Gear プロジェクトについて
January 29th, 2022

始めに

Gearとは、Polkadotエコシステムの新しいレイヤー1スマートコントラクトプラットフォームです。現在開発が進められており、PolkadotとKusamaの両方でパラチェーンになることを目指しています。

同プロジェクトを一言で表すと、以下の紹介文になります。

「Deploy your dApp with Gear in under 5 minutes. (With WASM)」

~自身のDappプロジェクトをWASMを利用して5分で開発できます~

Gearとはなんでしょうか?どのような課題を解決することを目的としてますか?

Gearは高度なWASMベースのスマートコントラクトプラットフォームです。PolkadotとKusamaのパラチェーンを目指しており、レイヤー2スマートコントラクトをホストするための主要ツールとなることを目的としています。Gearを利用することで、開発者は5分以内にdAppを簡単にデプロイできます。Gearプラットフォームにより、開発者はPolkadotとKusamaの両方でdAppを構築し、開発者が莫大な費用と時間をかけずに、それぞれのエコシステムのメリット享受できるようになります。 つまり、本プロジェクトが解決しようとしているものの一つは、「Polkadot / Kusamaエコシステムに簡単にアクセスできない」といった課題です。パラチェーンになるには、資金と開発の両方で多くのリソースが必要です。多くのプロジェクトが限られた数のパラチェーンスロットを獲得するために競合しているため、エントリーコストが非常に高くなってしまっています。それに加えて、パラチェーンとしての展開には非常に時間がかかる可能性があります。

Gearネットワークのメインエンジンは、スマートコントラクトモジュールです。Gearのスマートコントラクトは、Rust、C、C ++などの開発者が選択したプログラミング言語でコンパイルできるWebAssemblyプログラムです(これにより、新しく作成されたプログラムと既存のプログラムの両方を書き直さなくても複数のネットワークで実行できる非常に使い勝手の良いAPIが保証されます)。スマートコントラクトはブロックチェーンの状態に保存されて呼び出され、要求に応じて状態を保持します。その結果、Gearは、ブロックチェーンに不慣れな開発者の参入障壁を低くし、スマートコントラクトの開発を容易にします。 このプロジェクトのスマートコントラクトアーキテクチャは、内部でアクターモデル(非同期処理)を使用し、以下を提供します。

Gear上の構築できるDappsの例について
Gear上の構築できるDappsの例について

WebAssembly(WASM)とは?

前提知識として、足元のブロックチェーン上のプログラミングはEVM(Ethereum Virtual Machine)で作成されていることが多く、良くEVM互換チェーンかどうか(例えば、BSC、AVAX等)と言及されるのはETH上のdAppsが容易に移行できるためEVM互換は重要であるといった考えからです。しかし、EVMは独自の仕様を盛り込みすぎて、実行速度が遅い・柔軟性がない・Solidityなどの独自言語を使って開発せざるをえない等複数の課題が存在します。そういった中で、前述の課題を解決するために足元研究が進められているのがWASMをブロックチェーン開発に持ち込むプロジェクトというわけです。

WebAssemblyは、JavaScript以外のプログラミング言語でアプリケーションをWebページとして実行する方法です。基本的に、WASMはすべての最新のブラウザーで実行される単なる仮想マシンですが、従来はJavaScriptを使用してWebページでコードを実行する必要がありました。しかし、WASMを使用すると、JavaScript以外のプログラミング言語を使用するブラウザーでコードを実行できます。WebAssembly仮想マシン(略してWASM)は、テクノロジーの特殊性により、他のどの仮想マシンよりも高速であることが証明されています。WebAssemblyを使用すると、Gearのスマートコントラクトをマシンコードに直接コンパイルして、ネイティブに近い速度で実行できます。高速化は、トランザクションコストの削減と効率の向上を意味します。すべてのGearプログラムとスマートコントラクトはWebAssemblyプログラムとして実行されます。 このことは、例えば、開発者がアプリケーションをWebに持ち込み、Webブラウザーでアプリのフルセット(WindowsまたはMacでネイティブを実行する場合に通常使用する機能)を使用して完全なパフォーマンスを実現できることを意味します。開発者は、実際にWASMのコードを直接書く必要はありません。その代わり、他の言語で書かれたプログラムのコンパイル対象としてWASMを使用することになります。WASMが解決する主な問題は、ウェブ上でJavaScript以外のプログラミング言語が使えないということです。JavaScriptは素晴らしいプログラミング言語ですが、大規模なアプリケーションで超高速に動作するようには設計されていません。 WebAssemblyには次のような利点があります。

  • WASMは非常に高速で、効率的でポータブルなものです。異なるプラットフォーム間でネイティブに近い速度でコードを実行することができます。
  • 可読性が高く、デバッグが可能です。WebAssemblyは低レベル言語ですが、人間が読めるテキスト形式を持っており、コードを手で書き、見て、デバッグすることができます。
  • 安全なサンドボックス環境で実行されるため非常に安全で、他のWebコードと同様に、ブラウザのセキュリティポリシーやパーミッションレスセキュリティポリシーが適用されます。

