こんにちは、pinokeyです。
askyvさんのベリロン考察記事が大変面白かったのですが、他の視点からもベリロンを捉えてみたいと思い、記事を書いてみました。
今回はベリロンは「原始的に経済圏を作る実験をしている」というお話とその課題をお話します。
この記事はaskyvさんが書かれたこちらの記事を所々引用しています。(とても面白い記事なので一読することを強くオススメします!!)
Very Long Animalsとは
顔の長い動物をモチーフにしたNFTコレクション。akimさんが始めた最初のNFTコレクションはジェネシスと呼ばれ、それをもとに100以上の二次創作作品が生まれている。
ポテトとは
ベリロンの運営が発行するポイント。なんらかのコミュニティへの貢献に対して、akimさんをはじめとした運営がポイントを付与する。集めると割引価格でジェネシスNFTを購入できる他、加盟商店でも利用できる。現在はtwitter bot を介して配られ、データベース上で管理されている。
ポテト配りの様子
「ポテトは以下のような2つの特徴を持っていると整理できます。 一つは、ポテトは、ジェネシスNFTを細分化したフラクショナルNFTのような性質を持っていることです。そして、もう一つは、ポテトが、将来発行されるジェネシスNFTを裏付け資産として発行されていることです。」
askyvさんの記事より引用
potatoの信用はジェネシスNFTに裏付けられているというのは、僕も同意するところですが、ベリロンを経済システムと見たときに、ポテトはジェネシスという金本位制に見せかけた管理相場制のトークンだと考えます。
少し貨幣システムの歴史を振り返ります。bitcoin standardなどが詳しいですが、現在の変動相場制の前、世界では金本位制という通貨制度が主流でした。
金本位制とは、ある貨幣を一定量の金の重さと交換することを中央政府が保証する制度です。例えば10円は10gの金と交換できる、というのを保証します。金というのはいつの時代も誰から見ても貴重なので、みんな安心して通貨を使えるようになるわけです。
しかし、金本位制には致命的な欠陥がありました。金の総量が決まっているので、通貨の総量をコントロールできずインフレデフレが起こってしまうのです。
そこで、金との交換を停止して、各国が中央銀行を介して通貨の量をコントロールする管理相場制に移行したのでした。
さて、ベリロンのポテトは確かに将来のジェネシスの一部と交換できます。その意味でジェネシス本位制と言えそうですが、本当にそうでしょうか。
金本位制ではいつでも金と交換できるわけですが、ポテトの場合は、ジェネシスが発行されるときにしかジェネシスと交換することができず、また、ポテトの発行量はジェネシスの量に紐づいておらず、運営が、流通量を管理しています。
その意味で、ポテトというのはジェネシス本位制に見せかけた管理相場制のトークンなのです。
ベリロン運営は、ポテトの価値を上げることで、ポテトを集めるインセンティブを作ったり、あるいはポテトの価値を下げることで、流動性を上げる(他の使い道で使ってもらう)というように、ポテトの価値をコントロールすることで、コミュニティの盛り上がりをうまく設計することもできるようになっています。
また、ポテトの供給量も管理されています。akimさん/運営による配布とその週の配布者による配布でのみしか市場に出回りません。それによりインフレやデフレを抑えることもできます。
一方で、ジェネシスに価値が紐づいているように思えるので、安心して使えるわけです。つまり金本位制と管理相場制のいいところどりをしたような感じです。
ベリロンはもはやただのNFTコレクションではなく、経済システムであるような気がしてきました。
僕はジェネシスの信用は需要と供給で説明できると思います。
ジェネシスは発行数が決まっているので、供給は一定であると考えると、需要がプラス成長を続けていくこと、言い換えるとベリロンを欲しいと思う人が増えていくことこそ、ジェネシスの価値を支えるものであると考えます。また大前提としてベリロンコミュニティが続いていくだろうなと思われていることも重要です。
askyvさんは
「VeryLongAnimalsは、人々にエンタメを提供し、その人生を豊かにしています。そして、ベリロンのコミュニティにいるコントリビューターは、ディズニーランドでいう「キャスト」と「お客様」が混合したような状態になっています。コミュニティにいる人は、一方でお金を払ってでも得たいエンタメを享受しながら、同時に、適切な報酬が支払われるべきクリエイティブな活動を行っています。」
と述べています。
ベリロンの主な活動はtwitter上で行われますが、twitter上でコミュニケーションや創作活動を楽しむことで結果的に、他の人の目に留まり、広めることにつながっています。広める活動のハードルが低いのです。
誰もが楽しみながらクリエイトし、広める文化を作り出したVery Long Animalsあっぱれというほかありません。
かわいいゆるっと
ポテトを配るとはどういうことか
現状ポテトを得る手段は限られ、主に「運営からコミュニティ貢献した人に配られるもの」です。
これは言い換えると、ベリーロングアニマルズというコミュニティが持続するであろうという期待を生むのに貢献してくれた人にポテトを配るということです。
