プロダクトマネージャーのためのWeb3
March 3rd, 2022

この記事は、Paul Shustak による「Web3 for product managers」の翻訳です。本人の許可を得て掲載します。

by Paul Shustak on February 22, 2022

メモは見ましたか?(訳注:映画『リストラマン』の台詞だと思われる)Web3は来るべきデジタルニルヴァーナ(涅槃)に向けたインターネットのウォーミングアップのようなものです。私は技術の誇大広告は無視することを学んできましたが、Web3には真実があるようです。だからこそ、これまでに数年間、Web3のプロジェクトに携わってきました。そして昨年、エコシステムが十分に成熟したので、キャリアの転機であると考えました。現在は、自信を持ってWeb3に100パーセント注力しています。

最近、自分も飛躍すべきかどうか、向こう側では何が期待されているのかと他のプロダクトマネージャーからよく相談されます。そこで、私がこれまでに見てきた、文化的、技術的、経済的、UXの主な違いをまとめておくと有益だと考えました。Web3は「ウサギの穴」(訳注:『不思議の国のアリス』からの引用。膨大に時間のかかる話題のこと)であり、網羅すべきことがたくさんあります。したがって、複数回のシリーズになる予定です。それでは、始めましょう!

Web3とは何か?

まずは用語を定義しましょう。Web3とは何でしょうか?この定義が出発点となります。

ブロックチェーンに基づくWWWの新しい反復であり、分散型やトークンベースの経済などの概念を取り入れたもの。 (Wikipediaより)

2つの単語が目立っています。「ブロックチェーン」と「分散型(decentralization)」です。ブロックチェーンの利用はWeb3のアプリケーションの必須要件です。一方、分散型の度合いはアプリケーションごとに大きな違いがあり、その多くは「Web2.5」と呼ばれるグレーゾーンにいます。

たとえば、NFTのマーケットプレイスであるOpenSeaは、サイトに掲載するNFTを保存するためにブロックチェーンを使っています。しかし、それらのメタデータの多くは分散されずに保存されており、検索や入札などの機能も従来どおりのウェブサーバーで実行されています。

一方、UniswapやSushiSwapのような自動化された暗号通貨取引所もあります。これらのアプリケーションのコードはすべて、ブロックチェーンのスマートコントラクトに保存されています。ただし、画像やテキストをブロックチェーンに保存するのは(変更が多い場合は特に)現実的ではないため、分散されずに保存されています。

分散型の度合いはさまざまですが、すべてのWeb3のアプリケーションに共通していることがひとつあります。それは、Web3のアプリケーションを使用するには、ブロックチェーンベースのトークン(暗号通貨かNFT)が必要になるということです。このことは、これから説明する主な違いの原因となるものですので、よく覚えておいてください。

さて、用語を整理したところで、Web2とWeb3の主な違いを見ていきましょう。

主な違い(1):対応可能な市場規模

プロダクトマネージャーのすべての行動の中心にはユーザーがいます。そこで、まずはWeb3とWeb2のユーザーの違いを見ていきましょう。すでに定義したように、Web3のアプリケーションにおいては、ユーザーが暗号通貨またはNFTを持っていることが前提になります。つまり、Web3のプロダクトマネージャーの対応可能な市場(TAM:Total Addressable Market)は、これまでよりも桁違いに小さくなるということです。ピュー研究所によると、暗号通貨を所有しているアメリカ人はわずか16パーセントだそうです。比較してみてください。インターネットを利用しているアメリカ人は93パーセント、スマートフォンを所有しているアメリカ人は97パーセントです。なお、NFTを所有しているアメリカ人は3パーセント未満だと見積もられています

話はそれで終わりではありません。暗号通貨のほとんどがWeb3のアプリケーションで利用できないことを考えると、TAMはさらに狭くなります。というのも、ほとんどの人がCoinbaseのような保管所に暗号通貨を預けているからです(これはNFTにも当てはまりますが、それほど多くはありません)。Web3のアプリケーションを利用するには、MetaMaskのようなウォレットに暗号通貨を転送して保管しておく必要があります。しかし、そのためには、複雑なネットワークの設定や公開鍵のアドレスの入力などが必要ですし、間違えると取り返しがつかないというリスクがあります。技術に詳しいユーザーであっても大変な作業です。さらには、転送するためのガス代もかかります。

