年初からにかけて、クリプト界隈外までをも熱狂させたSTEPN。国内ユーザーが世界の半分以上を占めるなど、一時期はタイムラインを埋め尽くすほどの盛り上がりでした。一昔前のAxie Infinityの盛り上がりの再来を見ているようで、良くも悪くも微笑ましかったです。
確か先月、弊社CTOに連れられて行った女装スタジオでのこと。「何の仕事してる人たち?学生?」などの他愛も無い世間話が始まりました。そこでアシスタントからの一言、「そういえば最近歩いて稼ぐやつ始めたんだよね、私はB国の靴を買ったの!S国とB国っていうのがあってね、、」
その言葉に最初は耳を疑った。びっくりしすぎて完全に向こうのペースで話が進んでいく。そして冷静になってから思った、「ここまでSTEPNって浸透しているのか」と。詳しく聞いてみると米国株の投資を以前からやっているそう。あれは楽しいひとときだった。
そんなSTEPNも、いまではユーザー数が右肩下がりであまりTLで見かけないように、、、
本題に戻すとto-Earn系のサービスといつも並べて語られるポンジスキーム。今回はポンジスキームとはなにか、世に存在するto-Earn系のものはポンジスキームなのか、持続可能なモデルを形成可能なのか。などについて既出サービスとともに見ていきましょう。
普通に生活していたらあまり耳馴染みのないのない言葉かもしれませんが、この界隈にいるとよく「ポンジ」と略されて見る機会が多いですよね。
ポンジスキームとは、詐欺師であるCharles Ponzi(チャールズ・ポンジ)氏の名前から来ています。手法として、集めたお金を投資(運用)し、出資者に配当金を配ると謳っておきながら、新規出資者のお金を既存の出資者に回す、いわゆる投資詐欺にあたるものです。
例えば、10万円投資してくれたら運用して毎月1万円配当としてあげるよ、といったもの。実際には運用を行わず、プールされたお金をぐるぐる回して足りなくなったら新規の人から取ってくる。このような高利な投資商品の場合、普通疑う必要があるが国内でも被害に合う事例が多いのが現状。ねずみ講やマルチ商法と混同されやすいがまた異なる詐欺の手法である。
カタカナを使わずに言うと、自転車操業という言葉が適しているような。
で、みなさんが知りたいのはじゃあ世のto-Earnサービスはポンジなのかということでしょう。
ポンジスキームの詳しい説明を見て「ん?」と思った方、センスがいいと思います。なぜなら、STEPNは決してポンジスキームではないからです。しかし、ポンジスキームと共通している点も存在します。
STEPNの場合、運用して配当を渡すと謳っていない上に、その他の保証も一切行っていない。あれはただの稼ぐことのできるゲームにすぎないのだ。
例に上げたSTEPNやAxie Infinityがどうしてもポンジスキームっぽく見えてしまう理由を私の意見を交えながらお話します。
上で述べたようにいくら従来のポンジスキームに該当しないとしても、お金の流れを軸とする構造としてはポンジスキームみを帯びてしまっているからです。STEPNの場合を見てみましょう。
プレイしたい人は靴のNFTを購入する。このお金は構造的に運営サイドにプールされる。
プレイした人は独自トークンGSTが発行され、付与される。
GSTを使用して靴の強化や修繕、売却し他トークン(USDT等)に変換できる。
(3)の部分のゲーム内利用でトークンの放出は軽減されているものの、やはり新規参入者の購入分が必然的に既存のプレイヤーに分配される点から、ポンジっぽさが出てしまうのも仕方がない。
ここからはto-Earn系の報酬トークンはなぜ一方的な価値の下落が起こるのか再確認していきましょう。
まず価値(価格)の決定方法から簡単におさらいです。主に需要と供給のバランスによって市場価格の変動が起こります。例えば、台風などでりんごがあまり取れなかった年は、りんごの価格は高くなりますよね。またりんごが豊作だった年やよく取れる地域の価格は安くなります。
それと同様に、全体の価値(新規参入者)の増加量とミントするトークンの増加量において、トークンのミント速度のほうが早くなった場合は必然的に価値がずっと下がっていきます。
これがほとんどのto-Earnサービスの結末です。
先程は市場が決める価値についてお話しましたが、次は自分たちが決める価値について見てみましょう。
実世界の経済においてお金を払う目的は大きく分けて2つあると考えています。
リアル/デジタル問わずモノやコンテンツを提供するもの、NFTアートはここに含まれるでしょう。スーパーでアボカドを買うとき、その値段に納得して(もしくはその値段以上の価値を感じ)お金とモノ等価で交換している感覚。
