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開催者も読み間違うWeb3への熱狂——テックに加え、メディアやクリエイティブ層が集まった「SXSW2022」リポート
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April 21st, 2022

音楽祭からスタートし、今や事業アイデアや最新テクノロジーの一大見本市ともなっている、世界最大のカンファレンス&フェスティバル・SXSW(サウスバイサウスウェスト)。3年ぶりにオフラインで実施された同イベントに、スマートニュース株式会社の藤高晃右が参加。重点的に参加したWeb3関連のイベントを中心に、イベント全体を概観する。(編集部)

コロナがアメリカで猛威をふるい始めた2020年の3月に苦渋の決断でキャンセルされて以来なんと3年ぶりに、オフラインで開催にこぎつけたSXSWだが、来場者数は例年よりもかなり少なかったようだ。とはいえ、オミクロンの波が去って日常生活が戻り始めていることも手伝い、人が密集するパーティーやコンサートなども普通に開催され、オースティンでの久々の大規模イベントに街は活気につつまれていた。

筆者には、ここ数年、AI以降大きなテックトレンドがなかったように感じられていたところに、昨今のWeb3、ブロックチェーン、NFT、メタバースなどの大きな動きに興味を持っていたこともあり、SXSWは完全にその領域にフォーカスしてセッションに参加した。5日間フルに足を運び、なんと下記の18ものWeb3関連のセッションを聞くことができた。これら以外にもスケジュールが重なっていたりして参加できなかったWeb3関連ものはあと10以上はあっただろう。

※以下、日本語訳は編集部による

Web3: Decentralization of Ownership, AI, & Economy (Web3:所有権、AI、経済の分散化)

Entrepreneurship in Web3: Leading Through Innovation (Web3における起業家精神:イノベーションを通じたリーダーシップとは)

Blockchain Philanthropy: Discovering Emerging Filmmakers(ブロックチェーン・フィランソロピー:新進気鋭のフィルムメーカーを発掘する)

The Future for NFTs Beyond Art and Collectibles (アート・コレクティブルを超えた、NFTの未来)

Black in Web3: Now and the Future (Web3における黒人:今と未来)

NFTs and the Metaverse, Art’s Digital Age (NFTとメタバース、アートのデジタル時代)

Bitcoin DeFi - The Latest Developments(ビットコインDeFi 最新の発展)

Amy Webb Launches 2022 Emerging Tech Trend Report (Amy Webbのテックトレンドレポート2022)

Unlocking the Value in Digital Assets(デジタルアセットの価値を解き明かす)

Blockchain & NFTs: Environmental & Social Impact(ブロックチェーンとNFT:環境とソーシャルへのインパクト)

Move Over NFTs. Here Come the DAOs(NFTの先へ。DAOの到来)

Next-Gen Entertainment: The Metaverse and Music(次世代のエンターテインメント:メタバースと音楽)

Fashion’s New Frontier: The Metaverse(ファッションの新しいフロンティア:メタバース)

Community Archiving on the Decentralized Web(分散化されたウェブにおける、コミュニティ保存)

Web3 Tools for Journalists(ジャーナリストのためのWeb3ツール)

The NFT renaissance is just beginning for creators(NFTルネッサンスはクリエーターにとってまだこれから)

NFT 101 for Musicians: More Engagement, More Revenue(ミュージシャンのためのNFT入門:もっとエンゲージメントを、もっと収益を)

Decarbonizing Blockchain Technology(ブロックチェーンテクノロジーの脱炭素化)

見誤られたWeb3セッションの「規模感」

SXSW全体でのおおまかな印象としてはWeb3以外には宇宙、メディア、音楽・映画などのエンタメ、そして「DEI」といわれるDiversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)をテーマにしたセッションが多く、Web3ではない従来のいわゆるテック関連トピックはとても少なく感じた。

興味深かったのは、Web3関連のセッションの大半に中規模から小さめの部屋があてがわれていたこともあり、多くのセッションで開始前に長蛇の列ができ、満員で入れない人が続出していたこと。

