にあり、患者は見ることさえできませんでした。ブロックチェーンカルテならば、自分の服薬歴や受診歴も把握できますし、どの医師にどこまでの情報を見せるかもコントロールできます。

ブロックチェーンカルテ
ブロックチェーンカルテ

他にも医療行為への同意確認や医療ツーリズム、薬剤の投与量の記録等も患者登録のブロックチェーンで説明できます。別記事で紹介します(未公開)

<参考>PHR(Personal Health Record)についても理解すると良いです。PHRとは個人の医療記録(受診歴、服薬歴、生活データ、介護歴等)を個人が管理します。そして、医療機関や薬局などがこの個人の医療記録にアクセスできる仕組みです。ブロックチェーンによる医療情報管理との違いは別記事で解説します(未公開)

PHR個人視点
PHR個人視点
PHR病院視点
PHR病院視点

2.臨床試験系

臨床試験というのは、より優れた医薬品や治療法を開発するために、「新しい薬や治療法が本当に有効であるのか」、「安全性に問題ないか」などを健康な人や患者さんに協力していただいて調べる試験です。ここには莫大なコストがかかっています。原因はデータのサイロ化です。

サイロとは、つまり縦割り組織のことです。下の図のように、ステークホルダー(登場人物)である製薬会社や国、病院、薬局がいます。それぞれの中央集権的なデータベース(台帳)でデータを管理しているイメージを持つとわかりやすい😌これがデータのサイロ化です。扱うデータは被験者の情報です。

サイロ
サイロ

臨床試験において、データのサイロ化は何がいけないのでしょうか?ポイントは以下です。

  • データ管理 : ステークホルダーが別々のデータベースで管理

  • データアクセス : ステークホルダー同士の情報交換が難しい

  • 監査証跡(不正防止) : 臨床試験の結果の正しさを証明する / 調べる(薬の効果とかを誇張してないか?等)

上記の3つを1つの臨床試験ごとにやっていては時間もお金もかかってしまいます。\ そこでブロックチェーンを用いてサイロ化を解消するのです。つまり、横のつながりをもつ組織群を作ります。以下の図がわかりやすい😌

ブロックチェーンによるデータ管理
ブロックチェーンによるデータ管理

臨床試験において、データのサイロ化が解消されました!先ほどの3ポイントで見てみましょう。

  • データ管理 : ステークホルダーが1つのデータベースで管理

  • データアクセス : ステークホルダー同士の情報交換がそもそもなく、アクセス可能

  • 監査証跡(不正防止) : 臨床試験の結果の正しさを証明する / 調べることがカンタンに

「結果の正しさを証明できる」のはどうやるの???と考えている方は鋭いです。ここにはブロックチェーンの技術作面を知る必要があり、別記事で解説していきます(未公開)

ちなみに、ブロックチェーン技術を用いる手法と標準的な手法を比べた研究もあります。

Blockchain technology significantly reduces total mean monitoring visit time and cost versus standard trial management (475 to 7 min; P = 0.001; €722 to €10; P = 0.001 per participant/visit, respectively) 参考文献

詳しい話は省略しますが、時間面で475分→7分,722ユーロ→10ユーロと、ブロックチェーンによる臨床試験にはコストを大きく減らす可能性もありますね。

他にも臨床試験の倫理審査もブロックチェーンで表現される可能性があります(別記事)

3.サプライチェーン

サプライチェーンはモノを原材料から作って消費者に届くまでの物流をイメージしてください。今回は医薬品としましょう。下の図です。扱うデータは医薬品個々の情報です。

医薬品サプライチェーン
医薬品サプライチェーン

今回も、サイロ化を解消したいですね!以下の図です。

ブロックチェーンによる医薬品サプライチェーン
ブロックチェーンによる医薬品サプライチェーン

サプライチェーンにおいても、データのサイロ化が解消されました!先ほどの3ポイントとで見てみましょう。

  • データ管理 : ステークホルダーが1つのデータベースで管理

  • データアクセス : ステークホルダー同士の情報交換がそもそもなく、アクセス可能

  • 不正防止 : 偽薬や中抜きなど、ステークホルダーを信頼しなくてもシステムでOK

4.IoMT(Internet of Medical Things)

ここからは少し難易度上がるので読み飛ばしてもOKです。

IoMTとはInternet of Medical Thingsの略で、医療機器とヘルスケアのITシステムをオンラインのコンピューターネットワークを通じてつなぐという概念です。一般的には医療機器にWi-FiやBluetoothを備え、医療機器⇄インターネット⇄医療機器 といった繋がりを作るイメージです。背景の1つに、ビックデータの収集があります。

難しいので、IoMTとブロックチェーンの例を紹介します。COVID-19の治療用に開発された重症治療機器の例(参考文献) 扱うデータは医療機器の位置や使用情報です。以下です😌

  • ネットワークに接続された機器の現在地と使用履歴の追跡

  • 独立した病院間の機器の移動の記録と報告

  • 登録されたすべての機器の現在の位置と状態のリアルタイムでの照会

医療機器をブロックチェーンで管理
医療機器をブロックチェーンで管理

例えば、「A病院からB病院に医療機器が移動中(追跡) / 移動した(記録)を各病院が知ること(照会)できる」ということをブロックチェーンで管理するわけです。

将来的に遠隔医療,AI,ブロックチェーンを複合するようになる医療機器も出てくるでしょう。私はIoMTが今後アツい分野とみています😌

Over the past decade, there have been many innovations in new payment and care delivery models and technology, from telemedicine to artificial intelligence (AI) to blockchain. These innovations, however, must be used in tandem to drive real change.(参考文献

5.資格確認系

目の前の医師が本物の医師か、どうやって確かめますか?そして、自分は本物の医師だとどうやって証明すればいいでしょう?ここでは既存システムがどうなっているか簡単に紹介します😌

<既存システム医師側>\ 医師は、医師である証明に費やすコストが大きい(新規で雇用される場合、キャリア証明も必要)、その結果、患者を見る時間が奪われている。(アイデンティティ)

<既存システム患者側>\ 患者はどの医師が、腕の良い医師なのかは判断できない。そうでなくても、本当に信頼できるかわからないSNSやサイトの情報で判断する他ない。(クレデンシャル)

このような資格確認の問題点を解決すべく、自己主権型アイデンディティ(DID)という技術で実現する試みもあります。以下です😌職歴証明やウソのつけない評価といった感じです。

The main research question posed is whether these processes can be re-imagined using digital technologies, specifically Self-Sovereign Identity? A key contribution in the paper is the development of a set of user-led requirements and design principles for identity systems used within healthcare.(参考文献)

もっと医療ブロックチェーンを知りたい?

日本語で医療ブロックチェーンや医療×web3の情報を知りたい方は2つの方法がオススメ😌

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