経験やサービスの無形のものを提供するもの、例えばマッサージや映画、塾など。NFTの文脈で言うと、NFTを資産や投機的なものとしてではなく所有していることへの優越感や自慢をするために買っている人も多いでしょう。そういう感情に密接な部分。
この2つは価格のボラティリティが小さいので、比較的持続性があると考えるのが一般的です。
しかしto-Earn系のサービスには稼ぐために買うという行為が起こっています。これは一種の投資とも言えます。あのSTEPNの靴をNFTアートの要領で、コレクション目的で買う人は殆どいないでしょう。
よって損益が意識され、損をした特をしたという感情が購入後に追加で発生します。 そうして稼ぐ目的の人ばかりが集まり、奪い合いをし、終りを迎えます。
元々あげた2つの目的には、その価格を納得して購入しているため損得感情は極めて少なくなりますよね。
じゃあどんな価値をサービスは生み出せればいいのか、それはそのサービス自体に価値を生み出すこと。これは次で詳しく説明します。
どうしても抜けないポンジみから抜け出すためには以下の2つが考えられる。
トークン全体の価値の増加量を増やす方法。
サービス自体に価値を感じてもらえるようにする方法。
1つ目について解説すると、新規参入者が多く入ってくる仕組みを作ること。ではなく持続性を考えると、外部からのお金の流入をユーザー以外から増やすことです。
説明のために例えば以下の2つのサービスが存在するとしましょう。
NFTを買ってアプリ内で広告を見ることで、トークンが稼げるサービス。
NFTを買ってYoutubeを見ることでトークンが稼げるサービス。
この2つを見比べたときに、1つ目はNFTの販売売上以外にも広告収入という形で外部からお金の流入があリますが、2つ目はNFTの売上以外に外部からのお金の流入がありません。
具体的に既存のサービスに当てはめられるところで言うと、企業とのタイアップ等で得られる広告収入でしょうか。STEPNもカーボンオフセットの売却を行っていますが、収益の全体から見ると微々たるものです。
よって払い出すインセンティブより、多いお金が運営サイドに入ってくる仕組みがマスト。
次に大題の2つ目について解説します。例えばライザップなどのパーソナルジムにあなたが通っているとします。先程の自分が決めた価値に繋がる部分があるのですが、たとえ10万かかろうと20万かかろうと、痩せるからや筋肉がつくという自分の目標達成のインセンティブが得られています。
そんな仕組みにto-Earnサービスもできたならベストだと考えます。
例えば、STEPNで毎日自分を歩かせるために5万円の靴を買おう!そう決めて始めた人たちは、歩くことによって得られる健康と習慣と言うインセンティブを重視している場合、稼ぐことは二の次になりませんか?おそらく、「あわよくば靴台が返ってきたらラッキー!」的な感じが持続性を優先した現状の最適解。
要するに外からお金を持ってくる仕組みと、ゲームやサービス自体のコンテンツ力。この2つがポンジっぽさから抜け出す鍵になると考えています。
to-Earn系のサービスはゲームやコンテンツが面白くないからお金というわかりやすいインセンティブをつけて人を集めているに過ぎない!所詮ポンジだ!という厳しい言葉がSNSでは散見される中、まだ新しい領域かつみんなが手探りでやっている状態なので、改善しようと取り組んでいる事自体は評価できます。
そんな中、ポンジっぽさをなくすことを目標に動き出した新たなBCGをご存知だろうか。
ある日リサーチがてら、Twitterを何気なく眺めていると面白そうな図が目に飛び込んできました。読んでみると、面白いのですぐに「翻訳したい!」と拙い英語で公式アカウントに連絡したところ、まさかの日本語で快諾してくれました。
おっと、今回はこれ以上書くと長くなりそうなので「Mini mini Dungeon」に関しては今後のMirrorで改めて触れることにしましょう。最後にここまでのことを踏まえ、新規参入者が今後に活かすべきことをまとめました。少しでも参考になると幸いです。
to-Earn系サービスを始めとするブロックチェーンゲームはPlay、Moveの他にもSleepやRunなど今後も増加していくでしょう。しかし人知れず消えているプロジェクトのほうが多いです。
仮に稼ぎたいと思ってこの業界に参入してくるのであれば、まずホワイトペーパー等の公式文書や発表はしっかり読むべきです。実生活で考えてなにかあんまりわからないものに1万も払わないでしょうし、それがお金を増やすことを目的とする投資となるとなおさらです。
クリプト歴が長いんだ!とマウントを取ってくる古参もいますが、自分たちはウェルカムなので「わからないことは聞く」「そんなに美味しい話はない」を胸に刻んでクリプトライフを一緒に楽しみましょう。