Web3.0勉強会: 1. Web3.0とは

こんにちは!iscream株式会社代表の成田です。

Web3.0勉強会の資料から今回は第1章の「Web3.0とは」についてです。

Web3.0をこれから勉強・参入する人にとってはとっかかりとして、既にどっぷり浸かっている方は知り合いに説明する際のおさらいとして活用してもらえると嬉しいです!

1. Web3.0とは (←今回)
 概要
 ブロックチェーン
 スマートコントラクト
 データ所有・アクセス
 Web3.0 Stack

2. 市場環境 (←次回)
 概況・市場規模
 NFT
 DeFi
 DAO
 最近のビジネスモデル

3. Web3.0の特徴・従来のビジネスとの違い (←次々回)
 トークンエコノミー
 カルチャー
 競争優位性
 サービス構築
 投資

第2章は↓

第3章は↓

尚、スライドだけざっと眺めたいという人は最後にSlideshareのリンクを載せています。

Web3.0概要

Web3.0とは
Web3.0とは

Web3.0を理解するためには、今起きている現象だけでなくその背景を押さえることで本質が分かると思うので、Web3.0に至るインターネットの歴史をおさらいしながら今、なぜWeb3.0が盛り上がっているのかを紐解きます。

Web1.0 (1990-2005)

1991年にTim Berners-Leeがwwwを考案して以降、プロトコルの確立によって誰でも使えるインターネット(=Web)の世界が始まりました。初期のキラーサービスはWebページそのもので、ホームページを作ることで簡単に情報発信ができるようになり、固定電話しかなかった時代にメールがコミュニケーションを変革しました。インターネット以前は、世の中に情報を発信するにはテレビ局や出版社のように大きな体制・コストが必要だったのが、インターネットにより情報流通のコストがほぼゼロ(≒情報の民主化)になった正にパラダイムシフトでした。

この時代に生まれた新しい経済概念として「アテンションエコノミー」があります。多くの人が訪れる(≒アテンション:注目を集める)サイトは広告価値が高いため広告により莫大な収益をあげることができる。Yahoo!のような様々な情報を集約したポータルサイトが多くの人のインターネットブラウザを開いた時の最初のページになることでトラフィックを稼ぎ、インターネットの世界の旗手として業界をリードしました。

Web2.0 (2005-2020)

さらにこの流れは2000年台前半から回線速度が高速化したことで現在に続くWeb2.0として進化します。回線速度はISDNの64kbpsからブロードバンドの10Mbps(ADSL後期/光ファイバー前期)で150倍程度も向上。携帯電話も3Gから4Gとなり、ストレスなく動画を再生できるようになりました。回線が高速化したことでサービス運営者のサーバーに瞬時にアクセスできるようになり、データの保存や処理をPCや携帯といった手元の端末で行うことなくサービス運営者のサーバー上で実現できるようになりました。このクラウドコンピューティングの実現によりSaaSのビジネスモデルが確立され、生活者はブログやチャットサービス、SNSで個人レベルでも簡単に情報発信できるようになりました。言い換えると、即時の双方向的なコミュニケーションが取れるようになり、インフルエンサーと呼ばれる個人でも世の中に大きな影響力を持つ人が多く生まれました。Web1.0による情報の民主化もまだ誰もが情報発信するには難しい側面もあり、結果一部の企業や詳しい人しか活用できていなかったのですが、2.0によって個人レベルでの情報の発信=情報の分散化が実現されたと言えます。

また、2010年前後には新しい経済概念として「ギグエコノミー」という言葉も生まれました。UberやAirbnbといったプラットフォームを利用すれば、企業などの大きな組織に属することなく、自分のスキルやリソースを活用して、自分の好きな時に働き生計を成り立たせることができる(≒個人が自由に経済活動できる)といったもので、アメリカではUberのドライバーで年間1千万円以上稼ぐような人も出てきたことから瞬く間に広がりました。日本でシェアリングエコノミーという言葉とともにフリーランスの人が働きやすいランサーズやクラウドワークス、ココナラといったプラットフォームが生まれたのもこの頃です。