Web3関連のセッションに入るため、長蛇の列をつくる参加者
Web3関連のセッションに入るため、長蛇の列をつくる参加者

逆に他のトピックではそういうことはあまり起きておらず、Web3関連のセッション数の多さからみてもメイントピックの一つだったとはいえ、主催者側がWeb3に集まる注目の大きさを読み違えていたのではないか。Web2.0にとってSXSWがとても重要なカンファレンスだったことを考えても象徴的で、従来のテック業界とWeb3業界の間でのちょっとした断絶のようなものがこういう形で出ているのではと感じた。

これら数多くのWeb3セッションに参加してみての大きな驚きとしては、とくにかく、自分がこれまでニュースなどで追っていたWeb3/NFTの対象(DeFi:Decentralized Financeなどの金融と、CryptoPunks、Bored Ape Yacht Club、Beepleといったアート・アバターなど)よりもずっと幅広いクリエイティブ業界、具体的には音楽、映画、ゲーム、ファッション、スポーツで様々なことが起こっており、その新規参入者によるパネルディスカッションが数多く設定されていたことだ。

そして、これはSXSW特有なのかもしれないが、そのセッションの来場者達も、いわゆるテック系カンファレンスとはやや趣が違って、テック系半分、ミュージシャン、プロデューサー、デザイナーなどクリエイティブ系の人々が半分というようにとても多様な顔ぶれであった。

とにかく、それら若手のクリエイター達の熱狂がとても大きいことにも驚かされた。音楽、映画、ファッションなど、みなWeb2.0に完全に乗り遅れて、果実を取り逃してきたという気持ちが強く、ついにWeb3で自分たちに活躍の場がめぐってきた、そういうことがいくつものセッションで聞かれた。

ちなみに、今年のSXSWの冠スポンサーの一つがBlockchain Creative Labs。大手メディア企業Foxの傘下で、公式パネルセッションも開催できる特設スペースをつくり、巨大ディスプレイを派手に設置し、軽食、飲み物、お酒を振る舞い、連日多くの来場者であふれていた。

そこで音楽NFT、スポーツNFT、そしてテレビアニメのキャラのNFTなどが会場でもらえるような仕組みでとにかく数多くの人にNFTを触ってもらい、NFTを普及し、そこでのブランド認知を上げ、いち早く業界内での地位確保をしようとしているように感じられた。大企業がここまで素早く若いディレクターを登用し、かっこ悪い形でなくムーブメントのど真ん中に切り込める姿はさすがだ。

NFTドロップの最新ベストプラクティス

各セッションの内容を俯瞰すると、おおまかには、各業界のNFT動向の現状や、今後の展望など、さらに具体的なサービスの紹介も多かった。

Entrepreneurship in Web3: Leading Through Innovationの様子。パネルが全員女性で、オーディエンスも通常のテック系セッションにない男女比だった
Entrepreneurship in Web3: Leading Through Innovationの様子。パネルが全員女性で、オーディエンスも通常のテック系セッションにない男女比だった

フランシス・コッポラの息子で映画監督・プロデューサーであるロマン・コッポラも名を連ねる独自トークンを使った映画レビュー・若手作品発掘プラットフォームの紹介や、イーロン・マスクの弟キンボール・マスクが運営してきたNPOを完全にDAO(Decentralized Autonomous Organization:スマートコントラクトなどブロックチェーンの技術で自律的に運営される分散型組織)移行してコントロールを委譲してきている話なども。中でもどうやってNFTビジネスを実践しているかが多く聞かれた。

あらっぽくまとめると、最近の典型的なのは、以下のような流れだ。

  1. あるNFTコレクションの企画を形にするところから、Discordでスーパーファンとよばれる熱狂的なファンとコミュニケーションを取り彼らをまずしっかり巻き込む
  2. その後、彼らがTwitterをはじめとするソーシャルメディアでそのNFTコレクションの広告塔になり「ドロップ」とよばれる発売日に向けて「ハイプ(熱狂)」を盛り上げる
  3. 発売を成功させ、発売後のそのコミュニティーをベースに次の活動につなげていく

