目次
はじめに(ブロックチェーンとは)
LayerZeroとは
ブロックチェーンを繋ぐ方法としてのLayerZero
- Valid Delivery
LayerZeroはどのようにして動くのか
LayerZeroで何ができるのか
参考リンク集
**ブロックチェーンは誰でも、取引記録をそのチェーン上で管理したり、共有できる「場」**として各々が独立して存在しており、ブロックチェーン毎に独自の運用方法を採用し、機能している。故に異なる規格に対応するため、ウォレットもチェーン毎に別々のものを使用することがある。
現在、ブロックチェーン同士を繋ぐ統一言語としてのコミュニケーション手段はなく、現状はブリッジなどのサービスを使ってブロックチェーン間のコミュニケーション(やりとり)が可能になっている。
そのブリッジを使う際にも欠点があり、例えば元のチェーンと送り先のチェーンの両方にガス代を払う必要があったり、また自身の資産がブリッジを経由することで(通常ブリッジをする際に資産はロックされる)それが不確実で安全でないプロセスになる可能性がある。
つまりこれは、コスト・安全性・時間の面で課題が残っていると言えよう。そして、この問題点を解決するのに登場するのが、今回のテーマであるLayerZeroである。
Layer Zeroとは、みんなが使えるブロックチェーン共通のコミュニケーション規格(ブロックチェーン同士のやりとりを可能にしたもの)で、チェーン上に存在するアプリケーション間で、ユーザーが単一のトランザクションのみでトークンまたはメッセージを送信できるようにするものである。下記にはその定義と仕組みを述べる。
第三者を信頼する必要がない、どんなチェーンでも対応可能な、互換性の規格・サービスのこと
LayerZero = Trustless Omni-chain Interoperability Protocol
・トラストレス(第三者を信頼する必要がない)
・オムニチェーン(どんなチェーンでも対応できる)
・インターオペラビリティ・プロトコル(互換性の規格・サービス)
注目されているサービスであり、大手VCが名を連ねている
■ 主な出資元:こちら
近年、色んな用途に特化したブロックチェーンが出現したが、(Solana, Avalanche, ICP etc.)それらを繋ぐ完全に安全な仕組みは確立されていなかった。
現状のブロックチェーンを繋ぐ方法として:
(1) CEX(中央集権型取引所)
Binance取引所などのCEXを使い、資金を移動させる方法。問題点としては、その取引所を信頼する必要があることが挙げられる。
(2) DEX(分散型取引所)マルチチェーン/ 例:anyswap、Thorチェーン・Cosmos 等、第3のチェーンを使用する:この場合、そのチェーンで使用されているトークンを使う必要があり、さらにそのチェーンの合意を待つ時間が別途必要になる。そのため処理、時間ともにプロセス上の無駄が発生する
■ チェーン別の一例として:
Polkadot
:マルチチェーン展開が可能で、パラチェーンを通してリレーチェーン(全てを繋ぐチェーン)を経由して他のチェーンとのやり取りが可能。しかしその分追加コストがかかる。→LayerZeroはこの無駄なコストを省き、コミュニケーションに特化した取引が可能
THORチェーン
:
RUNEという独自トークンを使用する必要がり、トランザクションが重い問題点がある
COSMOS
:全てのブロックチェーンと連絡が取れる、フルオンチェーン(Cosmos IBC)が、これらの処理をブロックチェーンの上で行うため(LayerZeroはブロックチェーン外で処理)、早いファイナリティのチェーンしか使用できない(※)、またマイニングチェーンと繋がらないという欠点がある。
※ブロックチェーンはステーキングを採用しているチェーンと、マイニングを採用しているチェーンの2種類がある。
(3) LayerZero
LayerZeroでは、(1)一旦チェーンA上の情報を取り出し、(2)それをLayerZeroが受け取り、独立したRelayerとOracleを使用して各自1回ずつの、合計2回精査した後に、(3)チェーンBに送信する仕組みを採用している(3ステップ)。
LayerZeroに欠かせない3つの要素:
**A. Oracleネットワーク:**例えるなら、窓のない密室で(ブロックチェーン)、外の天気(現実世界の情報)をわかるようにする技術
“Oracle”という名前の由来には「目、千里眼」としての意味があり、色んな情報を見据えるという意味がある。
そもそもブロックチェーンは、当該口座の残高などの限られた情報しかないため、外の情報(今日のETHの値段、今日の天気etc)を安全に確実に仕入れる必要がある
最大手にChainlinkというアメリカの企業があり、LayerZeroはこれを採用している。