Web2.0が実現した情報の分散化・経済活動の自由化は、個人をエンパワーし個人の社会的影響力の増加を支援しましたが、それと引き換えにWeb2.0の大きな課題として「価値の中央集権化」があります。世界の時価総額ランキングを見るとの上位は軒並み大手テック企業が占め、僅か20年足らずのWeb2.0の期間において国に匹敵するほどの影響力を持つまでになりました。そして、その価値の源泉の主なものがクラウドの名の下に自社のサーバー上に蓄えているユーザーの利用履歴で、それぞれのユーザーの利用履歴をベースにしたレコメンドで更なる購買を促したりターゲティング広告による広告収入が収益源となっています。言い換えると個人に紐つく情報で稼いでいるとも言え、その価値を独占していることや、ユーザーや取引企業に対して優越的な地位を持ち一方的に規約や高い手数料を押し付けていることに対して近年批判が高まっています

また、世界中で毎月のように起こっている個人情報の流出も個人のデータを企業側が保管・利用していることの弊害であり、悪意のある濫用やターゲティング広告による思想の誘導などの懸念もあることからプライバシー問題も大きな課題となっています。2018年にはヨーロッパでGDPR(一般データ保護規則)が施行され、カリフォルニア州でもCCPA(消費者プライバシー法)が制定されるなど、世界中で個人のデータを企業から取り戻す動きが活発化しています。

Web3.0 (2021-)

これらの企業の個人データの集積による「価値の独占」「プライバシー問題」を解決するのが次世代のインターネットの世界:Web3.0です。

ポイントは個人が自分のデータを管理・活用できるようになる(≒オーナーシップを持つ)ということで、そこで基盤になる技術がブロックチェーンやPCやスマートフォンといった端末で情報を保管・処理する技術であるエッジコンピューティングです。そこで使われるサービスはブロックチェーンをベースにしたCryptoアプリケーションで、足元では暗号通貨やDeFi、NFTといったものが盛り上がっていますが、様々な産業・サービスでも活用が進んでいます。また昨年末、Facebookの社名変更でも話題になったデジタル上の仮想世界「メタバース」もこれまでは一部のゲーム好きの人の世界でしたが、クロスプラットフォームで利用できる個人がオーナーシップを持つ暗号通貨やNFTといった資産が実現することで経済が持ち込まれ、マスアダプションへの期待が高まっています。

Web3.0は、個人がデータという価値の源泉のオーナーシップを持つ「情報に加えて価値も分散化されたインターネット」なのです。数年前までは、Web3.0が始まるのはしばらく先だと思われていましたが、DeFiの拡大、NFTのブーミングやDAO関連のプロジェクトの増加が2020年後半頃から急激に起こり、数年後に振り返ると2021年がWeb3.0元年だったのではないかとも言われています。Andreessen Horowitz (a16z) のGeneral PartnerであるChris Dixonさんの以下の連続ツイートでもWeb2.0を2005-2020年までとしていてWeb3.0が既に始まっていることを示唆しています。

ここまで説明したとおり足元のCryptoアプリケーションの盛り上がりは、Web2.0の課題に起因したもので避けては通れない不可逆的な流れであると考えています。現在、DeFiやNFTはハイプサイクルのピークに来ていて投機マネーの流入から有象無象にプロジェクトが増えバブル感も否めませんが、この社会から必要とされているという背景を考えると、個人的にはバブル後も社会インフラとして確実に根付いていくと確信しています。

なぜWeb1.0の起業家達がWeb3.0に熱狂しているのか?

なぜWeb1.0の起業家達がWeb3.0に熱狂しているのか?
なぜWeb1.0の起業家達がWeb3.0に熱狂しているのか?

