Web3 市場環境と国内の動向

こんにちは!iscream株式会社 代表の成田です。

初のMirror投稿はやはりCryptoネタじゃないと!ということで、取り組んでいるWeb3に関して、国内の市場環境を中心にまとめてみました。

あくまで私の知識及び観測している範囲内なので、なんかおかしい!、抜け漏れあるよ!という方はぜひ教えてください。

iscream及び私が取り組んでいることやWeb3の概要を知りたいという方はこちらの記事の「背景」部分にまとめているので、ご覧ください。

また、Web3をしっかり学びたいという方は、↓もぜひご活用ください。

目次
1. Web3の市場環境
2. Web3 Stack
3. Web3 国内カオスマップ
4. Web3の最近のビジネスモデル
5. Web3の国内エコシステム構築の取り組み

1. Web3の市場環境

Web3の市場環境
Web3の市場環境

まずは Web3の市場規模について簡単におさらいします。 Web3に関しては日々ブロックチェーンを基盤とした様々なプロダクトが生まれていますが、捕捉可能な既に一定規模になっている市場として、ここでは暗号資産、NFT、DeFiについてまとめました。

国内の比較しうる市場と並べて載せていますが、比較対象としてピタッと合うかは微妙なので、あくまでイメージしやすくするためのものとして見てください。

暗号資産市場

暗号資産のトークンの時価総額は昨年11月に過去最高を更新し上位30銘柄の合計で$2.5tri(約290兆円)となりました。これは、日本国内の株式市場の同じく上位30銘柄合計が250兆円であることを考えると、既に同程度の需要が生み出されていることになります。 (足元では暗号資産市場は昨年のピークから3割ほど落ち込んでいて依然としてボラティリティは高い状態です。)

NFT市場

2021年初に突如として市場が成長し始めたNFTですが、昨年の取引額合計は$24bil(約2.7兆円)となりました。これは、国内のデジタル系B2C EC市場(電子出版、有料動画配信、有料音楽配信、オンラインゲーム等)の2.5兆円と同等の規模となっています。2022年以降も引き続き成長を続け、2022年1月には単月で過去最高の$5bilとなりました。
(NFTとは?という方はこちらをご覧ください。)

DeFi市場

ブロックチェーンを基盤とした分散型金融DeFiの時価総額合計は2021年11月のピーク時で$174bil(約20兆円)となりました。少し無理やりの比較ですが、これは国内の大手銀行三行の時価総額の合算値約18兆円と同等の規模となっていて、足元でも$152bil(約18兆円)の時価総額を維持しています。

国内では2021年の野村総合研究所の調査で暗号資産の保有率は1.7%、NFTに関する調査でも日本人の90%が知らないと回答するなど、Web3に関するサービスの認知度は未だ極めて低く、インターネットでいう1998年頃とよく言われますが、各種調査からもその状況が分かります。
一方で、上記の通りWeb3のグローバルの規模感は国内の比較しうる市場と同等規模まで成長してきているので、最新の情報にキャッチアップしている人としていない人の情報格差がますます拡がってきているなと感じます。

2. Web3 Stack

Web3 Stack
Web3 Stack

Web3のサービス分類は、技術レイヤーで区切ったもの、産業毎に区切ったものなど様々ありますが、ここでは技術レイヤーとWeb3の特徴であるトークンに焦点を当てて簡素化して分類してみました。 (Coinbaseの分類が個人的には分かりやすいなと思っていて参考にしています。)

Protocol

インターネットでいうTCP/IP、TLS/SSL、HTTP、SMTPのような基盤となるのがプロトコルレイヤーで、各種ブロックチェーンが該当します。Web2までとの大きな違いは、ブロックチェーン自体がトークン発行することできちんと価値を捕捉し、その上に乗る各種レイヤーがこのトークンを利用することで、さらにブロックチェーンの価値が高まるというFat Protocolという現象が起きていることです。暗号資産の時価総額ランキングでも上位にいるのは軒並みこのプロトコルレイヤーとなっています。

