11月15日から29日までGitcoin Grantsの19回目のラウンドが開催されています。これまで、Gitcoin GrantsについてやGitcoin Grantsで用いている資金提供の仕組みであるQuadratic Fundingについて解説しました。今回は18回目のGitcoin Grantsで採用されたクラスターマッチングQuadratic Fundingについて解説します。
ちなみに、GreenPill JapanもGitcoin Grants 19に参加していますので、ぜひご支援ください!
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Quadratic Funding(以下、QF)は、公共財への資金提供の新たな方法として「プロジェクトが受け取る資金は寄付された金額の平方根の総和の二乗に比例する」という資金提供のメカニズムを導入したものであり、このような数式で表現できます。
QFの仕組みは、コミュニティ・メンバーから(大小を問わず)寄付を募ることで、利用可能なリソースを増幅させるクラウドファンディングであり、ユーザーがQFを採用しているプラットフォームを利用する際は(複数の)プロジェクトに対して寄付をし、プロジェクト側は直接寄付された資金に加えて、先述のメカニズムに従った追加資金がマッチングプールという資金プールから割り当てられるというものです。このQFの仕組みは、あるプロジェクトに対して寄付された金額の量よりもどのくらいの人々に支持をされているのかに重きを置いており、人々の関心がより大きいものに対してより大きな影響をもたらすため、より多くの資金が提供されるというよりボトムアップで民主的な資金提供の手段になっていると言えます。
実際に、QFラウンドで9人の寄付者が異なる金額で4つのプロジェクト(#1、#2、#3、#4)に寄付したシナリオを示します。
この場合、マッチングプールからの各プロジェクトへの割り当ては視覚的にこのように表現できます。
プロジェクト#2と#3への寄付は最高レベルの集団行動を示しており、結果としてこれらのプロジェクトはマッチングプールから最大のシェアを受け取ります。#2と#3の次にマッチングプールから受け取る資金が大きくなるのは、プロジェクト#4となります。一方、プロジェクト#1は、一人の大口の寄付者からの単独の寄付行動を示しているので、その結果としてマッチングプールから受け取る割合は最小になります。これは先述した「あるプロジェクトに対して寄付された金額の量よりもどのくらいの人々に支持をされているのかに重きを置いている」というQFのコンセプトを体現していると言えるでしょう。
より小さな影響力、すなわち少額の寄付しか行えない個人であったとしても、より多くの人々から指示をされたプロジェクトであれば、結果的には大きな影響を及ぼすことができるというQFの仕組みにも課題はあります。主に「シビル攻撃」と「共謀」の2つの課題があります。シビル攻撃とは、一個人が複数のアカウントを作ることにより、より多くの影響力を得ようとすることです。QFにおいては、寄付者の数が多ければ多いほどより多くの資金が提供されるため、シビル攻撃はより有効に働きます。一方で、共謀とはあるユーザーが他のユーザーと調整や協力をして投票を行い、より多くの資金を特定のプロジェクトに配分されるようにします。共謀はシビル攻撃と異なり、実際のユーザー間での調整による攻撃であり、共謀を行うには賄賂か脅迫によって実施されることがあります。
QFを実装しているGitcoinでは、これらの課題に対するアプローチをしており、シビル攻撃に対してはGitcoin Passportを導入することで対策をし、共謀に対しては、同じマッチングプール内で寄付する寄付者の間で高度に調整されていると思われるマッチングプールの割り当てを減らすことを目的として、2人の寄付者 (ペア) が同様のプロジェクトに寄付をした場合にマッチングプールの割り当てが一定額減額されるというPairwise Fundingという仕組みを導入することで対策をしています。
今回、紹介するクラスターマッチングQFは、共謀に対処するための新しいアプローチとなります。
