突然の報告となってしまいますが、実は2025年2月をもってSARAHを退職しました。
創業前のインターンから始まり、代表取締役として経営するまで、全力で10年やってきたので、振り返りも兼ねてブログを書いてみようと思います。
SARAHは大学のゼミの先輩と一緒に創業しました。
学生時代にアントレプレナーシップについてのゼミに所属しており、ゼミのOBから誘われて学生インターンをしたのが創業前のSARAHでした。
ゼミの先生はもともと日本政策投資銀行のアメリカ支店でシリコンバレーのITブームを間近で見てきた方で、スタートアップについてや、ファイナンスについて教えてもらっていました。
学生時代からいつも「ジョブズならどう考えるか?」「ベゾスならどう考えるか?」を問われ続けていました。
そのようなことを考え続けていたため、創業前のスタートアップでの業務は、勉強してきたことと実務が紐付きとても刺激的でした。
ゼミの先生とは今でも毎週MTGをしており、いまだに同じような問いを投げかけられています。
卒業と同時に、SARAHで働くことを決め、共同創業者となりました。
創業直後に新卒で入社したtoCアプリの会社には非エンジニア職にできることなどほとんど無く、初期は法務局に通い詰めて登記をしたり、投資契約書を作成したりなど、エンジニア業務以外はなんでもやりました。
優秀なPMやデザイナーが入るたびに自分の仕事がどんどん奪われていくのを痛感し、毎日終電まで会社に残り、できることを見つけては働きまくる毎日を3年ぐらいは送っていました。この間にユーザーは200万人、投稿数は100万件を超えるようになってきました。
また、いろいろな方にアドバイスを貰いながら、プロダクト開発だけでなく、事業計画の策定や株主定例や資金調達資料の作成まで、色々な能力を身につけることができ、5年目にはCOOとなりました。
COO時代はSARAHアプリにとどまらず、新規事業の立ち上げや、セブン-イレブン・ジャパンや味の素といった日本の大手企業からの資金調達を行いました。また、スタートアップのM&A、PMIなども行ってきました。
2022年には組織規模も大きくなり、より会社を大きくさせるべく、取締役に就任し、戦略立案に特化したCSOとなりました。
そして、CSOとして大きな成長を遂げるために進出する領域として選んだのがブロックチェーンでした。
ブロックチェーンについては、学生時代に、決済の論文を書いていたことから、ビットコインホワイトペーパーを読んでいたり、また、2015年の創業直後に、ゼミの先生から「SARAHはブロックチェーンをどう使うのか考えろ!」と言われたこともあり、細々と調べたりしていた領域でした。
1人で調べるには限界があり、過去のインターン生を集めて、就業後に勉強会を開催し、SARAHのWeb3化について研究してました。
毎週色々なプロジェクトやプロトコルのホワイトペーパーを読んだり、プロダクトを触ったり、トークノミクスのシミレーションをしてました。
そんな中で見つけたのが、Avalancheでした。当時発表されたばかりのSubnetとAvalanche Warp Messagingを使うことで、法規制に遵守した形でトークンを発行し、インターオペラビリティのある形で、NFTを発行することができると思いました。Subnetを2つ作り、通信するという仕組みは、当時はまだ誰も行っていなくて、思いついた時は、このやり方で合ってるのだろうか?と不安でした。
ある程度まとめて、トークノミクスとホワイトペーパーを作成し、恐る恐るAvalancheのメンバーに見せたら絶賛されたことは、今でも当時のメンバーの自信につながっています。
SARAHのブロックチェーン活用事例が評価され、色々なイベントで登壇させてもらい、Fin/Sum2024のファイナリスト選出という実績も生まれてきたことから、会社としては、がっつりWeb3にシフトしていくこととなり、創業者より代表交代の打診を受け、代表に就任しました。
ちょうど代表交代のタイミングが、次の資金調達の準備を始めるタイミングだったので、事業の推進と資金調達について同時に行いました。