Infrastructure

Protocol(ブロックチェーン)の上には、Web3サービスを使う際に共通で必要となるインフラレイヤーがあります。暗号資産やNFTを保管・利用するためのウォレットやIDや認証サービス、秘密鍵管理のようなセキュリティ、ライブラリなどの開発ツール、分散ストレージなど様々なものがここに該当します。

Application

NFTゲームやDeFiサービスなど幅広い各種アプリケーションがこのレイヤーに含まれます。ブロックチェーンの上に乗り、インフラレイヤーのプロダクトを共通して使うもので、ユーザーからするとこのアプリケーションが直接意識するタッチポイントになります。またWeb3の特徴として、各アプリケーションがガバナンストークンやユーティリティトークンのようなFT(Fungible Token)やコンテンツと紐つけたNFT(Non-fungible Token)を発行し、初期ユーザーを獲得したりユーザーエンゲージメントを高めたりしていることも挙げられます。

Secondary Market

アプリケーションレイヤーで発行された各種トークンを2次売買するためのレイヤーになります。これもアプリケーションの一つとも言えますが、Web3の特徴であるトークンの観点から見ると流通の過程で別の価値を提供していることと、市場としてかなり大きくなってきているので、レイヤーを分けました。暗号資産の取引所(CEXやDEX)やNFTのマーケットプレイスなどがここに該当します。

Ancillary Service

本来であればレイヤー分けはSecondary Marketまでで良いかなと思ったのですが、この分類に該当しない様々なWeb3に関するサービスが出てきているので、まとめてAncillary Service(付随サービス)として分類してみました。ここでは日々様々なものが生まれていて全て列挙するのは難しいのですが、NFT LendingやNFT発行・ 運営のAPI提供、GameFiにおけるスカラーシップのようなNFT運用、保有トークンに焦点を当てたWeb3マーケティング、 DAO管理のツール、Web3の分析サービスなど様々あります。 (最近気になっているものは後段「4. Web3の最近のビジネスモデル」で触れています。)

Web3では日々、新しいプロダクトが数十億円の資金調達をしたとか大きなIPとコラボしたとかいうニュースで溢れていてますが、一方で、Web2の人からするとビジネスモデルが理解しにくかったり、実際にマネタイズに関してはトークンに依拠するものが中心で、まだ多様性がそれほどないのも現状です。(Web3のビジネスモデルの理解にはa16zのFutureCrypto Startup School等の各種コンテンツが役立ちます。日本語訳されたものも多くあり、こちらも分かりやすいです。)

実際に、一時期盛り上がっていたものでも数ヶ月すると全く聞かなくなるといったことも珍しくなく、グローバルでは数千億円のCryptoファンドを組成するVCが主導する過熱感のあるマーケットに対し警鐘を鳴らす向きもあり、Web3に詳しくない企業や個人からするとプロダクト選定や投資の判断が難しい時期でもあると思います。

Web3はその特徴からWeb2とはmoat(競争優位性)が異なると言われており、個人的にはDavid PhelpsさんのLiquidity、Community、Composabilityがしっくりきていてプロダクトを考える際の基準にしています。

3. Web3 国内カオスマップ

Web3 国内カオスマップ
Web3 国内カオスマップ

先ほどのWeb3 Stackに合わせて国内のプロダクトを分類してみました。日本発で海外に出ているプロダクトも多いことから日本発海外事業者、海外初日本に担当者がいるプロダクトも含めました。

作っていて感じたのは、Applicationは多くある一方で、ProtocolやInfrastractureのレイヤーが圧倒的に少ないなと。(苦し紛れに有名チェーンでも積極的に国内活動されているプロダクトをスライドに含めています。。) 前述のFat Protocolの理論からもこの領域でのプロダクトがどんどん出てきて欲しいなと個人的には思っています。

また、Secondary Marketも中央集権型の暗号資産取引所(CEX)やNFTマーケットプレイスは多い一方で、分散型の取引所(DEX)は極めて少なく、これは国内の税制やカストディ規制などの各種規制の課題により実質的にプロダクトを立ち上げられないということがあるのかなと思っています。