Web3.0に熱狂している人の中には、インターネットの黎明期に活躍した人が多くいます。wwwを作ったTime Bernerz-Leeは個人が自身でパーソナルデータを管理活用できるPOD (Personal Onilne Data Store)を開発し昨年末に大型調達をしました。巨大Cryptoファンドを組成し現在のWeb3.0の流れを牽引しているa16zのMarc Andreesenはインターネット初期のブラウザNetscapeの創業者ですし、Web3.0ブラウザBraveを開発しているBrendan EicはJavascriptの生みの親でMozillaの創業者でもあります。PayPalの共同創業者であるPeter ThielやElon MuskがWeb3.0に肯定的であるのは有名な話で、デジタルガレージの共同創業者で日本のインターネット黎明期を支えた伊藤穰一氏もWeb3.0で新たな取り組みをしつつ自民党によるWeb3.0の国家戦略実現も支援しています。

ではなぜ、Web1.0の起業家たちがWeb3.0に熱狂しているか?それは、Web3.0の価値の民主化というコンセプトが実はインターネットを作った人たちが当時実現しようとして叶わなかったものだからです。情報に加えて価値も分散化させることはインターネットのコンセプトそのものであり、ブロックチェーンの最初のアプリケーションであるビットコインが中央が不在でも成り立つMoney Transfer Protocolを実現したことで情報だけでなく価値もオンライン上で自由にやりとりできるようになり、足りなかった最後のプロトコルのピースが埋まったと言われています。

ブロックチェーン

ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンとは?

Web3.0の価値の民主化を実現可能にしたのがビットコインによって生み出されたブロックチェーン技術です。Web3.0でサービスを考える時には、このブロックチェーンの仕組みと特徴を正確に理解した上でフィットするかを考える必要があります。ブロックチェーンを活用したサービスを作る際に最も用いられているイーサリアムが利用され始めた2017年以降、様々な産業でブロックチェーンを活用した実証実験が行われました。ただ、その殆どが実用化まで至らなかったのはブロックチェーンが技術的に未成熟だったこともありますが、その特徴を本質的に理解しないままに取り組んだプロジェクトも多かったからではないかと考えられています。

ブロックチェーンの仕組みについては既に多くのネット記事や書籍で素晴らしい解説がなされているので詳細は割愛しますが、これまで実現が難しかった単一障害点となる管理者を置かず、且つ、改竄されないセキュアなシステムを実現しています。多くの人員とシステム運用コストをかけて運営している銀行と比較とすると、銀行はその中央管理的な仕組みからシステムダウンにより度々利用不能になっている一方で、ビットコインは2009年の稼働から一度も止まらず動き続けています。また、日本では考え難いですが、途上国では銀行や政府自体が信用できないケースがありますが、ビットコインは改ざんが理論上不可能となっており通貨が不安定な国における価値保存先として、また、足元ではコロナ禍の金融緩和によるインフレ懸念のヘッジとして一定の金融資産としての地位を確立しています。

ブロックチェーンはビットコインのような金融システムとしての利用だけでなく、現在ではスマートコントラクト(次節で解説)がブロックチェーン上で機能することで、さまざまな分野で応用が可能になり、スライドに記載しているように①高い改ざん耐性、②24時間365日稼働、③誰でも参加できる、④データを自身で管理できる、⑤履歴が透明化される、といった利点が活きる産業分野で活用が進んでいます。

余談:ブロックチェーンの源流

ブロックチェーンはビットコインの仕組みを言語化したもので、2008年に公開されたビットコインのホワイトペーパーにもその名称はなく、あくまで後天的に名付けられたものです。ビットコインはその最初のブロックにThe Times紙の英国政府による銀行の救済を嘆いた当時のタイトルが刻まれているように政府や既存の金融システムのような中央集権的な仕組みの課題を解決する思いで作られたと言われています。ビットコインを作ったサトシナカモトはサイファーパンク(暗号技術によるプライバシー保護を追求する集団)のメンバーと言われていて、その他のメンバーにはビットコインの要素技術となっているHashcashの生みの親Adam Back(ホワイトペーパーでも触れられています)やProof of Workを考案したHal Finneyの他、WikiLeaksのJulian Assange、BitTorrentのBram Cohenも名を連ねます。更にサイファーパンクの源流を辿ると米国(特に西海岸)に根付くリバタリアニズム(「個人的な自由」と「経済的な自由」の両方を追求する思想)に繋がります。(リバタリアニズムについては過去の投稿で簡単に解説しています。)

この文脈を読み取るとWeb3.0の源流は冒頭で説明した巨大企業からの自由だけではないと解釈できます。現代の日本で生活しているとあまり感じることのない、政府や国といったより大きな組織からの監視や制限に苦しんでいる人たちが世界中には多くいて、それを解決することにも繋がるブロックチェーンはもはや一技術以上のものとして捉えることができ、Web3.0の熱狂を理解するにあたってはこの辺りも押さえておくと良いと思います。

スマートコントラクト

スマートコントラクトとは?
スマートコントラクトとは?