コミュニティが続いていくだろうという期待がなければ、ポテトの価値、ジェネシスの価値を信じることはできないでしょう。これは現実世界でいう政府予算でのインフラ整備、公共事業のような役割を担っているように思います。また、ポテトを市場に流す役割を担っています。とても重要な役割なのです。
それゆえ僕もaskyvさんと同様、運営によるポテトの配布を監視する必要があると考えます。政府の予算の使い方をチェックするのと同義です。
現在はポテトでの自由な取引はできず、通貨システムが成り立っているとは言えないでしょう。これから真にポテトが通貨として使われていくのに必要な条件はなんでしょうか。
貨幣論を書いた岩井克人先生はこう言っています。
「お金がお金となるのは、他の人も受け取ってくれると予想するから、だれもが受け取る、という自己循環論法です。他人が受け取ってくれれば、お金はお金として通用する。それを疑い始めたら、お金として通用しなくなる。日常的にはほとんど意識していないが、根底では、他の人がお金として受け取ってくれると信じていて、その他の人も他の人が受け取ってくれると信じている。深いところで信じ合っている仕組みに支えられているのです。」
お金は他の人が受け取ってくれるという期待に支えられているのです。
現在は運営の定めたルールで、ポテトは獲得手段は限られ、利用方法もジェネシスの購入と加盟商店での購入での利用に限られています。
ですがもし、誰かに「100ポテトあげるから、マックのポテト買ってきてくれん?」と言われたら、現状ジェネシスを買うときに1000ポテト=1ethで交換できるので、喜んで買いに行くように思えます。そのようにポテト払いを受け入れる人が増えれば、やがてポテトが通貨として使われる世界になっていくように思えます!!!!
ポテトを相手が受け取ってくれると皆が期待するようになれば、ジェネシスと交換できない、あるいはジェネシスの価値が下がるというのはもはや問題にならないでしょう。現実世界で金との交換が廃止されてもうまくいっているように、管理相場制が機能していくはずです。
ここまでポテトが通貨になっていくのでは?ということをお話ししましたが、そこにはいくつかまだ考慮されていないところがあるので検討してみます。
現状ポテトの信用は将来のジェネシスに由来していると言っていいでしょう。もしジェネシスが発行し終えてしまったらポテトの信用源は無くなってしまいます。
・ジェネシス発行し終えても、他の新規コレクションと交換できる
あるいは
・交換できなくなる前に、上で議論した、他人が受け取ってくれるはずだという期待を誰もが持っている状況を作る
というのが必要そうです。
ポテト払いを受け入れる人が増えれば、やがてポテトが通貨として使われる世界になっていくと上で述べましたが、実際にはどう進んでいくのでしょう。
以下にいくつか仮説を並べますが、僕は説2、説3が有力だと考えています。
そうすることでコミュニティの外部の人が運営と取引をしたければ市場からポテトを集めないといけなくなり、ポテトに対して市場価値が生まれます。
ただし、いまのジェネシス買うために使えるのみだと、結局、運営が提示した価値に収束します。
CC0でコラボでお金もとらないとなると運営はどうやって生活していくのか疑問は残ります。通貨発行権でしょうか。
生活必需品(衣食住ケータイ通信料)をポテトで買えるようになれば、ポテトを持っていれば生活できることになります。
そうするとポテトはジェネシスと交換できるから使えるというより、上で述べた相手が受け取ってくれるから使えるという状態に移行できるでしょう。そのためには生活必需品をひとつずつ揃えていく必要がありそうです。
現在運営がポテトをマックのポテト券と交換するということをやっていますが、それを誰しもが提供するようになるとポテトが本当に貨幣になっていきそうです。
ビットコインをプリミティブに得る方法はマイニングですが、GPUを用意したり設定をしたりとめんどくさい行為です。それを肩代わりしてもらう代わりにお金を払って市場で買う人がいるのです。ポテトでしか買えないものがあるけど、貢献するのは手間がかかるな、、という人が市場でポテトを買おうとなるとポテトに市場価値がつくと言えそうです。
linepayやpaypayが普及されていったのと同じようにサービス提供者はポテト払いを導入せざるを得なくなります。
四つほど説を書いてみましたが、これからもコミュニティのメンバーあるいは運営があらゆる施策を試していくに違いありません。
ベリロンという営みはもっと複雑で多様ですが、今回は経済システムという観点でざっくり書いてみました。
このように実体のある経済圏を一歩ずつ手作りしていく試みはおそらく他のNFTコレクションもやっていなかったことです。ベリロンの手法はコミュニティを使っていく上で参考になるところが多そうです。
僕はポテト経済圏が生まれ、akimさん含めベリロンに関わる人たちがポテトで生活できる世界が生まれうるのではないかと心躍っております。
youtubeが動画で人を楽しませることで生活できる人を増やしたように、ベリロンというmemeを起点としてfunを生み出すことで回る経済圏を僕はみてみたいです。いやもうできつつあるのかもしれません。
次回はベリロンに足りないパーツと自分のアクションについて書こうかなと思います。
ありがとうございました。
*僕は経済の専門家ではないので、記述の内容は保証できません。指摘等あればぜひお知らせください。
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