WebAssemblyはグローバルな業界技術です。この分野の主要な競合他社(Google,Microsoft等)が共同で設計し、実装しています。WebAssemblyはゲームチェンジャー的な技術と言えるかもしれません。高度に最適化されたコードと非常に小さなバイナリを組み合わせることで、大規模なアプリケーションをウェブ経由で非常に高速かつスムーズに実行できるようになります。この効率性の向上により、WebAssemblyは「WEBの未来」と呼ばれています。

また、スマートコントラクトの操作では、Gearは通信アプローチにアクターモデルを使用しており、設計上、並列化およびシャーダブル化が可能になっています。これにより、非同期プログラミングのための様々な言語コンストラクトを活用することが可能となり、トランザクションの非同期処理を大幅に効率化することができます。これにより、分散型Gearネットワークにおいて、あらゆるプロジェクトのビジネスロジックを支えるdAppsを、非常に高速に実行することが可能になります。

Gearと他DOTエコシステム上のスマコンプロジェクトとの比較

Astarも同様にWASMでのDapps開発をサポートするプロジェクトです。ただし、AstarはWASMのための独自のエンジンを作っておらず、substrate WASMと同じモジュールを使っているのに対し、Gearは独自のアーキテクチャを導入しています(アクターモデルがその一つです)。独自エンジンがあるということは、WASM Good common ParachiansがParity Techにて提供されずとも、Gearがパラチェーンを獲得できればWASMで開発が先行して利用可能ということです。また、Astarは他エコシステム(ETHやCOSMOS等)との連携に重点を置いており、WASMでのDapps作成には重点を置いていません。

Moonbeamと比較すると、WebAssembly VMにより、取引コストの大幅な削減、高速化、柔軟性の向上が図られています。さらに、他のスマートコントラクトプラットフォームとは異なり、Gearはネットワーク内の一般的なバリデータが持つコアの数に応じて拡張することができます。WASMはEVMの10倍の速さです。トランザクションコストも10分の1です。この優位性は、Gearのアーキテクチャではさらに顕著で、約100倍高速と理論上は推定されています。

開発状況やロードマップについて

このプロジェクトは現在、主に開発者やコーディングに情熱を持つ人たちを引き入れることに重点を置いています。ブロックチェーンの分野では、開発者の数がまだ非常に少ないといった現状があります。Gearは、ブロックチェーン開発に精通していない人でも、Rust、C、C++など、すでに世界中で普及している一般的な言語が利用可能であり、スマートコントラクトの作成とデプロイの敷居を低くしています。また同チームは、既存のテンプレートを選択し、いくつかのパラメータを変更するだけで、簡単にアプリケーションを展開できるようにするための様々なアプリケーションのテンプレートやライブラリの開発を進めています。 Gear が完全にデプロイされると、トークン保有者によって完全に管理されることになります。トークンの大半は、コミュニティとインセンティブを受けたチームが保有することになります。Gear にはステーキングの仕組みがあるので、当然ながらノードの運営も奨励されます。つまり、トークンを所有し、ステークすることで、コミュニティがガバナンスを持つことになります。

クラウドローンの具体的なタイミングはまだ決まってません。しかし、チームはシリコンバレーにオフィスを開設し、中国にチームを雇い、現地でコミュニティを育て始めているところです。 また、米国、ロシア、中国、トルコの主要な技術系大学と共同でセミナーを開催し、いくつかのワークショップを行いました。この教育プロジェクトはまだ始まったばかりですが、どんどん大きくなっています。 Gearは、ブロックチェーンのエコシステムの開発や参加に関心を持つ人々を集め、強力なコミュニティを構築することに力を入れています。安定したテストネットの終了後、監査を実施して、KSMネットワークにコードを展開する予定ですが、これは2022年の第1四半期に完了する予定です。Polkadotのオークションに関しては、2022年第3四半期にKSMネットワークでパラチェーンを獲得するまで未定となってます。

開発チームについて

Nikolay Volf(CEO)

2015年からPolkadotの基本技術とSubstrateの主要な開発者の一人です。Parity Technologiesチームの初期メンバーとして、ブロックチェーン領域における複数のプロトコルに携わりました(イーサリアム、ビットコイン、ZCash)。また、Parity Technologies在籍中に、WebAssemblyスマートコントラクトの初の実装を主導し、コア技術や基板フレームワークに数多くの貢献をしています。

シード投資家について

Blockchange Venturesをリード投資家として1,200万ドルの資金を調達しています。

他には、Three Arrows Capital, Lemniscap, Distributed Global, LAO, Mechanism Capital, Bitscale, Spartan Group LLC, HashKey, DI Ventures, Elysium Venture Capital, Signum Capital, Konstantin Lomashuk率いるP2P Economy、Web3 FoundationとParity Technologiesの役員メンバーなどが名を連ねています。

Gavin Wood博士(Polkadot創設者)も参加していることで注目を浴びました。

参考記事:

参考記事:EVM/WASMについて

Subscribe to sora0167
Receive the latest updates directly to your inbox.
Verification
This entry has been permanently stored onchain and signed by its creator.
More from sora0167

Skeleton

Skeleton

Skeleton