ブロックチェーンが金融だけでなく様々なものに活用され、現在のWeb3.0盛り上がりに繋がったのは、2015年にスタートしたイーサリアムに代表されるブロックチェーン上で動くスマートコントラクトの貢献が欠かせません。スマートコントラクトはブロックチェーン上で動くプログラムといったイメージを持っている方が多く「通常のプログラムと何が違うのか?」という質問を受けることがありますが、その特徴である①自動執行、②検証可能、③改ざん耐性という点を通常のプログラムと比較すると分かりやすいです。

スライドでは自動販売機及び一般的なECサイトと比較していますが、どちらも①自動執行は実現していますが、②検証可能性、③改ざん耐性という点においては、公開され一度デプロイすると変更されないスマートコントラクトとは違い、ユーザーは仕組みを検証することができず改ざんも検知できない=事業者を信頼するしかないということが分かります。

ブロックチェーンはよくTrustless (信用が不要) の仕組みと言われ、Web3.0の世界では「Don’t trust. Verify (信用するな。検証せよ。) 」という言葉あります。今の世の中では信用が重要視され、それを補完するビジネス(銀行、保険、クレジットカード、等々)が大きな利益をあげていますが、裏を返すと信用のために我々は日々多くのコストを払っていて、ブロックチェーンとスマートコントラクトが実現するWeb3.0がいかに大きな社会的インパクトがあるかが分かります。

データ所有・アクセス

データ所有・アクセス
データ所有・アクセス

Web3.0ではデータの所有やサービスへのアクセスの仕方も従来とは大きく異なります。インターネット初期ではサービスにアクセスするためにはサービスごとにIDとパスワードを設定し、ログインする必要がありました。これがWeb2.0においてはGoogleやFacebookなどのアカウントを持っていればそれを利用し、他のサービスも利用できるシングルサインオンが一般的になりました。サービスを作る事業者としては認証の仕組みの構築が不要で事業立ち上げが容易になるメリットがあり、ユーザーとしても複数のID・パスワードを設定・管理する手間がなくなるという利点がある一方で、巨大なテック企業のサーバー上に価値の源泉である情報がより集まる構図を助長しました。

このサービスへのアクセスの仕方がWeb3.0では従来と大きく異なります。Web3.0型のWebサービスを使ったことがある人は分かると思いますが、Web3.0では利用登録やログインといった概念はなく、Webページ上の「connect wallet」をクリックし、自身のウォレット(暗号資産やNFTを保管するツール)を接続するだけで、すぐにサービスを利用することができます。これにより、情報は常に自身のウォレットで管理し事業者に情報を吸い上げられることはなく、必要な時に必要な情報を渡してサービスを利用するというユーザー中心のWebが実現しています。

Web3.0 Stack

Web3.0 Stack
Web3.0 Stack

Web3.0のサービスを考えるに当たってリサーチをすると、技術レイヤーで区切ったもの、産業毎に区切ったものなど様々なサービス分類がありますが、ここでは技術レイヤーとWeb3.0の特徴であるトークンに焦点を当てて分類しています。

それぞれのレイヤーについては以前の記事で解説しているので、興味ある人はぜひ確認してみてください。

Web2.0までとの大きな違いは、ブロックチェーン自体がトークン発行することできちんと価値を捕捉し、その上に乗る各種レイヤーがこのトークンを利用することで、さらにブロックチェーンの価値が高まるというFat Protocolという現象が起きていることです。またトークンとオープンソースというWeb3.0の特徴から各レイヤーにおける単一のプレイヤーによる独占は困難と言われています。(この辺りのWeb2.0からの競合優位性の変化は次々回の「3. Web3.0の特徴・従来のビジネスとの違い」で解説します。)

次回の第2章「市場環境」では、Web3.0の現在の市場環境や、DeFiやNFT、DAOなど盛り上がっている領域について解説します。

第2章は↓

第3章は↓

勉強会のスライド全体は↓

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