ちょうどSXSW期間中にミュージシャンのSnoop DoggがDeath Row MixというEdition1000の音楽NFTを一つ0.1ETH(約3万円)で「ドロップ」したそうだが、その例も紹介されていた。彼の知名度からしたらこの0.1ETHというのは低くおさえられているそうで、ソーシャルメディア上でハイプを作り上げてくれる上記スーパーファンはそのNFTをドロップ時に直接購入するためのホワイトリストに入れてもらう。

Snoop Dogg側からすれば、ドロップでの売上は約3000万円で彼にとっては大きな金額ではない。しかし、従来のマーケティング活動を行うかわりに、プライマリーは低い価格設定におさえ、スーパーファンが明らかに転売で利益をあげられるように予め金銭的インセンティブをつくり、ファンらのソーシャルメディアでの宣伝活動を強く喚起する。そしてSnoop Dogg自らは今後未来永劫発生していくセカンダリーの転売時に発生するクリエイターへの収益配分をメインの収入源にしていくのであろうという分析がなされていた。これは従来の音楽ビジネスとは発想が大きく違い、また、これまでの音楽レーベルがコントロールするブラックボックスになったライセンス契約とは違い、ブロックチェーン上でクリエイターなどへの収益配分が誰からも見える形になっていることが、逆にレーベルのビジネスモデルに大きな影響を与えるだろうとも指摘されていた。

もう一つ面白い指摘としては、NFTコレクションを企画し、どのブロックチェーンを使うか決める際に、もちろんある程度エディションを絞った比較的高額なNFTであればガス代の高いイーサリアムで、企業ブースで多数に配るNFTやゲームのアイテムのようなものであれば安いチェーンであるポリゴンやソラナを使うというのは一般的だが、もう一つマーケティング的な視点として、そのNFTコレクションのターゲットやテイストが、いわゆる暗号資産取引で成功し大きな暗号資産を保有する層とあっているならイーサリアムを使うべきだというのも興味深かった。

Web3を導入したメディア運営法

他のクリエイティブ業界とは対照的に、メディアや執筆者といったクリエイターはWeb3の文脈ではSXSWではあまり目立たなかったが、「Web3 Tools for Journalists」というセッションで知ったWater & Musicという最新の音楽ビジネスとテックに焦点を絞った新興メディアがとても面白いので、最後に紹介したい。

Cherie Huという音楽ジャーナリストがニュースレター配信で始めたメディアだが、Web3の要素を少しづつ取り入れながら発展しており、注目を浴びている。現在はいわゆるフリーミアムモデルで、無料で読める記事もあるが、多くの記事は月額20ドルでの購読者しか読めない。面白いのは購読者は有料記事が読めるだけでなく、Water & Musicが運営する会員限定のDiscordにもアクセスできること。そこでは、自己紹介をして、ライターや、他の購読者(多くは音楽やWeb3業界者)とコミュニケーションをとったり、求人掲示板で仕事を見つけたり、人を採用したりすることもできる他、最新の業界ニュースがシェアされていたりもする。

ただ、面白さの肝は新しく書かれる記事のネタ探しをする記者に情報提供したり、新しい記事のアイデアを提案したり、Water & Musicが開催するオンラインミートアップに参加してもう少し具体的に記事作りに参加することまでできること。Water & Musicの記事の特徴として多くがかなり長文で、最新の業界分析がなされていたり、最新の音楽関連Web3のツールやNFTコレクションのリストを簡易データベースのairtableでまとめてそれを記事内の貼り付けで読者がデータにアクセスできたりということがある。つまり、今現在ビジネスをやっている読者が「使える」記事になっているものが多いということ。