主な違い(2):ユーザーの属性

このような技術的障壁を考えると、Web3の利用者層が一般層と大きく異なるのは当然でしょう。Geminiによると、アメリカの暗号通貨のユーザーの74パーセントは男性であり、そのうちの74パーセントは25〜44歳だそうです。興味深い違いがもうひとつあります。それは、民族性に起因するものです。ピュー研究所によると、黒人、ヒスパニック、アジア人は、白人よりも暗号通貨の所有率がかなり高いそうです。

主な違い(3):データの透明性

ユーザーデータは、現代のWeb2アプリケーションの血液です。私たちはデータを差し出す代わりに、利益を享受しています。Googleはユーザーの検索履歴やシグナルを利用して、検索結果をパーソナライズしています。Facebookはクリック数や「いいね!」を利用して、ニュースフィードをパーソナライズしています。

そうしたデータは私たちが所有するものですが、制御することはできません。データは企業のサーバーに保存されており、それを引き出すには企業の許可が必要です。引き出せたとしても、競合サービスに移行することはできないでしょう。こうしたモデルはWeb2の世界には存在しないからです(訳注:今でもインポートとエクスポートはありそうだけど、データの互換性がないという意味だろう)。

Web3では、仲介者を排除することで、こうしたパラダイムを転換させようとしています。すべてのユーザーデータは一般に公開された台帳に保存されます。そして、それを読みたいアプリケーションは無許可でアクセスできます。このことは、プロダクトマネージャーにとって2つの大きな意味を持ちます。

  1. データの囲い込みができない―すべてのアプリケーションが同じユーザーデータにアクセスできるため、競争上の優位性としてデータを使用できなくなります。その結果、ユーザーエクスペリエンス(アプリケーションがそのデータを使って何をするか)がより重要になります。
  2. アナリティクスはデフォルトで公開される―競合他社や業界全体の販売量、収益、ユーザー数をリアルタイムで追跡できると想像してみてください。Web3では、こうしたデータを誰でも利用できます。Dune AnalyticsやDapp Radarなどのオンチェーン分析プラットフォームを使用すれば、これまでにブロックチェーンにコミットされたすべてのトランザクションを簡単に視覚化および解析できます。

主な違い(4):資産の所有権とポータビリティ

アプリケーションがユーザーの資産をどのように扱うかという点でも大きな違いがあります。Web2では、ユーザーはある見返りと引き換えに、第三者に自分の資産を預けることが標準となっています。たとえば、私たちは銀行に現金を預けています。その見返りとして、クリックひとつで世界中に現金を送ることができます。また、私たちはオンライン証券会社に株式を預けています。その見返りとして、すぐに取引することができます。仲介者の手数料(詳しくは次回以降に説明します)や新しいサービスに資産を移行する手間はかかりますが、悪くないトレードオフと言えるでしょう。

しかし、ゲームのアイテム、音楽、映画といったデジタル資産では、こうしたトレードオフは不利なものとなります。私たちが購入したデジタル資産はそのプラットフォームが保管しています。私たちはそれらを楽しむことはできますが、別のプラットフォームで使用するために転送することはできません。

繰り返しになりますが、Web3ではこのパラダイムが転換します。ユーザーは自分の資産を保持したまま、アプリケーション間で自由に移動させることができます。プロダクトマネージャーは、ユーザーの資産を管理して乗り換えコストを高め、ユーザーを囲い込むことができなくなるということです。これからのアプリケーションの競争力は、こうした資産を使うことでどれだけ便利にできるか、どれだけ楽しくできるかになるのです。

今回の記事は以上です。お役に立ったでしょうか。次回は、その他の技術的な違いや、財務的、文化的、法的な違いについて、深く掘り下げていきます。この記事が役に立ったのであれば、あるいは取り上げてほしいテーマがあれば、コメントで教えてください

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