事業に関しては、上記の元インターン生たちに本格ジョインしてもらうことで、かなり早く、ONIGIRI Chainのリリースや、SARAHのWeb3化の推進ができました。
IVSでの優勝やEDCONのファイナリストの選出、AvalancheやWorld、SubQueryといったグローバルのweb3企業とパートナーシップを締結し、国内初事例も多く実施したり、海外カンファレンスでの登壇も行うことで、国内外でもある程度のプレゼンスを出すことができたと思っています。
トークンの活用やNFTは、ともすれば、ポンジスキームや短期的な盛り上がりを簡単に生み出すことが可能である一方で、SARAHではブロックチェーン活用の本質を見失わない動きを意識してきました。
また、ウォレットを保有していないユーザーでもNFTを保有できるようなウォレットの仕組みを使うことで、多くのWeb2ユーザーに対してもNFTを保有してもらう仕組みを実現しました。
正しくプロダクトを作りながら、うまく世の中の大きな流れにのるという動き方が掴めてきて、Web2の頃とは比べ物にならないほど、各種メディアへの掲載やカンファレンスで登壇もさせてもらったり、多くの方にサポートや応援をしてもらうことができました。
また、資金調達に関しても、SARAHやONIGIRI Chainの取り組みについて多くの海外の有名VCの方々からも良い評価をもらうことができました。
SARAHやONIGIRIで計画していたことはWhitePaperに公開しているので、ぜひご覧ください。
上記の評価の一方で、スタートアップの特性上、SARAH社の資金をどこに投資すべきかについては非常にシビアな意思決定が必要でした。
結果、SARAH社としては株主総会および取締役会でWeb3以外の戦略が決定され、酒井は来期の取締役には選任されませんでした。
ブロックチェーンの活用とSARAHアプリのWeb3化については、海外プロジェクトとの連携や海外VCからの資金調達の話もほぼ確定していた中で、このような結果となってしまい、悔しい気持ちでいっぱいです。
既存のステークホルダーを巻き込みながら、新規事業を動かしながら、経営していく難しさを感じました。
社内のメンバーや関係者の方々には、きちんと挨拶をすることもなく、退任することとなってしまったため、この場を借りてお礼を伝えられればと思っています。
また、今までサポートしてくださった方々も本当にありがとうございました。今回は私の力不足で、このような結果になってしまい、申し訳ないです。
ブロックチェーンは、今後さまざまな業界に必要とされる技術だと確信しています。
ブロックチェーンやWeb3というと、値上がり目的のトークンやNFT、怪しいコミュニティというイメージがどうしても先行しがちですが、私が注目しているのは、ブロックチェーンが持つ「共通のデータベース」と、スマートコントラクトが提供する「オープンソースの共通開発基盤」という本質的な価値です。
ブロックチェーンにデータを蓄積することで、自社だけではなく他社とも簡単かつ低コストでデータ連携が実現できます。自社でサーバーを持たずとも、たとえサービスが終了したとしても、貴重なデータを世の中に残すことが可能になります。
またスマートコントラクトを活用すれば、ポイントやクーポンの仕組みなどを数秒で立ち上げることができ、管理コストもほとんど必要ありません。
更にトークンを正しく使うことで、データや貢献といった法定通貨で計測することができなかった価値を計測し、世の中の価値の総量を増やすことができると考えています。
SARAHやONIGIRIでこれらの技術を活用しながら、Web2サービスにWeb3要素を取り入れる取り組みを進めてきました。
業界にはまだ多くの課題がありますが、安定したサービスを迅速かつ低コストで開発し、ユーザーに価値を提供するために、ブロックチェーンを活用しない手はないと感じています。
SARAHで描いてきた、私として社会に実装したい価値、ビジョンは、まだ途中のままです。
この10年間、ほぼ休まず走り続けてきたので、一度立ち止まって振り返りつつ、次に向かって考える時間を作ろうと思います。
ぜひWeb3の事業者の方も、これからブロックチェーンを活用したいWeb2の事業者の方もお話しましょう。
いつでも連絡お待ちしてます!