QFラウンドで9人の寄付者が異なる金額で4つのプロジェクト(#1、#2、#3、#4)に寄付するという先程と同様の状況を考えてみます。プロジェクト#3に独占的に貢献した寄付者f、g、h、i が同じ会社の従業員であることが判明したと想像してください。会社はこれらの従業員にプロジェクト#3に貢献するよう指示し、それが会社に直接利益をもたらしました。この状況は共謀しているように感じられますが、従業員は全員異なる人間であるため、シビル攻撃耐性に頼るだけではそれを防ぐのに十分ではありません。
従来QFでは、すべてのエージェントが完全に独立しているという前提に基づいて動作している、つまり、QFがプロジェクトに資金を提供するとき、独立したエージェント間の合意に報いようとしています。しかし、現実の世界では、寄付者は独立していない可能性があります。たとえば、シビルエージェントはすべてが同じエンティティによって制御され、独立性からはほど遠いため、報酬は何もありませんが、同じ会社からの寄付者の場合は、シビルエージェントではありませんが、すべて会社のメンバーであるという重要な類似点を共有しているため、「部分的に」しか独立しているとは見なされないと言えるでしょう。したがって、寄付者f、g、h、iの4人の従業員をシビルエージェントとしては扱いませんが、彼らが会社に協力しなかった場合に与えていたであろう資金よりも少ない資金を与えるのがより適切であると考えられるでしょう。これは協力を排除すべき問題とみなすのではなく、既存の仕組みと連携させて、偏りを修正し、調整に対する過剰な利益を取り除く方法を見つけたいという理念に基づいていると言えます。
このように従来のQFにおいては特定の利害間の調整を考慮できていませんでしたが、その点を考慮したメカニズムが実装したのがクラスターマッチングQFです。クラスターマッチングQFでは、ある人が投票するプロジェクトは、その人が属しているコミュニティのシグナルと見なされます。次に、一意のコミュニティの組み合わせごとに、対応する一致量を計算します。この方法により、より広範囲のコミュニティによってサポートされるプロジェクトが、より多額のマッチング資金を確実に受け取ることができます。共謀に関与した個人が受け取るマッチング資金は減額されますが、多様なコミュニティに利益をもたらすプロジェクトは最も多くの資金を受け取ります。
先ほどと同じ例を用いて、クラスター マッチングQFを使用したマッチングプールの割り当ての変化を観察してみましょう。このアプローチでは、寄付を個別のグループによる貢献量に統合し、その後、これらのグループごとの貢献に対してQFを適用します。この例では、プロフィールに基づいて他のグループまたはクラスターが見つかります。
この状況では、プロジェクト#2はβとγの2つのクラスターから寄付がされているため、寄付の多様性が最も高くなります。他のプロジェクトは1つのクラスターからのみ寄付を受け取るので、以下のように表現できます。
この場合、マッチングプールからの各プロジェクトへの割り当ては視覚的にこのように表現できます。
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1つのクラスターのみから寄付を受けたプロジェクト#1、#3、#4 は、マッチング資金の均等なシェアを受け取りますが、プロジェクト#2は、様々なクラスターから寄付を受けたのでマッチングプールの最大のシェアを受け取ります。この単純化された例は、広範囲のコミュニティに利益をもたらすプロジェクトが最も高額な資金を受け取る資格があることを示しています。実際の状況では、各プロジェクトには複数のクラスターがあり、最も多様なクラスターを持つプロジェクトが最高レベルのサポートを受けることになります。実際、クラスターマッチングQFを実施したGitcoin Grants 18では約15万ドルが減額され、他のプロジェクトに与えられたという結果が出ています。
クラスターマッチングQFでは、寄付者は単純な独立した個人と見なすのではなく、クラスターとして分類することで、より幅広い属性の人々から支援されたプロジェクトがより多くのマッチング資金を受け取ることを可能にしています。応用例として、DAO内部でQFラウンドを実施する場合は、DAO内の役割に基づいてクラスター化ができたり、Pairwise Fundingと組み合わせることで、クラスター化された寄付のペア間において割り当て額を調整するという機能を導入することもできます。クラスターマッチングはQFの機能を拡張し、さらに新たなアイデアが生まれるきっかけにもなるでしょう。
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