そしてそれぞれの記事に通常の執筆者1-2名のクレジットではなく(A) Research project leads、(B) Writers/editors、(C) Core database contributors、(D) Other database contributors、(E) Visualizationというような幅広いクレジットで10人以上が名前を連ねることが多い。また、Streamというプロジェクト名で、数ヶ月かけて5つくらいの最新の音楽Web3のテーマ長文記事を執筆していくスタイルをとっており、それを始める際に100とか30とかのエディションで0.3ETH(約10万円)という価格帯でNFTを発売する。その売上がそのプロジェクトの資金源になり、上記の幅広いクレジットの多くの貢献者に貢献度合いに合わせて資金配分がなされる。

NFT自体はこのメディアの終身購読者メンバーシップとしても使えるし、不要になれば転売もできるもの。当然転売の際にはこのメディアにも収益配分が発生する。Web3どっぷりではなく、Web2.0ベースのサービスに少しずつうまくWeb3要素を導入しているサービスで、そもそもメディアの記事作りの方法や、記事の効用さえ、従来とは大きく違い、書き手と読者という関係性を超え、ずっと流動的な業界コミュニティベースのコンテンツクリエーション共同体になっている。これは、これまでの広告収入メインのオンラインメディアではどうしてもページビューが伸びず厳しかったアートや文学などのニッチメディアや、「ニュース砂漠」と呼ばれる、新聞社がなくなっていく地域での地方、地域新聞の新しいサステイナブルなビジネスモデルになりうるのではと個人的に大きな期待を寄せている。

日々生み出される、新しいベストプラクティス

わかりにくい専門用語や誇張されたバズワード、まだまだ使いにくいUI、イーサリアムなどの高いガス代(NFT売買などにかかる手数料)、そもそも暗号資産を買わなければスタートできない高い初期投資、横行する詐欺など普及までにはまだまだ程遠いWeb3。また日々目にするニュースも一般的には理解不能な超高額での人気NFTの売買や、有名ミュージシャンやセレブによるNFTドロップのサクセスストーリーなど、地に足のつかないような話題が大多数である。また、行く前にはSXSWではもっとテクニカルな話題が多いのかと思いこんでいたが、自分にとってはいい意味で期待が裏切られ、多くのミュージシャン、映像クリエイター、デザイナー、アーティストなどまだまだニッチとはいえ野心にあふれた若いクリエイター達やそのプロデューサー達が熱狂し、日々新しいことを試していることが多くのセッションから伝わってきた。

ほとんど触れることができなかったが、ブロックチェーンとは技術的ルーツが違うメタバースに関するセッションも多く、そこでやはり音楽、ゲーム、ファッションなどがNFTを介して結合する未来を思い描いている。従来の会社のような所属組織を超えて、Discordの様々なチャネルを行き来しながら、新しいプロジェクトが立ち上がり、興味を持った人々が集まり、実行され、収益配分がされていく。これはややユートピア的すぎる絵柄かもしれないが、遠くない未来にそういう世界に住む人が多く出てくるだろうと感じることができるくらいまでには現実が素早く動いている。どのNFTが儲かるかではなく、ブロックチェーンやDAO、Web3そしてNFTを使ってどういう新しいことができるのか、どうコミュニティをアクティベートできるのか、どうビジネスをまわしていけるのかが話し合われ、新しいインセンティブ設計、そして新しい経済圏が日々試されながら、新しいベストプラクティスが生み出されているのが感じられるSXSWだった。

本記事はMedia x Techにて執筆したものです。

著者紹介

藤高 晃右(ふじたか・こうすけ)
スマートニュース株式会社米国メディアオペレーション
1978年大阪生まれ。東京大学経済学部卒業後、ソニーエリクソンにて経営管理を担当。2004年に日本最大のバイリンガルアート情報サイトTokyo Art Beatを共同設立。08年に拠点をニューヨークに移し、NY Art Beatを設立。14年にスマートニュース米国に入社。アートに関するアドバイスやアート媒体への執筆も続けている。

Twitterアカウント:@pincponic

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