B. Relayer:監視役。最終確認をする機関で、送り主の記録を一時的にブロックチェーンの外に保存して、受け取り側のチェーンが最終確認するときに情報と提示する
C. LayerZero Endpoint(LayerZeroと各ブロックチェーンをつなぐために必要)で、スマートコントラクトとして実装されており、モジュール化されているので簡単に導入できる。逆に、これが導入されていないと繋がらない。
これらがLayerZeroの中でどのような働きをするかは後述することとし、では何をもってLayerZeroが安全で有効な送金であると判断するかについては以下の言葉で表される。
LayerZeroが主張する、Valid Deliveryの定義は(何を持って安全というのか判断基準)
・1個のメッセージにつき、それに対応する記録が送り主側のブロックチェーンにある
・送り主の記録が正しかった場合のみ、メッセージが目的のチェーンに送られる
上記の点から、
(1) CEX(中央集権型取引所)を使った場合は、上記2つを満たさず、
(2) DEX(分散型取引所)or マルチチェーンは、上記を満たすが、非効率である
よって、これらを解決する仕組みが必要=LayerZero
■ ケーススタディ:
チェーンA :Ethereum / チェーンB: Polygon
Ethereum(A)にあるNFTを使って、Polygon(B)でゲームがしたい。Ethereum(A)にNFTがあることをPolygon(B)に伝達したい、と仮定する。
■ プロセス:
ユーザーがEthereumチェーン(A)に、該当するNFTがあることをPolygon側(B)に伝えたい
1の情報をバリデーター(ブロックチェーン上に書き込む人)が受け取り、チェーン上に書き込む
バリデーターがネットワーク(LayerZeroのEndpoint)に2で書き込まれた情報を渡す
バリデーターがRelayerに3の情報を送信する
バリデーターがOracleに3の情報を送信する
OracleはEthereumチェーン(A)上の1~3の取引記録を確認
RelayerにEthereumチェーン(A)上の1~3の証拠と取引記録が送信される
6の情報が正しかった場合、Polygon側(B)に5の情報が証拠と共に送られる
8の情報がLayerZeroのEndpointからPolygon側(B)のバリデーターに送られる
OracleからEndpointに送られてきた8の情報をPolygon側(B)に書き込んでいいか(正しいか)どうかRelayerに確認
7で得た情報をもとにRelayerは8が書き込んでいい情報かどうかPolygon側(B)に返事をする
11での情報得て、最終的にPolygon(B)に8の情報が書き込まれる
ユーザーがEthereum上に該当のNFTがあることをPolygon(B)側に伝達し、Polygon側でもそのNFTが使えるようになる
※ OracleとRelayerが結託して両方悪いことをしてしまう場合( 8 & 11 )があるのではないかという論説があり、これがLayerZeroが批判されるポイントでもある
Oracleは、すでに作られたブロックチェーンエクスプローラー(Etherscanなど)からの実際の取引の中身 [ 確定した記録] を見ている(No. 5& 6)。
Relayerは、上記のブロックを見ず、記録を書き込んだ[ バリデーターから直接内容と証拠をもらっている] (No. 4 & 7)。
上記のように、それぞれの異なる視点でOracleとRelayerがダブルチェックしているため、LayerZeroの安全性が確保されていると言える(= Valid Delivery)
Relayer、Oracleは決まった第三者機関がないため、業界最大手のChainlinkでなくても実装可能で、将来的には、RelayerやOracleを分散化することができる。つまりはアプリケーション側が、OracleやRelayerを指定することができ、LayerZeroの課題である共謀問題を後からでも回避することができる。
(1) クロスチェーンの分散型取引所
ブロックチェーンを必要としないブリッジ(例:Stargate finance)
StargateFinanceはコミュニケーション方式で初めて作られたDexで、さまざまなブリッジが今後は作られていく
(2) マルチチェーンイールドアグリゲータ
色んなブロックチェーンをまたいで、最適な年利で運用してくれる仕組み
例)OmniBTC
(3) マルチチェーンレンディング
銀行サービス、ブロックチェーンをまたいだお金の貸し借り
(4) その他
ゲーム、NFTの用途の問い合わせが殺到しており、今後ゲームなどの広がりを見せる可能性が期待されている。
LayerZero WhitePaper:
LayerZero WhitePaper 読書会(仮想戦士ロイさん):
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