各種規制に関しては、今年1月に自⺠党のデジタル社会推進本部にNFT制作検討PTが発足するなど、Web3を成⻑戦略にしていく議論が活発化していて、GW明け以降の政府の骨太方針に含まれていくか、また年末の税制改正の議題に登ってくるかが、今後の国内市場の盛り上がりに大きく影響するものと言われていて、とても注目しています。
(規制の状況は今月頭に公開されたJDAの提言資料が分かりやすいです。)

最後にAncillary Serviceの領域ですが、様々なプロダクトが出てきていますが、NFT関連(発行サービスやレンディング)のものが多い印象を持っています。個人的にはNFTに関しては発行した後にいかに保有者に機能性を提供するかや、コミュニティを盛り上げられるかがポイントだと思っているので、そのためのツールに注目していて国内でも多くの事業者が出てくると良いなと思っています。また、Web3では価値や情報を個人が自身のウォレットに保有していくことになるので、情報を事業者側が保有するWeb2とはマーケティングの形が変わってくると考えており、そこにアプローチするプロダクトにも注目しています。

4. Web3の最近のビジネスモデル

Web3の最近のビジネスモデル
Web3の最近のビジネスモデル

個人的には、基盤となるようなプロダクトが好きなので、前述のWeb3 Stackの中では、InfrastructureやAncillaryの中の他のレイヤーのプロダクトに活用されるようなものに注目しています。最近気になっているのは以下のようなもので、詳細はスライドをご覧ください。これらにご興味のある方、また、これ以外にも面白いビジネスモデルをご存知の方はぜひディスカッションしたいです。

  • NFT x DeFi

  • NFT aggregator

  • Community management tool

  • Gateway, Notification

  • Builder

  • NFT rental

5. Web3の国内エコシステム構築の取り組み

Web3の国内エコシステム構築の取り組み
Web3の国内エコシステム構築の取り組み

最後に、私が最近Web3関連で取り組んでいることについて紹介させてください。

iscreamではここまでで記載したようなWeb3の注目領域でのプロダクト開発の検討を進めるとともに、株主である大手商社と連携してWeb3の国内エコシステム作りにトライしています。

同社が運営するオープンイノベーションラボ兼コワーキングスペースMIRAI LAB PALETTEはWeb3関連のスタートアップやクリエイター、インフルエンサー、メディア、大企業にも多数利用してもらっていて、今年に入り利用者の繋がりから「NFT部」(部活の部です!)が発足しています。部長の雨弓さんのおかげでどんどん勢いのあるプロジェクト・人が増え盛り上がりをみせていて、スライドにはPALETTEを利用して頂いているプロジェクトの一例を載せていますが、それ以外にも多くの関係者が登録してくれています。(ここには載せられないような凄い人達もいらっしゃいます。)

大手町駅直結の好立地(Place)に多くの優秀な人・プロジェクト(Talent)が集まり、最近ではWeb3に投資するVC(Capital)も利用してくれていて、まさにスタートアップエコシステムができてきているなと感じています。

イメージは私自身が2016年頃にサマーインターンしていたVCが居を構えていたシンガポールのBlock71で、そこでは入居しているスタートアップ、VC、アクセラレーターが有機的に絡み合い新しい価値を創造するエコシステムになっていました。私個人としてもプロダクト開発のための仲間集めをするとともに、株主企業のWeb3投資のソーシングの役割も担っているので、PALETTEのエコシステムを最大限にレバレッジしています。

前述の通り、Web3はまだまだ黎明期で投機マネーも多く入っていることから今後も市場の波はあると思います。一方で、その前線でマーケットを作っている人たちはピュアにWeb3の世界観に共感し世の中に価値を提供することを目指している人が多く、私も同じ考えを持つ個人として日々、ゼロサムではなくプラスサムの世界で刺激を受けています。

ますます盛り上がっていくであろうマーケットの中で、これからも様々な人と交流していきたいと思っているので、興味を持って頂ける方はぜひご連絡ください!

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